第29話 籠の中のアリスと不気味な猫
《不思議鏡国 鳥の籠》
「………………」
『アヒヒヒ! 無言が一番つまらないよ。何か喋れよ。アリスちゃ……あ~ん? なんだい? あそ? 何で女王の城が燃えているんだい?』
「………え?」
◇
《乙女達は男装乙女に恋をします》の特殊クエスト『鏡の中へご招待』。
この特殊クエストのクリア条件は不思議鏡国の中にある泥沼の森、血染めのお茶会、絵画の鍵穴、白い城、猫籠の囚われ、の5つの場所に隠されている、合計5つの神器を見つけ手に入れる事なんだ。
そうすればこの世界へと無理矢理迷い込まされた主人公は外の世界へと戻れるんだ。
それがまさかあっちから来てくれたり。お祭り騒ぎで自分達から見つけ安くしてくれているなんて親切だよね。
これまで手に入れた神器は『邪竜刀戲』『赤薔薇衣装』『絵鍵の番人』。
僕達は残りの2つの神器を求めて不思議鏡国の世界を移動中なんだ。
《炎上中の白い城》
「いや~! ライチ師匠がどんな鍵穴もこじ開けられる神器『絵鍵の番人』を持っていてくれて助かりました。これがないと不思議鏡国内を自由に移動できませんからね」
「うぅぅ……殺してくれっす……もう安らかに殺してくれっす……」
アレクシアとレイラちゃんにコテンパンにやられたライチ師匠は『誓書』の中に鎖でグルグル巻きにして閉じ込めてあるよ。
自由にさせとくと何をするか分からないからね。
「神器発動『絵鍵の番人』。絵鍵番君。また出番だよ。」
ズズズ……
「へ、へい……シンの旦那………こりゃあ。とんでもねえ。光景だぜぇ……これはよおぅ」
『キュラララ~!』
「凄いのレッド君。お城が燃えちゃってるのよ」
「シン様と夏にやった花火と言うものを思い出しますね。アレクシア様」
僕達は残り2つの神器を見つける為に白い城って場所に来たんだ。
だけど着いた瞬間大勢のトランプの絵柄が書かれた兵隊さん達に襲われそうになったから。
レッド君の火の玉攻撃で皆焼いてあげたんだ。戦いの相性って残酷だよね。皆消し炭になってどっかにいっちゃったんだ。悲しいね。
「シ、シンの旦那さんよう。これ以上は幾らなんでもやり過ぎだぜ。こんな残虐な行為をあんな小させえ子供達に見せるもんじゃないぜ」
絵鍵番君が可笑しな事を言っているね? どうしたのかな? 壊れちゃったのかな? 名前がチャッキーだけに。
「何を言っているんですか? 絵鍵番君。これは全て夢なんですよ? アレクシア達にも。そうお伝えしてあります」
そう。これは一夜の儚い夢なんだ。
「は? し、シンの旦那さん。何言ってんだ? ここは不思議鏡国。あの方が治める。俺達の世界なんだぜ」
絵鍵番君。本当に壊れちゃったみたいだね。流石夢の世界の住人だ。
夢から覚めた後は僕の最大火力魔法で粒子レベルで破壊して、全てがまっさらな状態の新生 絵鍵番君に強制的に生まれ変わらせてあげるからね。
「いいえ。これは悪夢ですよ。絵鍵番君。レッド君の火球であっちこっちの不思議鏡国が燃え広がり始めたり。その炎で色々な人達が真っ黒焦げになるのは夢のせいです」
「ふ、ふざけんなよっ! ここは俺達の故郷、不思議鏡国だっ! いきなりやって来た奴等に好き勝手に蹂躙されてたまるか…ごがぁ?!」
「君達が始めた物語ですよね?……何も知らない僕達を無理矢理連れてきて襲おうとした。君達の……」
僕はどこかのイエーガーみたいに言ってやったよ。絵鍵番君に厳しい事実を彼に進撃しながら告げて上げた。これはこの子達が始めた事だってね。
あれ? 今の僕、本物の悪役見たいに見えないかい? どうしよう、恥ずかしいや。
「ぐぎぃ?!……や、止めてくれよ。俺達はただあのお方に言われてシンの旦那さん達を狩ろうとしてただけなんだ」
「その割には楽しそうにしてましたよね。〖闇手刀〗」
スパンッ!!
