魔法少女32
「ごめんね、パパ、ママ優君の悪い癖がでちゃったよ、あははは...」
隣でものすごく焦った声音で朱音がパパさんママさんに声をかけている。え、待って俺今なんて言ったの?本気で記憶がないんだけど?ただまずいことをしたってことはわかる。だって膝をペシペシと朱音にたたかれてるもん。
「うーん、でもまだ学生だし結婚は早いと思うのよね?」
「まってママ?なんで普通に返してるの?突っ込んで?ちゃんとツッコミを入れて?」
「あぁ、そのとおりだ」
「パパも普通に返さないで?」
結婚?なんで結婚!?いつの間にそんな話になってんの!?いや待って?俺隣の家に住むからよろしくお願いしますって言いに来ただけなのに!?俺ほんとに何言ったの!?
もしかしてあれか?最近は発生してなかった朱音好き好きハリケーンが出てしまったのか?朱音と付き合い始めて一年経った今ではほとんど発生することがなかったというのに...
誤解を、誤解を解かねば
「あのすみません!今のはそのまちがえーーー」
「なんだね?冗談でうちの朱音との結婚を申し込んだというわけかね?」
「いえ、全く持って違います!誠心誠意朱音さんとの結婚を認めてもらうためにご挨拶に伺いました!」
こえええええ!!!無理だ!間違えましたなんて言える状態じゃねぇ!?パパさんの眼光がすごいことになってる!
「それで?詳しく話してみなさい」
あの詳しくも何も俺まだ学生で、パニックになっていってしまっただけなんでまず朱音にプロポーズすらしていないんですが?とか言えるわけもないので少し俺の思考がフリーズしてしまう。そうしてフリーズしていると朱音のペシペシの威力が上がってきているのを感じた。ちらりと朱音の顔を見るとどうすんの!?ほんとにどうすんの!?って顔をしている。
「ッスゥー...そのですね、まず結婚を考えているというのは本当です。」
回れ!俺の舌!この危機を回避するために!
「ほう」
「ただ、自分はまだ学生で貯金が1000万(これから入る予定)があるとはいえきちんとした収入もありません。ただ朱音さんを幸せにしたいという思いは本当です。なので朱音さんと付き合い始めて一年ほど経った今、しっかりとご両親にご挨拶しなければならないと思い参上した次第です」
「なるほど...」
「はぁーーー、朱音愛されてるねぇ...」
よし!回ってくれたぞ俺の舌!ちなみにちゃんと本心でしゃべったので嘘とかではない、少し嘘をついたのは1000万の貯金の部分だけだ。そのうち振り込まれるはずである。たぶん!!
よし、ここから本当の狙いである隣の家に関してお伝えしなければ
「つきまして、僕は今引っ越しを考えているのですが朱音さんと同棲のようなものをしたいと考えています」
「...学生の身分でか?」
怖い!一気に威圧感が増したぞ!?
「はい、ただ本格的な同棲というわけではありません、簡単に説明すると僕はこの柊さんのお宅の隣の空き家の購入を検討しています。」
「...続けて」
「はい、要するに一緒に住むわけではなく近くで一緒に暮らすことを許していただけないか、というお願いになります。」
「うっそ、家買うの?」
「はい、そう考えています」
「そうか...」
ママさんは俺が家の購入を考えていると伝えると本気で驚いた顔を見せ、パパさんは目を閉じ何かを考え始めた。
そんなパパさんの姿を見て俺と朱音はゴクリと生唾を呑み込みパパさんの答えを待っている。
「ーーーまず第一に私は三月君のことは認めている」
「...あ、はいありがとうございます?」
何故か認められていた。え、ものすごくうれしいけどどういうことだろうか?
「そうねぇ、私もおんなじ考えよ、私も優君のことは認めている?というか感謝しているわ、朱音を救ってくれたからね」
「そうだな...私たちではできなかったことを君はしてくれた」
「えっとそれは...?」
「君ならばわかるだろう?私たちには何があったのか察することも気づいてあげることすらもできなかった。」
あーー......なるほど、そういう。
おそらく朱音のヒーローをあきらめた頃の話だろうな。俺自身中学生のヒーローだった時の朱音と高校に入学して会った朱音との差にかなり驚いたから...付き合い始めて一年たった今ではかなり昔の性格に近づいている気もするが、たぶんこれからも元の性格に戻ることはないと思う。決定的にヒーローというものにあこがれを抱いていないからな......
