魔法少女31
「ふむ」
「…」
あのカオスから数分経った現在、俺は朱音のパパさんとママさんの前に座り全力で冷や汗をかいていた。あばばばばばナニコレ超怖い、なんでパパさん「ふむ」としかしゃべらないの!?ずっと朱音とママさんだけが話してるんですけど!?ただ持ってきた手土産は気に入ってくれたのかいっぱい食べてくれている。それだけが救いである。まじで
「ほら、優君は朱音のどこを好きになったの?」
「え゛」
待って?ほんとに待って?緊張でフリーズしていたらえげつないパスがママさんから飛んできたんですけど?何の話してたらそうなるの?
「ちょっと、ママ?何その質問?」
朱音はそう言いながらあきれたようなしぐさを見せるがちらちらと俺を見て俺が何をこたえるのかをウキウキと楽しそうに待っている。ねぇ待って?朱音さん?それはあまりにもひどすぎやありませんか?俺好きな人のご両親の前で惚れた理由を言わなくちゃいけないの...
「…ふむ」
はっ!殺気!?突き刺すような何かを感じた俺はその殺気を感じた場所に目を向ける。
パパさんだった...
え?待ってこれもしかして絶対に答えないといけないし、回答ミスったら俺死ぬの?
えーーーーと?考えろ!?考えろよ俺!!ここで変な回答してみろ!殺されるぞ!
「あ...はははは、そうですね朱音さんのことを好きになった理由は...その...」
「その?」
ママさんが目をキラキラさせて続きを促してくる。ちらりと朱音を見るとこちらもなんかそわそわしてる。パパさんはなぜか目を血走らせている。え?味方ゼロマジ?
「ーーー笑顔です...恥ずかしながら笑っている彼女に僕は救われまして...」
「へぇ~~」
なに?ママさん何その反応!?正解?正解なの!?一応嘘つかないで色々飲み込んで大雑把に答えはしたけど!?朱音は...よし顔を赤くしてるからオッケー!パパさんは?ーーーなんかゴゴゴゴゴ!って効果音が出るくらい威圧感が増している!?なんで!?失敗したの!?
「それにしても、優君は朱音と付き合い始めてもう一年だっけ?」
「あ、はいそうです。よくご存じですね?」
あれ、ママさんがなんでそんなこと知ってるんだろ?
「そりゃあ知ってるわよ!朱音ったらいつもいつも優君の話しかしないんだから!やれ優君がこんなことをしてくれた、やれ優君とこんなとこ行ったとか、そんな話ばっかりよ!」
「ちょ!?ママ!?」
ほーーーーん、いやあうちの彼女はかわいいなぁ...思わず顔がニヤついちゃーーー殺気!?
「俺は聞かされてない」
「そんなのパパに言うわけないじゃん!」
「むぅ...」
あかん、こわい、こわすぎる...目が何だかぐるぐるする、こんなことを結婚した世の旦那さんがたはクリアして結婚まで行ったというのか...まじで尊敬するぜ...
「っとこれ以上話してたらパパが不機嫌になっちゃうから優君に用件を聞きましょうよ!なにかお話したいことがあったんでしょう?」
「あぁ、そうだな俺もそれが聞きたい」
おっと急に本題に入ろうとしてるぞ。いや俺としてはそちらの方が助かるけどね、胃がもう限界だし。さてどうやって伝えようかな..
さてここで一つ俺の作戦を説明しておこうと思う、まぁ作戦といってもそんなに難しいものでもない、まず、第一前提としていまだ学生の俺たちの同棲を認めてもらうなどまぁ不可能である。特に一般家庭に生まれて育った朱音のご家庭はかなり普通の家庭だ。そんな家庭を作ってきたパパさんママさんを説得させるにはそれはほんとに同棲と呼べるものなとか?というあいまいなラインを作り上げることが必要だと俺は判断した。(ただし天ちゃんの家庭は例外とする。天ちゃん曰く長官の説得も失敗したなら最悪暗示をかけて何とかするとか言っていた。倫理観はどこに行ったんだろうな...)
そしてそのあいまいなラインこそが俺の考え出した作戦。
その名も
このおうちの隣の家が売りに出されてるんですが、買って住んでもいいですか?
である!!
いやぁ、我ながら最高な作戦だと思う、朱音に魔法少女関連のカミングアウトをされたときに気づいたんだよね。あ、隣の家が売りに出されてるって。長官から同棲の話が出た時にもうすでにこれしかないと思ったね!
同棲ではなく隣の家に住みつく。
これならば護衛の心配も解消できるし何かあっても朱音が数秒で俺のところに来ることができる。
完璧である。(天ちゃんのことは今は考えないようにする)
さて、この作戦をしっかりと誠心誠意パパさんママさんにお伝えしようと思う!さぁ!行こうか!
えーとまず...なんて言おうか...
あれ...急に頭が真っ白になったぞ...え?俺なんて言おうとしてたんだっけ?
...やばい、パパさんママさんが「どうしたんだろう?」って感じで心配そうに俺のことを見ている。やばいやばいやばい!?落ち着け俺!何とか話始めろ!無言が一番ヤバいって!どうしよう!えーと、えーと、あんまりにも頭が真っ白になって冷や汗が無限に出てくる。
「おい、大丈夫か?」
パパさんがそう言って心配そうに尋ねてくる。あかん、ガチで心配かけさせてしまっている。そうだ!こういう時は落ち着くために朱音の可愛い顔を見よう!そうしたらいつもの俺に戻ることができる!そうだ!朱音しか勝たんのだ!
