メグル「場面は変わりまして」
一話一話が短めなのでメインで書いているものより話数が増えそうです。
本日10個目。あと二つでおしまいです。
「さて、女神姉妹が逃げた後、私達はみんながオススメする『ホワイト』で一番凄腕の料理人こっくてーるさんの営むレストラン『木のしっぽ』へ来た訳ですが」
「……メグルちゃん? いきなり何で急な場面転換を読者へ説明するような台詞を言い出したの?」
「現実逃避しなきゃやってられないからだよ!」
こっくり首を傾げながらキーユちゃんに問われ、私は思わず顔を左手で覆う。
ああ、のんきにゆらゆらぴこぴこする自分の牛尻尾と牛耳が煩わしい。
でもこれ着けてるだけでFPとWPの減りが目に見えて違うからなぁ。背に腹は代えられないよなぁ。
「HTでまだ十時半。現実でまだ二時間経ってないんだよ?
ハコニワやり始めて二時間かからないで、私に何が起こりましたか!?」
「『夢人内人気シスターランキング』でいつも三位以内を取ってるリーアから押し倒されてたね」
「そこは蒸し返さないで! っていうかあの人、そんな有名人だったの!?」
もうやめて! メグルの精神値はまだ1なんだから!
私の座るテーブルで不思議そうな顔をしているのはキーユちゃんだけだ。アサヒさんとアンツさんは私の言いたいことが分かって貰えたみたいで生温かい笑顔を向けてくれる。
ありがとう、君達だけだよ。ありがとう。
シグルスさんは首こそ傾げていないが、絶対分かってない。のほほんとお茶飲んでるし。
ブリュンヒルデさん? 分かってて楽しそうにお茶飲んでますよ、ちくしょう!
キャラ作成で称号ゲット。ゲーム開始一時間以内にPKを経験。
巨乳シスターから迫られたと思ったら、ぺたんこ女神姉妹からの称号と神器を渡される。
そして今お茶を飲んでいるメンバーは、料理を待っているついでに自己紹介を聞いた所、ハコニワでかなりの有名人であるらしい。
攻略組でトップクランのリーダーをしているシグルスさんと副リーダーのブリュンヒルデさん。アンツさんとアサヒさんもハコニワ最大の情報屋の筆頭メンバーだそう。
キーユちゃんも武道大会イベントでは上位入賞常連の孤高のソロプレイヤーであるらしいですよ? いいの? ソロプレイヤーがここでわいわいみんなとお茶飲んでて?
いや、誰が悪い訳じゃないよ? これも巡り合わせだから楽しいんだよ?
でも、もう少し間隔空けてやって来てくれてもいいと思うんだ。
ここに入るまでも周りからの視線が痛くて、痛くて。このレストランに個室があって良かった、ほんとに。
「ああー、もう。色々怒濤で何だかもう。
ゲームは楽しんでナンボだけど、慣れてないおばさんとしては少しクールダウンが欲しい訳で」
「えー、おばさんって自虐止めようよー? お姉さん、まだ若いじゃない」
「いや、三十路越えたらやっぱり体力の衰えが如実で……疲れが翌日抜けなくなってきたんですよ」
数年前は疲れなんて一晩寝たらすぐ取れたってのに。
今じゃあ、ちょっと夜更かしすると翌日辛いの何のって。
「……って、普通に会話してたけど。お嬢さんはどなたですか」
「んー? わたしー?」
私は、はたっと気付き、私の背後で腕を組みながらにこにこと微笑む女の子に尋ねる。
見た目は女子高生くらいか。顎のラインで切り揃えた赤茶色の髪がもっと大人びて見せている。彼女の真っ白なシェフ姿は、木で作られた優しい色合いのお店にとてもよく合っていた。
そして一番驚いたのは彼女の左肩だ。何故か木で作られた尾の長い鶏が乗っていた。
木の鶏は鶏の癖に飛べるらしい。バサリと言うか、ぶぉんと音をさせて鶏は私の頭に着地する。
思ったより軽い。
あ、こら。耳を啄むな。
「こらこら。止めなさい、アホロートル八世。
ごめんなさい、お姉さん。私と同じ人を見て、つい嬉しくなっちゃったみたい。
あ、わたしの名前はこっくてーる。ここのお店を作った店主兼シェフだよ。
お姉さんは『木のしっぽ』は初めてだよね? お仲間同士、今後共ウチをご贔屓に!」
こっくてーるさんがたしなめると、「アホロートル八世」と呼ばれた木の鶏はぶぉんぶぉんと羽音を立てて彼女の肩に戻る。
こっくてーるさんもこっくてーるさんで、一気に話すと私の左手を両手で握って、ぶんぶん振ってくる。
うぉ、意外に力強いな。
あと、手がかなり冷たい。
「う、うん。私はメグル。少し前に始めたばっかの初心者です。よろしく」
「よろしくー!」
なんか、大人っぽいのに、めちゃくちゃ賑やかな子だなぁ。
……んん?
