魔法少女30
「ねぇ、ほんとに行くの?」
「もちろん、俺に任せてよ」
朱音たちによる魔法少女襲撃から一日経った今日、俺は朱音と一緒に朱音のご両親に挨拶するべく移送を開始していた。
「はぁ...しょうがないとはいえなんか憂鬱だぁ...」
と朱音が溜息を吐きながらそうつぶやく
「まぁまぁ俺も頑張るからさ」
「それが一番信用できないんだよね...天ちゃんがうらやましいよ」
「そういえば天ちゃんは今朝すぐに自分の家に戻ってたよな?」
「うんそうだよ、私もだけど昨日はみんなで優君の護衛のために一泊しちゃったし、なにより天ちゃんは異世界に行ってたせいで二泊してることになるからね、早めに帰ってご両親に説明したかったんだと思うよ?」
「...俺ついていかなくてよかったのかな?」
「絶対ついていかなくていいよ、むしろ天ちゃん自身私と風ちゃんと涼ちゃんでお泊り会してたって言い訳してるのにそこに優君が現れたらまずいことになるよ、さすがに」
「まぁそれもそうなんだけど...」
「不可抗力とはいえ大事な娘さんと何日も一緒に過ごすことになってしまったから土下座位するべきかなと考えてたんだけど...」
「いらない、そんなことしたら天ちゃんに外堀から埋められるよ?」
「うっす、今のやっぱなしで」
怖い...昨日のお泊り会でもいつの間にか俺の布団の中に侵入してたし...天ちゃんがガチで俺のことを落としに来てるのがひしひしと伝わってきて怖い...俺まだ朱音と手をつないだことすらないんだぞ、キスはしたけど...(キスで記憶消されたが)そんな純情男子高校生の男の子の部分をいじめないでほしい、しかも薄着で(朱音には存在しない)谷間全開だった。マジでいろいろと危なかった。まぁそのあとすぐに朱音に燃やされていたが
「はぁ...まさか社会人にもなってないのに彼氏を両親に紹介することになるとは...」
「そこはほら、もう一年以上付き合ってるわけだし挨拶は必要じゃない?」
「そうなのかなぁ...」
「たぶん」
しらないけど
「ってそうだ朱音、朱音のご両親が好きなお菓子って何?」
「えー急になにさ...んーたしかママが好きなのはクッキー、パパは...なんでも好きだね。何あげても美味しい美味しいって食べてる」
...それは朱音がプレゼントしてくれるから何もらってもうれしいってパターンか、それともほんとになんでも好きなパターンかどっちだろうか...?うーんならママさんの好みに合わせた方がいいかな?
「じゃあクッキー買いに行くか」
「あー別にそんなのなくていいのに」
「いや、手土産くらいはないと...」
「そういうもんかなぁ?」
「そういうもんだぜ?」
彼女の両親に会うんだ。それくらいはしないとね
「でも優君お金あるの?」
「…予算は2千円です」
「…」
そんなかわいそうなものを見る目で見ないでくれ...これが俺の限界なんだ...!
「じゃあ、洋菓子屋さんにレッツゴー」
「おーー」
俺と朱音は少し寄り道したところにある洋菓子屋さんに向けて進路を変更した。
「朱音さんや」
「なんだい優君?」
「ママさんはクッキーなら何でもいいのかい?」
「うん、なんでも食べるよ」
「なるほどーじゃあこれにしよっと」
俺がそう言って指をさしたのがギリギリ税込み2000円内のクッキーの詰め合わせセット(箱に入ったお菓子類の中で店内で一番安い奴)
「うん、それでいいと思うよ」
朱音のお墨付きももらえたので俺はクソ美人な店員さんに声をかける。いやほんとめちゃくちゃきれいな人だな...なぜかエプロンのポケットにリスのぬいぐるみがいるけど
「じゃあお姉さんこれください」
俺はそう言って店員さんにお願いする。ばいばい俺の二千円。長官からの大金が入るまでしばらく節約生活だな!