そうしておかしくなった頭の中で結論をだしバッと朱音の方を見る。するとめちゃくちゃ心配そうに俺の方を見ている朱音の素晴らしくかわいい顔が目に映る。
あ、かわいい
好きだ
結婚したい
俺は真っ白に漂白された思考のままパパさんママさんの方に向き直る。
そして口を開いた。
「ーーー朱音さんを僕に下さい」
「「「ん???」」」
「あれ?」
え?俺今なんて言った?
「ーー優君のばかぁ...」
「「ーー!?!?!?!?」
あれ、俺なんかやっちゃいました???
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「ふぅーー、今回のごたごたはさすがに疲れたわねぇ...」
私、呪いの魔法少女 涼風 涼は東京から帰還し、実家のお風呂に浸かりながらそうつぶやく。
朱音の彼氏の三月 優君が魔力を発言してしまった為に起きたあの事件から、死ぬ覚悟をして行ったフェイスの討伐、その後懲罰部隊に襲われ優君天ちゃんが異世界に飛ばされる事件、その後優君と天ちゃんがどこに転移したのか調べに行くために魔法少女協会本部にカチコミに行ったカチコミ事件、そして最後に天ちゃんの優君に向かっての告白...
「色々起こりすぎでしょう...」
こんな短期間で起こっていい事件の数を超えている気がするわね...それにしても
「生き残れた...」
私は湯船につかりながらお風呂場の天井を見上げ脱力しながら言葉を発する。
生きている。
生きている。
ははは...ほんとに生きてるわね.....
正直私はフェイスの討伐で死ぬつもりだった。というか私たちの仲間はみんなそうだったと思う。あきらめていなかったのは風ちゃんくらい、いや風ちゃんは目をそらしていただけか...ここで死んでしまうっていう現実から。まぁそれはしょうがない私たちの中で一番精神面が幼いのは風ちゃんだ。朱音ちゃんは死ぬ準備を進めていたし、天ちゃんは自身の貯金を魔法少女協会に預けて自分が死んだときに協会から家族あてにお金が行くようにしていたし、私は...すべてをあきらめて何もせずただぼーっと過ごしていた。
もともと私は家族や友人に対して執着を抱いていない、家族中はそれなりに良好...だとは思う、けど私の家族は仲がいいと呼べるものではない、父も母も恋愛結婚ではなくここ最近の日本では全くと言っていいほど聞かなくなった許嫁というものだったからかお互い自身の実家の為、そして各々の会社のためと割り切っている節がある。
まぁ父母ともに実家がお金持ち、というかかなり大きな会社のご令嬢、ご子息なので私は何不自由なく育ってきた。だけど私を育ててくれたのはどちらかといえばお手伝いさんたちである。正直あの人たちが両親という自覚すらない、だって会うのは週に一回夕食の時のみ、父母ともに仕事が忙しいのでそれくらいしか時間が取れないようなのだ。
そのような環境でも家族中が良好といえるのは...まぁひとえにお金のおかげだろう、と私は考えている。愛は無くてもお金があればなんとかなるというのが私の持論である。まぁ誰にも言えない持論だけど...
「そろそろ出ようかしら...」
変なことを考えていたからかかなりの時間湯船につかってしまっていた。ばしゃっと音を立てながら一人で入るには大きすぎるでしょ、と毎回感じてしまう湯船から出る。ペタペタと水音が混じった足音を立てながら脱衣所に行きバスタオルで水気を取る。
「髪を乾かすの面倒ね...」
私の髪はそれなりに長いので本当にめんどくさいのだ。まぁめんどくさいからといってショートヘアにする予定もないしお手入れは大事なのでしっかりとするけど
っと、少しびっくりした。急にスマートフォンが振動し始めた。ん?ずっと振動してるから電話かしら?手の水気を完璧にふき取りなんだろう?と思ってスマートフォンを取る。
「あぁ、亘一くんか...」
画面をみてそう声を出す。
「もしもし?」
「あぁ、すまない涼さん急に電話をしてしまって」
「いえ、大丈夫よ?それより何かあったのかしら?」
私はスマホの画面を少し触りスピーカーモードにしてから服を着始める。
「あぁ、今度の食事会の日程についてだ」
なるほど、そういえばもうそろそろ月一の食事会の日だったわね
「えぇ、それで細かい日程が決まったのかしら?」
「いや、少しおくれてもかまわないかな?という連絡だ。申し訳ない」
なるほど、そういう話か。私としては全然かまわないし何より亘一君は彼の両親が経営している会社の御曹司ということもあってかなり細かく日程を組まれているのだ。忙しいのは知っているしこれまでも何度かあったので本当に気にしていない
「大丈夫よ、また日程が決まったら連絡してね」
「もちろんだ。では済まない失礼する」
そうして私の婚約者件彼氏である時任 亘一君との通話は終了した。我ながらほんと淡白な会話ね...とてもじゃないけど、付き合っている男女の会話ではない。
でもまぁしょうがない今回の例の事件で私も知ることができた。魔法少女が本気で恋をするとその人に魔力が贈られ、魔力が発現する。
その事象が私の彼氏である亘一君に起こっていないということは...
まぁ、そういうことである。




