第132話 聖女様の回収
すぐに、そのための準備に入る。
まずは、オスプレイで回収する場所の選定だ。
村からそれほどの距離がないが、割と近くに草原を見つけてあったので、そこをつかうかどうかで悩んでいた。
そう、村からの距離が問題になるのだ。
あそこなら、絶対に村人から異変を感じさせてしまう。
目の良いものならばオスプレイもどきを直接見られるかもしれないので、悩んでいると、ダーナの一人から声をかけられた。
「守様。
聖女様の奇蹟とでも言っておけばよいのでは」
確かに、魔法もある世界なのだ。
なんでもありで、押し通せなくもないか。
俺は心を決め、早速準備に取り掛かる。
まずは、現在哨戒のために飛行中のドローンを使い、連中との連絡からだ。
すぐにソフィアとコンタクトを取って、保護した聖女様の奇蹟を使い女神さまの元に向かうと吹聴してもらった。
さすがに、何も知らない聖女様は「私にそんなことはできません」と必死に弁解しているが、そんなことは後で丁寧に説明しながら詫びることで無視して、回収場所についても、ドローンで案内していくことを伝えた。
とりあえず、偵察に出しているドローンをもう一度ソフィアたちのいる村に向け、ドローンから直接ソフィアに声をかける。
さすがに周りにいる村人たちは一様に驚くが、今はそんなことは気にしていない。
こちらからの意図は無事に伝わったようで、すぐにソフィアたち一行は動き出したので、俺も格納庫に急ぎオスプレイもどきを準備して、目的地に向かう。
今回の回収にはダーナやフランは連れて行かずに、巡視船の方を任せている。
何かあれば無線で連絡を取ってもらうためだ。
ケリーは、目の前の浜にベースキャンプを置いてあり、そこを任せているので、残った騎士一人だけを連れて向かうことになった。
と言っても、最新のオスプレイもどきだ。
速度が違い、あっという間に俺が考えていた草原についたので、その場に着陸させ、持ってきたドローンをここから飛ばす。
ソフィアたちは、まだ街道を進んでいたのを発見したので、ドローンから指示を出して、街道から外れて草原に向かってもらった。
30分ばかり待つと、遠くに直接一行が確認できたので、一緒に連れてきた騎士に出迎えを任せて、オスプレイもどきのエンジンを始動させる。
今まで気が付いていなかったわけではないが、さすがにこの世界、騒音というものは戦でもない限りあまりないようで、迎えにオスプレイもどきの外に出ている騎士もオスプレイもどきの発するエンジン音に驚いていた。
乗っている時にも騒音は聞こえているはずなのだが、外に出て聞くとまた違うのか、うるさそうにしている。
まあ、実際にうるさいのだけどね。
それでも無事にソフィアたちと合流できたので、すぐに乗せるが、聖女様?は、少し抵抗しているようだ。
まあ、ものすごい音を出す謎の物体の中に入りたくはないよな。
俺が操縦席から離れて、その聖女様に近づき声をかける。
「あなたが聖女様ですか」
「あ、守様。
彼女が信託を受けた聖女様です。
私が聞いた信託にある聖女様と同じでしたし」
そう、ソフィアも信託を受けていたので、その際に聖女様の様子なども聞いていたようだ。
その聖女様が俺に話しかけてきた。
「失礼ですが、あなたは?」
「申し遅れました。
私は、守と言います。
領海守。
ここの皆を預かるものです」
「聖女様、守様は大魔導士でもありますが、神様から遣わされた使徒様でもあらせられます」
「使徒……様?」
「あ、私は確かにあのカミサマから、この世界に落とされましたが、使徒というのは少し違うような。
確かに、仕事、この場合使命と言いますか皆様に合わせますと神命とでも言いますが、そんなことを命じられもしましたけど、たいそうなものではありません。
守とお呼びください」
「え?
使徒様に向かって……そんな。
使徒様。
それよりもこれは……」
「ええ、街道に巡回している一団がありましたので、面倒になる前に空から迎えに来ました。
これも……カミサマからいただいたようなものですので、一応安心してお乗りください」
「一応……?」
俺の正直な気持ちが言葉の端に出てしまったようで、かえって不安を与えたようだ。
慌てて、ごまかすように説明しながら一緒に中に入っていく。
「あの、空から声をかけた物は、同じようにカミサマからいただいたものです。
これはそれを大きくしたようなもので、人が乗れるようになっておりますので、カミサマに見守られるとでも思って安心してください」
「神様……」
俺がやたらにカミサマを連発するので、不安に思うどころか悪徳宗教にどっぷりはまった信者のような眼を俺に向けてきた。
この世界では本当に神様に出会う人もいるようなので、そういう意味ではかなり信心深いようだが、それにしてもかなりピュアな感性のお持ちのようだ。
人の好い日本からこの世界に来た俺だが、さすがに日本でもこんなピュアな感性を持つ人は少ない。
悪いやつにでも、だまされないかとかえって俺の方が不安になってきた。
まあ、俺の領地では、下手な宗教の布教は許さないから、大丈夫だとは思うが。
どうにか一行をドローンもどきに乗せ、シートに座らせてシートベルトを着けてもらった。
実はこれも結構大変だった。
何せソフィアも初めて乗せたので、要領がつかめていなく、興奮しているのかはしゃいでいたようで、それを落ち着かせながらだったので手間が余計にかかった。
そういえば今回乗せている全員がこれに乗るには初めてだった。
連れてきた騎士も、攻撃用のヘリには乗せたことはあるけど、これには乗せていなかった。
人選を誤ったか。
まあ、街道からはかなり離れているし、それにあの一団は、この村どころか最初に訪れた村にもまだ到着していないはずなので、時間的な猶予は十分にある。
一行を乗せ、あっという間、15分はかかっていないくらいで、巡視船に到着した。




