メグル「安易に『がんばったね』なんて、言えるわけがない」
ストックあと一つで終了です。
ちなみにこっくてーるの障害は想像で書いていますので、実際にこういった状態の方がいるかはわかりません。
そこの点、よろしくお願いします。
プリンを一口食べて、まず驚いたのはそのなめらかさ。
白雪の名前の通りに、舌に乗った瞬間にさらりと溶けていく。だけど、その一瞬に絹のような舌触りを残していった。
スプーンですくった時にはそれなりに弾力があったはずなのに、不思議だなぁ。
あ、味はもちろん美味しい。甘さも程良いし、器代わりのしっとりしたカボチャの身もいいアクセントになってると思う。
うーん、無理かと思ったけど食べられちゃいそうだな。
「おいしいです」
「そう? 良かったー」
こちらをじっと見ていたこっくてーるさんに感想を言う。みんなも頷いてるのを見て、こっくてーるさんはほっと胸を撫で下ろした。
「流石、『赤金の料理人』だ。“触感の魔術師”の異名も頷けるな。味ももちろんだが、このなめらかさは素晴らしい」
「ええ、出来るならレシピを聞いてリアルで試してみたいですね」
現実でもいいもの食べてそうな北欧神話婦々も賞賛してるし、甘いもの好きなキーユちゃんはプリンに夢中で無言で食べている。
アサヒさんもこっちが見てて嬉しくなるくらい顔を綻ばせてるし、男性のアンツさんも無理なく食べられる甘さに満足そうだ。
「ふっふっふ、そりゃあハコニワに来るまで味なんて知らなかったんだもん。
口の中で分かるのは触覚だけだったからね。そこにこだわるのは当然だよー」
得意げなこっくてーるさんの言葉に納得する。経口摂取が出来るなら、食事から栄養をとらないと良くないしね。
「こっくてーるさん、少し聞いてもいいですか?」
「うん? 答えられることならいいよー。
あと敬語いらないよー。なりきりじゃないなら普通な感じで話してー」
「あ、うん。じゃあ、私にも普段通りで構わないから。それで、こっくてーるちゃんに聞きたいことがあるんだけど」
普段通りの口調に戻して聞き直すと「どぞどぞー」とこっくてーるちゃんから軽い感じで返ってきた。
それから私は彼女からNRシステムの使い心地なんかを聞く。
「うん、いい感じだよ? メグルと違って、わたしはゼロからのスタートだったから最初は自分が感じてる『味覚』がみんなとおんなじなのか不安に思ったけど……まあ、一応、トップ生産組に数えられるくらいになれたしね? 感覚は現実とおんなじだと思うよ。
あとリアルではやっと子供並の味覚になってきたかなー?
お陰でピーマン食べられなくなっちゃったんだよねー。あはは、苦いって味覚はこれから勉強中だよー」
参った参ったと笑う彼女は嬉しそうだ。きっと「苦いー」と言いながらも、現実の彼女も笑顔なんじゃないだろうか。
それを想像すると、私の頬も緩むのが分かった。
「いやー、やっぱりメグルに話して良かった! アホロートル八世様々だよ!」
「わっ」
こっくてーるちゃんは私を見て、急に両手で私の左手を取って、ぶんぶん振り出した。
何だろう、肩の上のアホロートル八世も嬉しそうにぶぉんぶぉん翼を振っている。
こっくてーるちゃんの突然の行動に、私だけじゃなくてみんなも驚いてる。
「こっくてーるちゃん?」
「ああ、ごめんねー? びっくりしたよね。
いやね、全員が全員じゃないけど、NRシステム利用者にひどいこと言われたことあってねー。
わたしがトップ生産組とか言われ始めたら、やれチートだーなんだーってさ。
料理人仲間にもNRシステムの感覚強化があるから凄い料理が出来るんだろって言われたりねー」
「ま、あんまりしつこいのは垢BANされちゃったけど」と笑う彼女の顔はぎこちない。
そこでやっと私は彼女の手の強さと冷たさが緊張から来ていたことに気付けた。
昔の悪意を思い出しながらの告白は、緊張するもんね。
「だから、もう店が軌道に乗ってからは誰にも言ってなかったんだー。言ってもしょうがないかなーって。
……わたしは、ただ『お互いリハビリがんばろーね』って励まし合いたいだけだったんだけどねー」
アホロートル八世がこっくてーるちゃんの髪をついばむ。
こっくてーるちゃんもそれに応えるようにアホロートル八世の木で出来た翼を撫でた。
「この子がね、メグルを見てわたしを引っ張ってきたの。
わたしが木工スキルで作った子だから喋れないんだけど、何だか『この人なら大丈夫だから、話してみなよ』って言われた気がしてねー。
だから、久しぶりにスカーフ外してみたんだ」
こっくてーるちゃんの背中を押した木の鶏は、「ほら、正しかっただろう」と言うように胸を膨らませる。
まるで良く出来た物語みたいだと思ったけど、すぐにさっき貰った称号を思い出して納得した。
『βの慈愛:あなたの進む道に、良縁を。』
恐らくこの『良縁』が、いい方向にはたらいたんじゃないだろうか。
私だけじゃなくて、こっくてーるちゃんにとっても。
「こっくてーるちゃん」
「メグル?」
今度は私から彼女の手を握る。
まだ彼女の手は冷たい。多分、本当は彼女の明るさに合うような温かい手なんじゃないかな。
私は彼女の手が本来の温度を早く取り戻せるように、ぎゅっと握った。
「これから、よろしく。
『先輩』に今後も聞くことがあるかもしれないけど、その時は頼ってもいいかな?
