第124話 聖女は何処?
フランの方は、俺の予想どおり、夕方に港に入ることはできたようなのだが、上陸は許されず、翌朝地元政府の役人と会うことができたようだ。
大した内容が話し合われるわけもなく、昼過ぎには実兄と会うことができたようなのだが、実兄宅に色々と面倒な来客などがあり、明日も離れることは叶いそうにないと夕方連絡があった。
「フランに負担がかかるようなら、無視して帰ってもいいけど」
「いえ、大丈夫です。
私も王族でしたし、問題はありません。
それよりも余計なお土産を貰わないようにするほうが大変ですかね」
「お土産??
ひょっとして奪還への協力とかか?」
「ええ、ですがそれは当初の方針通り一切引き受けませんのでご安心ください」
「ああ、そっちの方は俺には何もできないので、任せるしかないが、無理だけはする必要はないぞ」
「ありがとうございます」
無線で上陸しているフランと交信していたが、一応のところ想定通りらしい。
もともとフランはすぐに帰れるとは考えていなかったようだ。
俺にはわからないけど貴族というのは、こういう場合にはどうしても外交というか政治が始まるらしく、純粋に友好というのはまず期待できないらしい。
まったくないとは言わないけど、結婚後の自宅ですら多少の貴族的儀礼が必要ので、『さもあらん』て感じだ。
俺は仲間たちに守られているので、そういう面倒な政治からは解放されているので、俺のできる範囲で、できることを全力でしていく。
ということで、明日も俺達はこのあたりに待機になるので、今日同様に調査でもしていく
お陰様とでもいうのか、割と順調に海図の方もできつつある。
俺達には必要なものだが、この海図って売れるのではとすら考えてしまう。
まあ、無理して商材を考えなくともカーフェリーのワインだけでも十分な稼ぎになりそうだし、実際、獣人国との取引も始まっている。
また、その際かなりの稼ぎになっていると聞いている。
流石にこことは貿易するにしても遠すぎるので、無理して貿易するまでもないが、聖女だけは探さないといけない約束もあるし、それだけは必ず行う。
ここにフランが来てから3日目に情報があった。
聖女だが、どうもここにはいないようで、あくまで噂の範囲なのだが、フランの祖国、そう占領されているあの場所に未だいるらしい。
おかしな話で、教国は、もともとその聖女を無き者にするために今回の戦争を起こしたと聞いていたが、占領したにも拘わらず、聖女を見つけていない。
もし、見つけて処置していれば俺達が掴んだ情報からして矛盾が出る。
ここはもう一度フランの祖国を調査する必要が出てきたようだ。
フランも、面倒な貴族政治を切り上げて、さっさと戻ることにしたらしい。
俺が沖合でフランを乗せた帆船を待ってから、帰ることにした。
沖合で、フランを乗せた帆船と合流したのは翌日の昼過ぎだ。
ちょうど潮の関係が悪く、下げ潮が割と遅かったためで、こういう時に動力のない帆船の面倒具合が気になってくる。
我々の一の浜だろうが二の浜だろうが同じだが、面倒なときには出港時くらい巡視船を使えるし、試したことはないが、ゴムボートの動力だけでも出港はできそうだ。
そう、上げ潮だって出港できる。
まあ、愚痴を言っても仕方がないが、合流後にそのゴムボートを使い、俺は帆船に移る。
その間ケリーたちが曳航索を繋げてくれるらしい。
うん、彼女らも十分に育ってきたな。
はじめは陸上戦力だと言って、船の扱いに慣れていなかったので、大変だったが、最初に彼女らを助けたゴムボートの習熟をさせたことが幸いした。
慣れていなかったとはいえ、自分らの窮地を救ったボートなのだから、自分らでも使えないとこの先同胞を窮地から救えないのではという気持ちがあったのだろう。
いきなり海上での訓練だったが、皆は臆せずに訓練に臨んでくれ、すぐに使いこなすまでになった。
そうなると巡視船の扱いにも興味が出たのか俺の説明も真剣に聞いてくれ、今では大切なクルーとして働いてくれている。
本当は、まだ操船のための人員数が足りないが、補充するにしてもなかなか適性を持つ者が見つからない。
ケリーたち騎士たちは、先に必要があったのか自身らの経験があったので、適性どころか気力でどうにかした感じだが、他は無理だろう。
まあ、今では任せることはすべてケリーたちに任せて俺はできることをしていくだけだ。
「守様。報告がありますが、よろしいでしょうか」
俺が帆船に移りフランと対面するとフランから報告したいと言ってきた。
すると帆船の船長が、甲板上でするような話ではないとかで、そのまま船長室に連れて行かれた。
みんなが船長室に入ると、改めてフランから報告があった。
「あそことは情報のやり取りだけで、貿易など一切行わないことで話がつきました」
「え? それって外交決裂なのか」
「そうとも言えますが、一応距離もありますし、訪ねてくる分にはいつでも受け入れると。ですので、相互で訪問時には気持ちよく受け入れるということで話をつけてきております」
「まあ、もともと貿易などするつもりもなかったし、それでいいのでは」
「で、肝心の聖女様の行方ですが、やはりあそこにはいそうにありませんね。
もし聖女様がいれば、小さな町ですしすぐに噂くらいは拾えるはずですが、これも兄の商会にも協力を依頼して調べてもらいましたが、そちらからも噂すら拾えませんでした」