ちょっと、待って。
「同じ、お仲間?」
私の呟きに、「うん、そうそう!」とこっくてーるさんは首に巻いていた赤いスカーフを外しながら頷いた。
「あ」
彼女の首には私と同じチョーカーがあった。
だけど色は違っていて、彼女のは赤だ。
「わたしもメグルさんと同じでNRシステム使ってるんだー」
あっけらかんと話したこっくてーるさんに、まず反応を示したのはアサヒさんとアンツさんだった。
「白のおねーさん、凄いっす、凄すぎっす。
『秘の鳥』の身内で、トップクランのリーダーにラッキースケベでKillされたと思ったら、女神三人から称号貰って、今度は『赤金の料理人』のプライバシーゲットとか……怖いっす、おねーさんのスクープ収拾能力が怖いっす」
「ああ、しかも公に出来ないネタばっかな……フミハルの野郎にだけは知られねーようにしないと」
二人して頭を抱えて、ぶつぶつ言っている。
ははは、何だか不穏な台詞があったけど、スルーしちゃってもいいかなぁ?
『赤金の料理人』? って二つ名があるってことは、こっくてーるさんも有名人ってことだよなぁ。
……一つ良いかな?
どうしてこうなった!
「ぬ? こっくてーるくんはNRシステム利用者だったのか。
もしや、今までの街解放イベントで無理をさせてしまったかな」
「シグルス、心配ありがとー。でもだいじょぶだよー。
わたしの修復神経は味覚だからー」
「それなら戦闘は平気。良かった」
「そうそう。だから今後共新しい街へ行く時は護衛よろしくー」
「ああ、任せてくれ」
アンツさんやアサヒさんの苦悩は見えないようで、シグルスさんやキーユちゃんは、のほほんとこっくてーるさんと会話を続けている。
頑張れ、アンツさんにアサヒさん。貴重な常識人枠だ。
逃してたまるか。
「ま、わたしの話は食べながらでも出来るからさー。
まずはわたしの新作スイーツをどうぞ召し上がれー」
話を一端切り上げ、ぱんっとこっくてーるさんが一つ手を叩く。
すると、これまた木で出来た二足歩行の熊がとことこと足音をさせながら、大きなカボチャを持ってきた。
カボチャは雪のように真っ白だ。この町の名産なのかな。
「じゃじゃーん。新作は『白雪カボチャの丸ごとプリン』でーす。
当然、みんなの苦手な物は入れてないのでご安心を!
バフはAgiを一時間7%アップでーす」
ぱかっとカボチャのツルを取っ手代わりに、蓋になった部分を取る。
中身のプリンは外皮と同じように真っ白で、つるんと光を反射していた。周りの身はクリームイエローでしっとりしている。
てきぱきとこっくてーるさんがカボチャごと切り分けてくれる。その間に木の熊とブリュンヒルデさんが紅茶を淹れ直してくれた。
流石、現役メイドのブリュンヒルデさん。所作が手慣れてるなぁ。
「どうぞー」
「ありがとう」
にっこり笑ったこっくてーるさんからカボチャプリンを受け取る。綺麗に六等分されたプリンは結構重かった。
おおぅ、食べきれるだろうか。
「いただきます」
少し光沢のある木のスプーンも渡されて、私は手を合わせる。
NRシステム利用者に聞きたいこともあったけれど、まずはこのカボチャプリンを食べよう。
私はふるるんと揺れるプリンへスプーンを近付けた。
プレイヤーネーム《メグル》
《NRシステム利用中》
種族:夢人・無
所持金:450ルピス
SP:0
ジョブ1《調教師》
所持スキル一覧
《調教Lv.1》《識別Lv.1》《意志疎通Lv.1》
空枠:7
ジョブ2《商人》
所持スキル
《契約Lv.1》《道具製作Lv.1》
空枠:3
《ステータス》
Str:1[3]
Vit:1[10](7+3)
Agi:1[2](1+1)
Int:1[10]
Min:1[10]
Dex:1[3]
Luk:7[15](10+10)
※デスペナルティ発生中
称号一覧
《αの祈り》《βの慈愛》《γの禍福》
装備品一覧
頭《神使なりきりセット・牛耳(白)》
上体《夢人のシャツ・白》
下肢《夢人のズボン・白》
靴《夢人の靴・白》
装飾品一覧
《補助装具・NRS腕用・白》
《補助装具・NRS足用・白》
《杖・前腕固定型・白》
《痛覚50%減少のチョーカー・白》
《神使なりきりセット・牛尻尾(白)》
空枠:5
所持神器一覧
『神使なりきりセット・牛(白)』
『神使なりきりセット・豹(白)』




