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機神冒険活劇カリュプス プロヴォカーレ ー未開の地を解き明かさんとする開拓者達の物語ー  作者: 九傷
第二章 巨獣たちの楽園

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第72話 シャルの推理⑦



「【土蜘蛛】についてはあとでまた触れるから一旦置いておくとして、ミカド・トウセンはその代替機として支給されたか、あるいは支援金で購入したか――どちらかはわからないけど、【フォティア】壱式に搭乗していたみたい」


「っ!? 【フォティア】の、壱式だと?」



 帝国産のデウスマキナである【フォティア】シリーズは、世界中で広く愛用されている人気の機種(モデル)である。

 人気の理由は性能面で優れていることに加え、パーツの自由度が高いためカスタム用としても利用されているからだ。

 亡命してから知ったことだが、俺の親父も【フォティア】参式をベースに改造した【フローガ】というデウスマキナに搭乗していたらしい。


 しかし、【フォティア】壱式はそのナンバリングが示す通りシリーズにおける初代であり、人造のデウスマキナの中ではかなり昔に製造された機体である。

 正確な年代はわからないが、親父の世代で参式は既に型落ちだったようだし、その2代前ともなると50年くらい前になるのか?

 そこまで古いと骨董品――とまでは言わないが、車で言えば間違いなく旧車扱いとなるだろう。

 別に個人の趣味で乗るのであれば何も問題はないのだが、最新のデウスマキナと比較すると性能面で圧倒的に劣るため、はっきり言って現役の開拓者が乗るような代物ではない。



「マリウスと違ってスミヤさん達はピンとこないかもしれないけど、【フォティア】壱式っていうのはかなり世代の古いデウスマキナの機種なの。シリーズのナンバリングで言うと最新が(ろく)式で、そろそろ(しち)式が出るって噂だから5世代以上前になるわね」


「かなり年季の入ったデウスマキナだとは思いましたが、そんなに……」



 今どき世代などはネットで調べればすぐわかるものだが、人は基本的に自分の興味のないものや苦手意識のあるものは遠ざける傾向にあるため、わざわざ調べようなどとは思わないものである。

 特に高齢になると調べるという行為自体に忌避感を覚えるようになるため、スミヤが知らないのも不思議なことではない。



「古いっていうことは、それ相応に性能も低いってことよ。いくら安かろうとも、まともな神経をしてたら自分の命に関わる商売道具を値段で選ぶなんてことはしないわ。余程の無能でもない限り他にできる仕事なんていくらでもあるだろうし、普通はお金を稼いでからもっと性能のいい――って何? 蚊でもいた?」


「……なんでもない」



 言葉の刃がブッ刺さって、思わず胸を押さえただけである。



「ふ~ん? じゃあ続けるけど、もっと安定した仕事なんていくらでもあったハズなのにわざわざ開拓者になるなんて、さぞ強い思い入れがあったに違いない――と思いきや、ミカド・トウセンは一度開拓者をやめている。少し違和感があると思わない?」


「……本当にどうしようもなくなったから、とかではないのか?」


「生活費的な意味でどうしようもないのは最初からでしょ? 国から支援金なんかはあったかもしれないけど、そんな大金が支給されるとは思えないし、開拓者なんてやってたらそんなのすぐに底を尽きる。なのにミカド・トウセンは、少なくとも1年は開拓者として活動できていたワケでしょ? まず間違いなく、他に生活費や活動費を稼ぐ手段があったハズよ」


「つまり、ミカド・トウセンは何か別の仕事と開拓者を兼業していた――ということか」


「私の予想は少し違うけど、何にせよ複合的な生活手段があったってことね。で、人っていうのは特に執着がなければ複数の手段のうちどれか一つが安定したら、それ一本に絞り込むものでしょ?」



 言われてみれば、確かにその通りだ。

 クリエーターやスポーツ選手、アイドルなどの芸能関係で食っていける人間は、業界全体で見てもほんの一握りである。

 だからバイトなり副業なりと兼業で働きつつ、将来的にそれだけで食っていくことを目指すものだが、大抵の場合は見切るなり挫折するなりして別の道に進むものだ。

 副業の方が稼げるようになって、本業と副業が逆転するなんてことも別に珍しいことではない。

 価値観は人それぞれだが、大人になればなるほど考え方が現実的になっていくものだし、より安定した生活を求めて取捨選択するのは賢い生き方だと言えるだろう。



「……なるほどな。しかし、それなら最初から開拓者なんて(・・・)やらなければ――」


「そう言いたくなる気持ちも理解できるわ。私だって生半可な気持ちで開拓者やってるワケじゃないし、皮肉の一つも言いたくはなるもの」


「……」



 どうやらシャルも、ミカド・トウセンの行動に少しモヤモヤした気持ちになっていたのかもしれない。

 どの業界でも、本気で挑んだり楽しんでいる側からすると、軽い気持ちで始めたり辞めたりする人間を疎ましく感じるものだ。

 もちろんそれは自分を中心とした身勝手な感情ではあるのだが、本気だからこそそういった感情を抑えるのは難しく――つい嫌味のようなことを言ってしまった。

 ……俺もまだまだガキだな。


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