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プレアデスの伝説 姫たちの建国物語  作者: のらしろ
第七章 国際社会への仲間入り

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第144話 実兄との本音の外交

 

 準備を整え、外交団の帰りを一の浜で待つこと十日。

 十日だよ、十日。

 遅くはない。

 でも、俺以外は誰も気にしていない。

 まあ、毎日無線で連絡を取っているので途中で遭難したわけではないことは知っていたけど、それにしても遅い。

 が、この世界ではこれがデフォらしい。

 誰もまったく気にせず仕事をしていた。


 沖にようやく帆先が見えたので、俺は慌てて一の浜に戻りフランに知らせると、あきれられた。


「守様がいちいち監視されずとも」


 と、あきれながら俺の報告を聞いていた。

 フランはすぐに周りの者たちを使い、歓迎の準備に入る。

 そして、やってきたのは予想どおりフランの実兄だった。


「やあ、フラン。

 ここもずいぶん立派になったね」


「ええ、お兄さま。

 おかげさまで、しっかり国としての体裁も整いましたので外交に出ましたが、そちらからはかなりいろいろと言われたようですわね。

 外交団長からの報告はまだですが、話には聞いております」


「使徒様のお力か。

 まあいい。

 確かに、こちらの不手際としか言いようのない外交だったことは私から詫びよう。

 今回は邪魔な奴は連れてこなかったので、しっかり本音で外交ができるからね」


 そう言ってから、今度は正式に俺の方へ向き直り、礼に則った挨拶を始める。

 どうやらここからが正式な外交らしい。


 俺はこの世界の礼儀など知らないので、公務員時代の礼儀にのっとって挨拶を返す。

 一通りの歓迎の式典らしいことが済んだので、フランは実兄の連れてきた外交団を含め全員を迎賓館へ案内した。


 そこからは本格的な外交とばかりに、ダーナやほかの重臣たちもそれぞれに分かれて水面下で折衝を始めるようだ。

 相手側からすれば、まず絶対に確認しなければならないのがこちらの国力だ。

 それを分担して調査しているようで、中には一の浜に出て周囲を観察しながら、こちらが付けた案内役と話し込んでいる者も見えた。


 まあ、俺も元は公務員とはいえ外交に関してはずぶの素人だ。

 よく知らないが、こういう形もあるのだろう。

 それに、ここはそういう目的で準備してきた集落で、どこを見られても構わない……らしい。


 なので俺も安心して自分の仕事ができるというわけで、今はフランに連れられてフランの実兄との会談だ。

 一応、これからの会談は最初にフランから「プライベート扱いで正規の外交ではない」と説明されていた。


 とはいえ、これも立派な外交だというから、ますます俺には理解できない。


 ダーナが言うには、正規の外交というのは議事録や外交メモなど、公式・非公式を問わず文書が残るものを指すらしく、ここでの会話は一切メモすら取られないから外交ではないのだという。


 確かに約束事には備忘も兼ねて証拠を残す必要はあるだろうが、口約束だって立派な誓約になると俺は思う。

 まあ、そのあたりはフランたちの流儀に任せよう。


「早速ですが、お兄さまがわざわざここに来た理由を教えてください」


「いきなりだな、フランは」


「ええ。ですが正規の席では建前は聞けても、本音を聞くことはできませんわよね」


「それもそうか。

 なら……」


 フランと実兄の会話から始まった今回の会談だが、早速実兄は俺に詫びてきた。


「今回の訪問でご提示いただいたこと、本当に感謝いたします。

 しかし、その対応にこちらの不手際があり、あとでお聞きになるやもしれませんが、あまりにひどく、急ぎ詫びに参った次第です」


 外交上、これは「なかったこと」になるらしいので、ここでどれだけ詫びても国同士の貸し借りや上下関係には影響しないらしい。

 だからこそ、非常に丁寧に詫びられたわけだが、外交の席では自国の失敗についてはできるだけ触れられない。

 まず詫びなどありえない。


 まあ、俺の生まれた世界でも隣国との間では、戦後のどさくさや混乱の影響からか、詫びたことが何十年たっても問題の根源となっているしな。

 何より、戦後の混乱は特異だとしても、あの戦争よりひどいことを欧米は世界各国にやらかしてきたが、それについては一切詫びなどしたことがない。

 それでいて、日本には「ひどいことをしたのだから云々」。

 まあいいか。


 そのあとだが、実兄としてはこちらから申し出た情報のやり取りで協力してもらいたいらしい。

 だが、先の自国のやらかしがあるので、それに触れず条約として締結したいとフランに正直に話していた。


「お兄さま。

 ずいぶんと……」


「ああ、こちらとしては虫のいい話だと重々承知しているが、そこを曲げてお願いしたい」


「そこまでですか……国元で何かありましたか?」


「さすがに見抜くか。

 いつものあれだ、政争だよ。

 祖国を取り戻したい気持ちは誰もが同じはずなのだが、ここにきていろいろ画策する連中が多くてな」


 そこから具体的な話を正直に教えてくれた。

 それによると、今回の祖国奪還作戦で指導権を無理やり取って功績を独占し、祖国での立場を強化したい連中が多くいるらしい。

 さらに、祖国の占領について直接的な責任がある旧家の中にもその協力者が多いという。


 まあ、フランの話から聞いただけだが、あのフランの祖国の防衛崩壊については明らかに人災だろう。

 もともと海もあるのだから相当な防衛力を持っていたはずなのに、指揮命令系統の要が全員不在になる状況を作り出した事実、その状況が事前に敵国に漏れていた件など、絶対におかしい。


 そのあたりも影響しているのか、実兄の説明には歯切れが悪い。

 自国の不利益につながりかねない情報まで正直に話してくれてはいるが、心理面というか闇の部分に触れそうなところでは極端に言葉を濁す。

 まあ、聞いているフランも実情をよく知る立場だったようで、そのあたりの追及は一切なかったけどね。


 とにかく今回の実兄の訪問で、俺たちの外交は十分に役目を果たしたと思う。

 協力についても明日以降の外交の席できちんと条約にまとめるようで、獣人国に続き、この世界の大国の一つだったフランの祖国とも外交関係を持つに至った。

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