第121話 街の様子と今後の方針
「ケリー。
これってどういうことだと思う?」
「守様。
これだけではわかりませんが……この話からだと、教国が統治に失敗したとしか……」
「統治に失敗か……前に侍祭から聞いた話だと、もともと教国の目的は聖女の確保だっただろう。
果たしてはじめから統治するつもりがあったのかな」
「確かに、そうですね……」
「でも、いいか。
きちんと調査は必要だろうが、今はできないので、俺達は一旦引き上げよう」
「ハイ、わかりました。
で、このあとは?」
「フランたちと合流して植民都市まで向かおう」
前に、フランの兄がうちの領地に来たときに話していたことなのだが、まさに統治に失敗したことにでもなるのだろうか。
そもそも教国は占領を初めから目的とはしておらず、聖女探しが目的で、その目的が果たされたのか、統治そのものを諦めているようにすら感じる。
それに、後ろに見える黒幕的な帝国の思惑もよくわからないけど、帝国もフランの祖国の占領が目的ではなく、国力を落とせればよいくらいに考えていたのか、その程度の思惑だったのに、たくさんの不幸が重なり簡単に落とされて……おおかたそんな感じだろうか。
まあ、どちらにしても一度きちんと捜査をする必要があるのだろうが、それはあくまでフランの祖国の人たちの仕事だ。
俺等がとやかく言う必要はないのだろうが、人質の踏み込み捜査は俺の仕事のようなので、フランの兄との協力は必須だろうな。
俺はドローンを回収したら、すぐにこの海域から巡視艇を沖に向け走らせた。
「ケリー、先行しているはずのフランたちを追いかけよう」
「はい、まだ無線では連絡が……」
「ケリー様。
直接は無理ですが、島にある無線基地を通して連絡は取れているようです。
先程、こちらでの様子を基地に連絡した際に、フラン様たちは順調に航海を進めているとの報告があったと、教えてもらいましたから」
「計画通りだな。
これなら、俺達の活動範囲も広げられそうだ。
他になにか言ってなかったのか?」
「ハイ、フラン様から具体的にこのような感じで『船足が遅い』とこぼされたとも」
どうもフランですら、この船の速度が擦り込まれたのか、帆船の速度が遅く感じているようだ。
俺からしたら、全身に風を感じながらの操船では、体感では帆船も遅くは感じないのだが、多分、風が弱かったのだろう。
無風なら、帆船はどうしようもないはずだし、それならすぐに追いつけそうかな。
「フランたちと合流したら、近くまでは曳航していくことになりそうだな」
「ええ、この船の速度に慣れてしまいますとどうしても……。
それがよろしいでしょうね」
さあて、さあフランたちを探して回るか。
「ケリー、また、この船の操船を任せるよ」
「守様は?」
「ああ、今までと同じように空からフランたちを探してまわろうかと」
「では、誰か手伝いをつけますね」
フランたちの祖国から離れ、そんな会話をした後に、また、ヘリを飛ばして回ることにした。
この船の操船はすっかりケリーに任せても心配ないし、それなら俺ができることをしようと……そんな気持ちはたしかにあるけど、正直言うと暇なんだよな。
それに、俺は今まで公務員時代や傭兵時代を通して海上だけをうろちょろしていたけど、今ではヘリを操縦できるので、正直楽しい。
それに、この世界での生活にも慣れてきたこともある。
あのカミサマから落とされたときには一人で何をすればよいかすらわからずにいたけど、一応カミサマからの最初のクエストでもある大型船を見つけて手に入れたことだし、すぐに何かをしないといけないこともない。
まあ、前に送られてきた勇者のためにとカミサマが用意した豪華客船を探すと言ったミッションもあるにはあるけど、これも、できたら使ってもいいよっていう感じだったし、俺へのクエストもミッションも今のところなかったはずだ。
文化がどうとかとか言われているけど、そんなの知るかって……とはいかないだろうが、それも、フランたちから望まれたプレアデスの姫探しと建国だったっけか、それをしていくうちに俺の常識などが伝播していくから、いずれ達成するはずだ。
もう、カミサマからの邪魔は入らないだろうから、俺は今の生活を楽しむことにしている。
仕事にかこつけた空の旅も乙なものだという感じで、最近はちょくちょくヘリを飛ばしている。
フランも、祖国がどうとかという気持ちもあまり強くはなさそうだが、フランの兄のこともあるので、情報の伝達くらいは協力させてもらうか。
俺は、フランたちを乗せた帆船を探すついでに、付近の海域の様子を探りながらヘリを飛ばしていった。
フランたちを乗せた帆船は俺達の領地を置く島を挟んで占領されたフランたちの祖国とは反対方向に近い方向に向け船を走らせているはずなので、とりあえずは俺達の島が見えるまでは見つけられないだろうが、島の周りも詳しく調べていなかったこともあり、周りの様子を探っている。
「守様、あちらに……」
レーダー上に影を捉えた方向を見ると大きな島が見えてきたが、あれは獣人国の島のようだ。
「あれは獣人国でしょうか」
「ああ、そのようだな。
なのでもうじき我らの島が見えるはずだが……あれかもしれないな」
本当にかすかに見える遠くに島影を捉えたところでそろそろ行動範囲の限界が来ているようだ。
このまま、俺らの領地に向けてヘリを飛ばしても一の浜に止めてあるフェリーまで行けそうだが、無理する必要などないので、素直に巡視艇のいる方向へ進路を変更して、巡視艇に帰っていった。




