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喉元まで出かかっている感覚











イケメンというのは、顔面だけでなく脳の中身やふるまいの隙のなさも指すのだろうか。

やっぱイケメンって「イケてるメンズ」なだけあって、顔面偏差値だけではもはやイケメンとは呼べないのではないか。

いや、私は顔だけで「イケメンだね」って言ってもいいと思う。だから私は氷室くんを「イケメンだ」と言ってたんだけど……今日から私の中のイケメン像が変わりそうだ。

ご招待されたイケメン氷室兵助の部屋は何というか……インテリアの見本みたいな印象を受けた。……僻んでない。断じて僻んでない。ただ、これを見た後だと間違いなく私の部屋には招けない。絶対に無理。あんな部屋にこんな部屋をコーディネートしてる人を入れられねぇわ。




「……大学生男子の部屋ってもっと乱雑なもんだと思ってたのに」




実際、友人の部屋はそうだった。一見綺麗に見えるんだけど、押入れあけてみてびっくりした。本が、漫画もラノベもごっちゃに散らばっていた。積み上げられてたとかじゃない。散らばっていたのだ。地震でもあったの? って感じ。それに比べて氷室くんの部屋の何とまあ綺麗なこと。収納上手でテレビにでも出るんじゃない、その内。



「これでも急いで片付けたんだ。めぐみを呼べるように」




普段はこんなに綺麗じゃないよ、と言って笑ったけど、きっと嘘だ。謙遜してるんだ。




「麦茶でいい?」


「うん。パソコンのコードってどこさせばいい?」


「あ、ちょっと待って。いまタコ足出すから……」




麦茶を出してくれたあと、ベッド下の収納ボックスからタコ足を出してきた。チラリと見えた感じ、ボックスの中も整頓されている。流石、隙がない。



「……提出1週間前かぁー。何か、こう、久しぶりに真面目ちゃんになった気分」


「そうかい?」


「だっていつも3日前とかにやってたもん。それで間に合っちゃってたから変に自信ついちゃったのかな。良くない癖だけど」



あらかじめコピーしておいた資料に目を通しながら使えそうなところに赤線を引いていく。氷室くんは私の手元をじっと見ている。やりづらい。




「読むの早いんだね」


「読んでないよ。テーマに関係する単語がある文に線引いてるだけ。一々読んでると時間かかっちゃうし」



元々は英語の長文読解に使う技なんだけどね。面倒なレポートを短時間でそれっぽく仕上げるのに非常に使えるので重宝してる。内容がどうであれ、だが。そんなことをやってるとパソコンが立ち上がった。デスクトップは見せられないので、少し伏せてある。……待てよ、むしろオープンにした方がいいんじゃないか? 氷室くんに現実を見てもらうためにも!! ……いや、私がそこまで晒す必要あるかな。大なり小なり私の心は傷つくわけだし。




「ひむ、兵助はもう終わってるんだっけ?」


「いや、清書がまだなんだ」


「終わってるようなもんだよ、それ」




見てくれこの、立ち上げたはいいが書き出してすらいないこの画面を。……終わるかなー? いや、終わらせなきゃ、なんだけどねー?

ワードを立ち上げて、タイトルを打ち込んでいく。目の前に真面目に課題に取り組んだ人がいると、何だか自分のやってることに罪悪感を感じる。もちろん、褒められたことじゃないから当然なんだけど。

ちらり、と氷室くんを見ると、ばちりと目があった。




「……えー、っと。どうかした?」


「めぐみが俺の部屋にいるんだな、って思うとさ。感慨深いものがあるな、って嬉しくて」


「……それは、えーっと」


「あのさ、さっきから気になってたことがあるんだけど、聞いていい?」


「なんだろ、いいけど?」




氷室くんはにこりと笑って、向かいに座っていたのを、立ち上がってわざわざ私の横に座り直した。びくり、と体が跳ねる。けど、それを無視して氷室くんの大きな手が重なってきた。内心ビビりまくりである。




「さっき、男子の部屋はもっと乱雑、って言ってたけど……男の部屋行ったことあるの?」


「うん。宅飲みとかで。委員長の部屋とか、バイト仲間の部屋とか。しょっちゅうじゃないけど」


「めぐみの部屋に呼んだり?」


「それはあんまりないかな。委員会メンバーは来た事ある人いるけど、それがどうかした?」




答えて首を傾げると、氷室くんは薄く微笑んで、重ねてる手の力を強くした。



「いや、だからなのかな、って思って。それってさ、大勢で、だよね?」


「そーだね。5人以上くらいかなぁ?」


「やっぱり。ねぇ、めぐみって警戒心足りてないよ」


「……はぁ……」




氷室くんの言ってることが分かんない。




「分かってないよね。ちょっと心配になってくるな……それとも、そこまで俺って意識されてない?」


「はっきり言ってよ……訳わかんない」


「……いいよ。今は。逃げられたくないし。もうめぐみには俺がいるんだし」


「……あのさ、私、言ってもらわないと理解できないんだけど」


「そのうちね。さ、めぐみ、晩御飯どうする?」




ころりと話題を変えられる。




「……台所使っていいなら、私作ってもいいけど……」



とりあえず、その話題転換に乗ることにする。




「本当? めぐみ作ってくれるの?」


「あまり上手ではないけど、それでいいなら」


「もちろん。……嬉しいな」




そう言って本当に嬉しそうに笑うもんだから、さっきまでのことを追求する気にもならなかった。

断じて絆されたわけじゃない。これ以上は聞いても答えてくれなさそうだな、と諦めが入ったからである。





1年ぶりという事実に戦慄:(;゛゜'ω゜'):


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