何度か朱音にヒーローを辞めた理由を聞いたことはあるが全部はぐらかされたんだよなぁ...ただ、今となってはなんとなく想像がつく、十中八九魔法少女関連だ。
朱音はいつの間にか俺のひざをたたくのをやめていた。
「いえ、俺だけの力ではないかと.....」
「それでもだ。正直あの時の朱音は見ていられなかった。私たちも必死になって原因を探ったが何も出てこない、いじめでも交友関係でも何か事件に巻き込まれたわけでもなかった」
「そうねぇ、あの時は朱音が気づかないうちに私たちの前からいなくなっちゃうんじゃないかって私とパパで交互に徹夜して朱音のことを見てたものねぇ」
「ーーそんなことしてたんだ...」
朱音が少し驚いた様子でそうつぶやいた。
そっか......そこまでひどかったのか...俺自身家での朱音の様子はまったくもって知らなかったからな、ただ俺自身も何か嫌な予感がして学校ではできる限り朱音のそばにいたなぁ...付き合ってもない癖にいっちょ前にこの人を一人にしてたまるか!と変な意地を張っていた気がする。ほぼストーカーである通報されてたら捕まってた可能性すらある。
「そんな中、高校に通い始めた朱音はだんだんと笑顔を見せてくれるようになった。」
「あの時はほんとに安心したわね......」
パパさんママさんはそう言って朱音のことをとてもやさしい目で見つめている。
「そして朱音がぽつぽつと話してくれる中に出てきた人が...三月君、君だよ」
「…」
「少し朱音の話を聞いただけで君の存在が大きく関係しているのがよくわかったんだ。まぁ私としては付き合っていたなんてことは昨日初めて聞いたがな」
「私は聞いてたわよ~」
「...なぜ妻にだけ話していたのかはまぁ聞かないことにするが、この出来事があったからこそ私たち夫婦は君に多大な感謝をしている」
「...いえ、俺もあの時は必死だったので」
告白しまくっていた記憶しかないが、まぁ告白するたびに朱音が昔みたいに笑ってくれたのでそれ目当てで告白していた感じもしなくはない(暴走7割笑顔が見たい3割くらいだけど)
「だから君が朱音と結婚したいというなら私は反対はしない。まぁしっかりとした社会人になってくれればという注釈はつくがな」
「ママも同じ気持ちよ」
「...ありがとうございます」
「…」
朱音は瞳からぽつぽつと涙を流しながらパパさんママさんの話を聞いていた。
俺も...少し涙目になっているのが分かる。なんというか...その、俺のことをしっかり認めてくれた気がしたから...大人に認められたのが初めてだから...俺みたいなのが朱音のそばにいていいんだと、朱音のことを一番大切に思っている人たちに認めてもらったから。
「あらあら、朱音が泣いちゃったわ...ほら顔をこっちに見せて...」
ママさんが朱音の涙をぬぐってあげている。
「だからまぁ隣に引っ越してくるというのはまぁ構わないのだが、家を買うというのはやめておきなさい」
「...なぜでしょうか?」
「まだ若すぎる。それに家を買うということは大人でも難しいことだ。貯金が一千万あったとしても隣の家を購入することはできんだろうよ。社会的信用がない。君のご両親が代わりに契約するならまだしもな」
「......」
ちょっとぐうの音も出なかった。というか反論が思い浮かばなかった。おそらくだが購入することは可能だ。俺個人には社会的信用がなくとも長官さんにお願いすれば速攻で手続きをしてくれると思う。一応国の機関だしな魔法少女協会は。ただそんな伝手を持っていることを俺はパパさんにうまく説明できる気がしない。説明するうえで魔法少女に関して説明しないといけなくなる。
「だからまずは賃貸を借りてそこから始めなさい」
「え?」
「賃貸ならばなんとかなるだろう、それと三日に一度二人でしっかりとうちに顔を出すのなら同棲も認める」
「あら?いいのあなた?」
「ーーーよくはないがそれが私の許せる限界点だ。そも高校生のうちから同棲など...」
「私たちみたいねぇ」
「…言うな」
え?どういうことだろう?と俺と朱音が涙目のまま頭をひねっているとママさんが苦笑しながら説明してくれた。
「ふふ、朱音にも言ってなかったことなんだけどママとパパは高校生のころ一緒に住んでたのよ、ママがパパの一人暮らししてるお部屋に転がり込んでね」
「あぁ懐かしいな、だからこそ今ここできちんと認めていないと...私たちの娘である朱音は絶対私たちに黙って三月君のところに転がり込むだろうからな...絶対に。」
「私たちの娘ですからね」
パパさんとママさんはそう言って笑っていた。
「そうだったんだ......」
「そうだったのよ?ママはパパと結婚する気満々だったから当時から全力でアタックしてたもの」
「...今度いっぱいお話聞かせて?」
朱音が笑顔でパパさんママさんにそう声をかける。
「もちろん!ねぇあなた?」
「う、うむ...」
あ、パパさんなんか微妙そうな表情してる。あんまり話したくないんだな.....
「ゴホン、というわけだから不動産屋にでも行ってきなさい。それと三月君君のご両親にも挨拶をしておき「パパ、待ってその件はまた今度話させて?」
あー、朱音に気を使われた気がする。けど
「大丈夫話しておくよ朱音のご両親にはしっかり伝えておいた方がいいと思うから。」
俺はそう言って俺の父母について簡単に説明した。
俺を捨ててどこかに行ったこと、二人ともそれぞれでもうすでに新しい家庭を作っていること、今はいくらかの生活費をもらいながら一人で暮らしていること。そして、もうすでに朱音のおかげで吹っ切れたことを
それを聞いてパパさんママさんは驚いた様子だった
「そうか、すごいな君は」
パパさんはそう言って俺の頭をなでてくれた。
「強い子だ。」
あ、だめだ。
泣く
俺は久々に、というか中学生のころ朱音の前で泣いた以来、久しぶりに涙を流した。
「うん。今日はみんな一緒にご飯を食べましょう?ねぇあなた」
「あぁ、それがいいだろう。三月君好き嫌いはないかな?」
「優君はチーズが嫌いだよ?」
「なんで朱音が答えるの...?」
俺は目から涙を流しながら笑ってそう朱音にツッコミを入れた。




