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機神冒険活劇カリュプス プロヴォカーレ ー未開の地を解き明かさんとする開拓者達の物語ー  作者: 九傷
第二章 巨獣たちの楽園

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第73話 シャルの推理⑧



「恐らく開拓者活動に大した思い入れがなかったであろうミカド・トウセンが、何故わざわざ開拓者になることを選んだのか? 少し考えれば理由はいくつか浮かんでくるハズよ。まあ、これについては当時のミカド・トウセンを知っているであろうスミヤさんに聞くのが一番手っ取り早いんだけど、マリウスも試しに一つくらい予想してみない?」


「……」



 俺は別に謎解きの趣味はないし、さっさと答え合わせを進めてもらっていいのだが、わざわざ話を振ってきたことから察するにシャルは俺に花でも持たせるくらいの気持ちなのかもしれない。

 ……ただ、ここで俺が何も答えられなかったり見当違いなことを言えば恥をさらすだけなので、正直かなり大きなお世話である。

 恐らくシャルに悪気はないだろうし、むしろ信頼の表れなのかもしれないが――やれやれだな。



 俺はシャルほど頭の回転が速くないため、一旦頭の中で情報を整理しよう。


 ミカド・トウセンはこのメリダ王国に亡命し、開拓者として活動を開始した。

 亡命が成立した際に国家間でなんらかの制約や契約が結ばれたハズだが、開拓者として活動を許されていたのであれば行動に大きな制限はなかったと思われる。

 これは国際法で亡命者の扱いについてルールが制定されていることに加え、メリダ王国が自衛以外の戦力を持たない中立国であることも関係しているだろう。

 もしミカド・トウセンの亡命先が帝国であったら、国の監視下――長期間監視や護衛を付けるのは不可能なので、隔離か軟禁くらいは確実にされていたハズだ。


 俺やミカド・トウセンのような軍人や諜報機関の人間は国家という大きな単位では重要視されないが、軍事的視点で見れば大した肩書のない者でもそこそこ利用価値がある。

 兵器や技術、組織などの情報は軍事面で見ればかなり有用だし、それゆえに取引材料にもなりやすい。

 しかし、逆に中立国にとってはそれこそが面倒な要素になり得るのである。

 ……中立国は基本的に、他国を刺激するような真似ができないからだ。


 実際に中立国の存在を認め、他国の脅威から守っているのは条約や国際法だが、それには前提として敵対意思や他国に対する脅威がないことを示す必要がある。

 だから多くの中立国は自衛以外の戦力を持たないのだが、軍や諜報機関の亡命者を隔離などすればあらぬ誤解や刺激を与えかねないし、最悪の場合戦争の火種になる可能性すらある。

 中立国は戦争を全くしない国という意味ではなく、あくまでも中立であり他国が戦争していても公平な立場をとる国という意味なので、その中立が崩れるような行為をする――したと見なされるワケにはいかないのだ。


 しかし、だからと言って俺達のような存在を自由に行動させるワケにもいかないため、国家間での取り決めや制約事項の調整は絶対に必要となる。

 自分で言うのもなんだが、同じく中立国であるキャトルセゾン公国にとって、元帝国軍人である俺はさぞかし面倒極まりない厄介な存在だっただろう。

 正直手に余るし、いっそどこかで野垂れ死んでくれた方がマシ――とすら思われていた可能性もある。

 そう考えると、あんな辺鄙な地域に俺の住居が用意されたのも、そういうこと(・・・・・・)なのかもしれない……



「もしやミカド・トウセン()、他の仕事で安定した生活が送れなかった――のか?」


「恐らくね。まあマリウスとは状況も条件も違うし想像しかできないけど、確実にわかることが一つある。ミカド・トウセンには、大きな壁があったのよ。……言葉の壁っていう、ね」


「っ!?」



 そういう、ことか……

 俺は今まで外国で言葉が通じなかった経験がなかったから、完全に失念していた。


 龍の国は鎖国していた影響から、世界中で使われている共通言語が浸透していない数少ない国でもある。

 その出身であるミカド・トウセンは当然共通言語を使用していなかっただろうし、恐らく学ぶすべもなかっただろう。

 流石に動物と対話するようなレベルではないだろうが、メリダ王国で生活するのはさぞ厳しかったに違いない。



「私達はあまり感じたことないけど、言葉の壁というものは想像すれば想像するほど高く分厚いものよ。しかも当時は教本なんてないだろうし、教えることができる人間もいなかったんじゃないかしら?」



 確かに、今でこそ龍の国の言語を学べる教本やその逆も存在するが、鎖国していた当時にそんな物が存在していたとは思えない。

 外交官のような存在であれば片言くらいは話せた可能性はあるが、それだって人に教えられるようなレベルではなかっただろう。

 となると必然的に独学で学ぶことになるワケだが――、未知の言語を教本もなしに独学で覚えることなどできるのだろうか?



「もちろん身振り手振りである程度のコミュニケーションは取れるだろうけど、細かい仕事を覚えるのは難しいでしょうね。まあ、そもそも言葉もわからない余所者とコミュニケーションを取ってくれるお優しい人間がいるとは思えないけど」




 ……正直、俺よりはマシな環境だったろうと軽く考えていたんだんが、少し申し訳ない気持ちになってくる。




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