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プレアデスの伝説 姫たちの建国物語  作者: のらしろ
第七章 国際社会への仲間入り

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第142話 快適な船旅とそうでない船旅



 曳航しての航海は、問題らしい問題はほとんど無かった……いや、時々無線から聞こえてくるクレームがあったくらいか。

 そう、今回の使節団として帆船に乗せた者には、フェリーで生活しているような俺たち勢力の最高幹部たちはほとんど乗せていない。


 せいぜいドワーフの親方くらいだ。

 ただ、相談役としてエルフの元魔法教師であるエルムは教え子と一緒に帆船に乗っているが、一緒に乗っていた騎士たちが適当な理由をつけてこちらに移ってきたことが面白くないらしく、ことあるごとに「ずるい」と言い立ててくる。


 俺も艦橋にいるときに聞いたが、相当妬んでいるようだ。

 そういえばエルムも姫の従者という立場もあって、フェリーで生活している者の一人だった。


 俺の持つ……いや、悔しいがカミサマから与えられている俺の世界の船の快適さを十二分以上知っているから、騎士たちの移乗の本当の理由を邪推したのだろう。


 いや、邪推ではなく本心だろうが、それでもこちらの人手が足りないのは事実で、そういう事情から正式な抗議として言えないことくらいは、頭の良いエルムなら理解しているはずだ。


 それでも帆船の不便さを思うと我慢できなかったのか、定期連絡の折に混じって文句を言い立てていた。


「数日の辛抱だ」とケリーは毎回なだめているようだが、帰ったら俺はエルムに何を言われることか、今から覚悟しておかないとまずそうだ。


 とにかく、そんなコントのようなやり取りをしながら船を進め、無事に目的地沖20kmのところまで着いた。


「守様。

 ここで……」


「ああ、ここで曳航を止め、帆船だけで向かってもらう」


「は~、またあっちに戻るのか」


 帆船の護衛役として派遣している騎士たちからは、ため息のような愚痴が漏れた。


「あなた方、私と代わりませんか」


 なんて言い出す者まで出る始末だ。


「そんなことできるはずないでしょ」


「そんなの向こうにわからないわよ」


「いいから、すぐに移乗して」


 最後はケリーに怒られながら分かれていった。

 そう、彼女らはここから20kmの往復だけでなく、最悪の事態を考えているのだ。

 向こうから使節団として誰かが派遣されないとも限らない。

 そうなると、ここから拠点を置く一の浜まで戻る間中、ずっと帆船に押し込められることが考えられる。


 いや、可能性レベルではなく、大方フランの兄あたりが乗り込んできそうなのだが、そうなると帰りは帆船だけとなり、数日は余計にかかる。

 その間、あの帆船に押し込められるのを嫌っているのだ。


 あの帆船だって、この時代のレベルから考えれば、改装したときに衛生面には十分気を配って作り変えたし、この時代にほとんど矛盾が出ない範囲でかなり工夫を凝らして生活しやすくしているはずだ。


 それでも、この巡視船よりも……さすがに誰もフェリーと比べる者はいないだろうが、この巡視船の生活のほうが遥かに快適らしい。


 俺からしたら「そうかな」と思わなくもないが、そうなのだろう。


 個室を多めに作り換えて換気も考えてはいるけれど、それでも各部屋に窓を持つこの船に比べると格段に劣るらしい。


 うん、俺が学生時代に乗せられた帆船と同じと考えてはダメらしい。

 あのときは四人部屋のハンモックだったような……あれ、二段ベッドだったか。

 まあいいか。


 とにかく無事に帆船は外交の場へと船を進めていった。

 こういう時にどかっと落ち着いて構えている、今回の団長であるドワーフの親方には頭が下がる。

 彼もフェリー生活組なのに。


「ドワーフの方たちは、お酒さえあればどこでも良いのですよ」


 と、身も蓋もないことをケリーが教えてくれる。

 確かに今回の件で、あのワイン一樽の報酬を約束しているが、その他に帆船に二樽を積み込んでいる。

 一応、外交のため派遣した船なので船内パーティー用にと……だけど、ひょっとして。


「そんなの当たり前ですよ、守様。

 帰りまで持つかも怪しいですから」


「そんなの俺は知らん。

 それに、帰るまでの追加もできないし、何より船の物資の管理は船長の範疇だろう。

 親方が勝手に……あれ、ひょっとして盗み飲み……」


「さすがにそれはないでしょうが、船長を脅すくらいのことはしているかもしれませんね」


 まあ、いいか。

 うちの連中の平常運転だと考えておこう。


 ここからは俺たちにとって最大の敵は“暇になること”だ。

 尤も俺は、一の浜に戻りたければヘリも使えるので戻ることくらいはできそうなのだが、緊急事態でもない限りそれはしたくないし、こっちも心配でもある。


 一応今回は、団長の親方が特使として俺からの親書を渡し、協力を申し出るまでで仕事は終わり。


 余計な使いの要請については戻って検討ということにしてあるので、向こうに滞在するにしても数日だろう。


 もし長くなるようなら、一度戻るくらいはしても良いかもしれない。


 船を止め、艦橋でレーダーの監視くらいしかすることのない生活を丸一日していると、翌日に無線で連絡が入る。

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