「ギャアァァ!! 俺の自慢の鍵が粉々に……」
「あんまり騒がないで下さい。アレクシアやレイラちゃんに聞こえたら。悪影響なんで……喧嘩を売る相手を見誤りましたね。僕達は案外強いんですよ。〖闇渦〗」
「ごぁ?!………身体が沈んで潰れる。」
グシャッ!
絵鍵番君は最後にそう告げると。クリスタル色の鍵へと変化して喋らなくなったよ。
やっぱり1度は悪性の人格を消滅させないと駄目みたいだね。呼び出した瞬間。アレクシアやレイラちゃんに向けての敵が尋常じゃなかったから。容赦なくヤっちゃったよ。
そして、この鍵《チャッキー君》を使えば炎上中の白い城からあのおじいちゃんを救い出せるんだ。
「シンく~ん! 変な扉があるのよ~!」
「シン様ー! ここ怪しいです」
『キュララル~!』
おっ! アレクシア達に探す様にお願いしていた扉が見つかった様だね。
◇
《白い城の地下牢》
僕達一行は今、白銀の大きな扉に立っている。
「ここに大切な人が閉じ込められてるの? シン君」
「キラキラした場所ですね。それになんだか不思議な場所です」
「でしょうね。何せここはこの特殊クエストをクリアする為に必要な人物を閉じ込めておく場所ですから」
僕は『絵鍵の番人』を使って白銀の扉の鍵を開けた。アリス魔法学園に入学する前から探そうと考えたいたこの鍵でね。
ゲーム本編でもクエスト中盤に『絵鍵の番人』を見つけて手に入れないと詰むルートがあるんだけど。それがさっきのブーちゃん《ジャバウォック》戦だったんだけど。
まぁ、お兄様の方から来てくれて、わざわざヤられてくれたからその問題はもう解決したけどね。
ガコンッ……ギイィ!
「……子供……誰じゃ? お主等………こんな危ない場所に来て………殺されるぞ」
扉を開けると白銀の鎧に身を包んだご老人が疲れ果てた姿で、古びた椅子に座っていたんだ。
「白騎士のキャロルさんですね。助けに来ました……いえ。助けて下さい僕達を。そして、助けに行きましょう。捕らえられている貴方の娘さんを」
「ワシの娘?……何を言っておる。娘は当に化物と化して外の世界で暴れて…」
「いいえ。貴方の娘さんは不気味な猫によってすりり替えられていたんです。今は鳥の籠の中に閉じ込められているんです」
「…………何じゃと?」
その老人の精気の無い顔に怒りの炎が宿る。
「そもそも、この世界の王は貴方でした。貴方が愛した娘さんの為に娘さんの理想の世界を創った。娘さんが幸せになってほしいと思いで紡いだ世界ですよね?」
「…………そうじゃあ……ワシは……いや。私はアリスの為にこの不思議の世界を紡ぎ物語として……小説として作り上げた」
「それを奪われたままで良いんですか? ルイスさん」
《乙女達は男装乙女に恋をします》の裏面のシナリオはどれもダークファンタジー的な部分があるんだ。
登場人物の殆どが荒んでいたり、暗い過去を持っている。そんな彼等に救いの手を伸ばすのが主人公。
本編をクリアして世界最強クラスに成長した彼女がこの世界に招かれて。
荒んだ人達は駆逐して。不幸になった人達を救い出し説得させて────
「良いわけあるか……私は全てを取り戻す。」
────覚醒させる。
「じゃあ。貴方の軍勢でこの世界を取り戻しましょう。偽者のアリスさんから……本物の貴方の娘。アリスを」
「………お前達の望みはなんだ?」
「この世界から無事に脱出する事です」
「その願い引き受けた……来たれ来たれ我が悪たる軍勢よ。我が世界に蔓延る害魔を処刑せよ。我が世界に燻る悪を粉砕せよ………来たれ。我が創作の軍勢『白銀悪軍勢』」