「かしこまりました。ラッピングはいかがなさいますか?」
「あーお願いします」
「はい、少々お時間いただきますね」
さて、こんな感じでお菓子も変えたところで一つ気になることを朱音に聞いておこう
「朱音さんや?店員さんと知り合い?」
なぜか朱音さんは店内に入った時からこの店員さんのことをじっと見つめているのである。それもほんとにじーーっと穴が開くくらい
「...そうだね知り合いだよ、お店でアルバイトしてるとは知らなかったけど」
「ふふ、アルバイトとは少し違うんよ?、ここ実家なんよウチの」
店員さんはそう言って優雅に笑っている。ほー、実家が洋菓子店か!少しあこがれるなぁ!美味しいものいっぱい食べられそう!俺ケーキ大好きなんだよね!誕生日に貯金切り崩して4号のケーキ丸ごと一人で食べるくらいには
「で、そちらの男性は誰なの?何故か男性からはありえへんくらいの力を感知できるんやけど?」
男性からはありえないくらいの力?え?なに?まさか朱音が玩味してた理由って
「あーー、花の魔法少女、一応彼も関係者だから言葉は濁さなくていいよ」
「あっそうなん?朱雀が言うならそうなんかな?」
あっ、魔法少女関係の方でしたか...そりゃ顔面偏差値が高いわけだ...よくよく魔力感知に集中してみると確かにすごい魔力量をしてる。うーん魔力感知は常にしておいた方がいいなぁ...こっちの世界に帰ってきてから気が緩んでたかも
「一応紹介しとくね、この人は私の彼氏だよ」
「ーーん?」
「いやだから彼氏だって」
「...へぇ~冗談うまくなったねぇ、そんな冗談はいらんよぉ?見え張りたい気持ちもわかるけどなぁ...」
「いや冗談は言ってないし見栄も張ってないんだけど」
どんだけ信じられてないんだ...そういえば天ちゃんが言ってたな魔法少女は恋をしないって、とりあえず自己紹介するか。このままだと俺の彼女が見え張って彼氏を紹介した恥ずかしい子になっちゃうから
「あー、すみませんご紹介にあずかりました朱雀の彼氏の三月優です。一応一年前ほどから彼氏してます。」
「ーーーまじかいな」
がびーーーーんっていう音が聞こえたかと思うくらいこの人びっくりしてるな...しゃべり方的に関西の人なのかな?リアクションもおっきいし、楽しい人だなぁ
「花ちゃん!ほんとだと思うよ!さっきヌイの連絡網に情報が流れてきたし!」
っと、びっくりしたぁ。急に花の魔法少女?さんのポケットから小さなぬいぐるみのリスが出てきて話始めた。これはあれか朱音の部屋にもいたヌイとかいうやつか?ていうか朱音の部屋にいたヨン?だったか?そいつもぬいぐるみのふりをしてたけど何なの?ヌイはぬいぐるみのふりをしないといけない呪いでもかかってるの?
「えぇ...花の魔法少女ヌイをそんなとこに入れてるの...」
朱音が信じられないものを見たといった感じで花の魔法少女を見ている。
「今日はたまたまやねぇ...魔法少女スカウトの旅の休憩らしいわぁ」
「スカウトとかしてるんだ...」
そんな感じで魔法少女を増やしてるのか...すげぇなおい
「なんや?彼氏さんはヌイのこととかはあんまり詳しくない感じなんか?」
「あー、うんまだ魔力が現れて数日だからね」
「へー、そうなんか...それにしてはすごい魔力量やねぇ...っと申し訳ないわそちらさんにだけ自己紹介させてもうて、私は花の魔法少女 甘奈 花希って言います。よろしゅうね」
そう言って甘奈さんはおっとりとした笑みを浮かべながら自己紹介をしてくれた。
「あ、はいよろしくお願いします」
「うん、よろしゅう、ってそれよりも朱雀は彼氏がいたんやねぇ...もしかしてこのお菓子を用意してるってことは...」
「うっす、これから彼女のご両親に会ってきます!」
「ひゃーー!!すごいなぁ、もうそこまで進んではるの?」
「優君、余計なことは言わなくていい!ほら!花の魔法少女も!ラッピング終わってるんだから早く渡してよ!」
朱音は真っ赤な顔で甘奈さんにそう言った。うーーむ今日も俺の彼女はかわいいな!最高だぜ!