私もここでやりたいことがあるから、こっくてーるちゃんみたいに夢を叶えられるよう頑張るよ。
これから、こっくてーるちゃんのおいしい料理を楽しみにゲームするね」
もしかしたら、普通は「今まで頑張ったね」「大変なのに凄いね」とか言ってあげるのかもしれない。
でも、それは彼女の欲しい言葉じゃない気がした。私としても、そんなこと言えない。
だから押しつけかもしれないけど、自分の気持ちを話した。
「うんっ、これからよろしくメグル!
気になることがあったら、どんどん聞いてね? 買い付け以外は基本ココにいるから!
えへへ、リハビリ仲間が増えて嬉しいなー。ねー? アホロートル八世ー?」
私の答えは概ね正解だったみたいで、こっくてーるちゃんはさっきまでのぎこちない笑みから、ぱぁっと輝くような笑顔に変わる。
うん、やっぱり女の子は笑顔が一番だ。
「凄いっす、やばいっすよ、アンツ。
白のおねーさんってば、ドラロリ神、ドS女神に続いて『赤金の料理人』まで攻略っすよー」
「ああ、凄ぇな。あのギャルゲ主人公並の攻略速度。
しかもシスターリーアにまで押し倒されてたらしいからな……あー、ニュースレターのネタに出来ないのが口惜しいぜ」
「メグルちゃんの人たらしはプレイヤースキル。だから無自覚に羽虫を引き寄せる……いつも処理が大変」
「はっはっは、キーユくん、冗談は……おいおい、目が本気じゃないか。そういうのは冗談で収めておいてくれよ」
「キーユ様、激しく同意致します。お互い苦労しますが、手綱を引き締めて頑張りましょう」
「うん。調教は根気と努力が大事」
「ええ、そうですね」
「おやおや、ははは。おーい、何だかボクに飛び火して来たぞ? ……アサヒくん、アンツくん、ヘルプ!」
「え? あたしは何も聞こえてないっすよ?」
「俺達をプレイに巻き込むんじゃねぇ」
ははは、こやつらめ。
全部聞こえてるよ?
「言っとくけど、私はキーユちゃんから調教を受けた記憶は一切ない!」
それだけは誤解のないよう、きっちり言っておきますからねっ!
プレイヤーネーム《メグル》
《NRシステム利用中》
種族:夢人・無
所持金:450ルピス
SP:0
ジョブ1《調教師》
所持スキル一覧
《調教Lv.1》《識別Lv.1》《意志疎通Lv.1》
空枠:7
ジョブ2《商人》
所持スキル
《契約Lv.1》《道具製作Lv.1》
空枠:3
《ステータス》
Str:1[3]
Vit:1[10](7+3)
Agi:1[2](1+1)
Int:1[10]
Min:1[10]
Dex:1[3]
Luk:7[15](10+10)
※デスペナルティ発生中
称号一覧
《αの祈り》《βの慈愛》《γの禍福》
装備品一覧
頭《神使なりきりセット・牛耳(白)》
上体《夢人のシャツ・白》
下肢《夢人のズボン・白》
靴《夢人の靴・白》
装飾品一覧
《補助装具・NRS腕用・白》
《補助装具・NRS足用・白》
《杖・前腕固定型・白》
《痛覚50%減少のチョーカー・白》
《神使なりきりセット・牛尻尾(白)》
空枠:5
所持神器一覧
『神使なりきりセット・牛(白)』
『神使なりきりセット・豹(白)』