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「やっとついたぁ...」
「なんかお疲れ様?」
なぜかすでにグロッキーな朱音の労わりながら俺はようやく運命の舞台(彼女の家)に到着した。ふーむ同級生からも鋼メンタルの三月君と恐れられている俺がめちゃくちゃ緊張しているのを感じるぞ...だってほら、足がえげつないくらい震えてるもん
「なんであんなところで魔法少女に会うかなぁ...魔法少女って数がすごく少ないのに」
「世間は狭いねぇ」
「そうだね...っとしっかりしろ私!ここからが本番なんだ!じゃ、じゃあ行くよ!優君!」
「おう!」
朱音は俺の元気のいい返事を聞きインターホンを鳴らした。あーーーーすっげぇ冷や汗が出てきたあああ!!!緊張しすぎてテンションがバグりかけているのを感じて必死になって冷静を保つ。あーー吐きそう!
「はーい!って朱音!すぐ開けるわね!」
「…」「…」
インターホンからおそらく朱音のママさんの声が響く、ふっまずいぜ緊張がマックスだぜ!
ちなみにだが今回ご両親に挨拶するためにあらかじめアポは取ってある。もちろん朱音自身もご両親に連絡するときに彼氏を連れていくと言っていたので、俺が来ることを知ってくれているはずである。電話越しに少しだけ聞こえたがママさんの声はだいぶ弾んでいたので歓迎されていると思いたい、いやホントマジで
そんなことを考えながら震えていると、ガチャという音とともに玄関のドアが開いた。
「朱音お帰り~それとーーキミが優君ね?」
そう言って現れたのはおそらく朱音のママさん?いやたぶんそうだよな?朱音にお姉さんがいるとか聞いたことないし...え、うそ若すぎない?どう見ても二十台後半にしか見えないんだけど...じゃなくて!今はしっかり自己紹介をしなければ!
「はい!三月優です!初めまして!!」
よし!かまなかった!よくやった俺!
「うふふ、よろしくね、じゃあこんなとこで話すのもなんだし中にどうぞ~パパも待ってるから!」
「はーい、ほら優君いくよー」
朱音に誘われつつ俺は決戦の舞台に乗り込んでいった。足と手を同時に出しながら歩いて...歩き方ってどうするんだっけ...泣
そうしてママさんと朱音の案内のもと朱音宅のリビングに俺は通された。
「優君はここに座ってね!朱音!何か飲み物出してあげて!ママは二階にいるパパを呼んでくるから!」
「はーい、優君オレンジジュースでいい?」
「あ、はい大丈夫です」
「なんで敬語?」
緊張してるからだよ!!朱音は俺が緊張していることを察してくれているようだが朱音自身も緊張しているようでオレンジジュースを入れる手が震えているのが分かる。ものすっごいぶるぶるしてる。こぼれそうですよ朱音さん!
「はい、オレンジジュース...」
朱音が俺の前にオレンジジュースを出し隣に座った。
「ねぇ優君、ほんとに、ほんとっに大丈夫なの?」
「まきゃせろ」
噛んだ
「噛んでる!めちゃくちゃ緊張してるじゃん!?」
しょうがないだろ!彼女のご両親に挨拶とか俺生まれて初めてなんだぞ!?正直吐きそうだよ!?
「はーい、パパ呼んできたわよー」
とりあえず落ち着こうと思いオレンジジュースに手を伸ばしたところで急にママさんの声が聞こえすぐに立ち上がる。
「いや、立たなくても...」
プリティーエンジェル朱音のばかやろう!座って挨拶なんぞできるわけないでしょ!そうして心の中で朱音に文句を言っているとママさんの後ろからパパさんと思わしき人物がリビングに入ってきた。
「...初めまして」
うお、でっか...え?嘘待って?何その体格...
「はははははじめまして!みつきゆううです!」
「まって、落ち着いて優君、ほんとに」
あかん、脳がバグる俺今どんな噛み方したの?ママさんが爆笑していることはわかるけど
「ほらあなた、笑って!優君が怖がってるでしょ!」
ママさんがそう言ってパパさんの口元をむにーーーとし、無理やり笑わせようとしている。
「む」
「まずい、優君の目がぐるぐるしてる...」
こんな感じで俺と朱音のご両親の初対面は...なかなかにカオスだった。