【【【オオォオォオ!!! 想像主の身心のままにっ!】】】
白い城の地中から銀色の鎧を着た死霊が出てくるね。ホラーだね。ファンタジーだね。
ゲーム本編をクリアした最強クラスになったアレクシアでも、大量に優秀な部下を持つアリス《特殊モンスター》には普通じゃ勝てないんだ。
え? どうすれば勝てる勝って? そりゃあ。この小さな異世界を最初に造り上げた人を叩き起こして。このねじ曲げられて狂った不思議鏡国の物語を修正してもらえば良いんだよ。
アレクシアは助かるけれど救いの無い最後を迎えるこの世界に革命を起きさせるんだ。
【悪騎士ロランがここに。《泥沼の森》へと進軍致す】
【死霊長ギルフォード。《血染めのお茶会》の奴等を滅する】
【魔法貴シルフィエット。《絵画の鍵穴》へと歩まん】
「行動を許す。行け。我が配下達。そして、奴等を殲滅せよ」
【【【はっ!】】】
「そして、私は《猫籠の囚》へと万の軍勢を引き連れて向かうとしよう。進軍せよっ!」
「「「オオォオォオ!!」」」
「ウオォオ!」
白の騎士キャロルさんの影から青白い馬と羊の頭を持つモンスターが現れたよ。それに白色の犬。姿がまるで悪魔のコスプレみたいな人達もわんさかわんさか集まって来て。皆やる気に満ち溢れているね。顔は不健康そのものだけどさ。
そして、僕はこのどさくさに紛れて白い城のお宝である『老騎士の盾』を頂いたよ。ヤったね。
この特殊クエストの元になった《アリスの物語》に出てくる白い騎士キャロルの元はたしか………騎士と死と悪魔とか言う物語だったけ?
それがこんな風に具現化するとおぞましい集団になるなんて凄いよね。
「凄い光景ですね。アレクシア、レイラちゃん」
『キュラ!』
「スゥースゥー……シン君。しゅき……」
「ゴガァァ!!」
「へ? お眠で寝ちゃったて?……うるさい寝息を立ててるのはレイラちゃんかい?……まぁ、もう深夜だし良い子は寝る時間だもんね。なら僕はあれを回収したらあの場所に直行しようかな」
◇
《猫籠の囚
『オホホ……何でチミが解放されてるんだい? キャロル』
「黙れ。チーシャ……この裏切り者が。」
「お父様ー! ご無事で良かったっ!」
「……アリス。死ねっ! 貴様ぁぁ!!」
ドスッ!
『オホホ……白銀は魔を祓うかい……』
おぉ、《乙女達は男装乙女に恋をします》のゲームで起きた名場面が今目の前で繰り広げられているなんて胸熱だね。
『キュラララ?!』
「あー、うん。そうだね。神器『猫籠の輪舞曲』を回収したら。さっさと元の世界に戻ろうか」
「突然現れた小僧っ! 受け取れ貴様の報酬だっ! また会おう。今度はゆっくりとな」
「ありがとう~! マーリン様のお孫様~!」
ん~? 白の騎士キャロルさんが僕目掛けて何か投げて来たね。
「よっとっ! これは『猫籠の輪舞曲』。ラッキー探す手間が省けたよ。白の城じゃあ『老騎士の盾』も手に入れたし。これで全部揃ったねそれじゃあ。転移魔法〖門〗」
『キュラルルラ~!』
『猫籠の輪舞曲』を受け取った僕は転移魔法の〖門〗を使って元の世界のある場所へと転移したんだ。
◇
《アリス魔法学園 体育館》
「………随分とあちらは騒がしい。今日はご馳走が食べられるから早く鏡の中に戻りたいのに。ヨルンがなかなか放してくれなかったわね。あら。いけない。ご馳走が食べらると思ったら口が裂けてきたわ。フフフ」
その少女は身体中に口が幾つも幾つも幾つももあった。
「とくにあの今年入った新入生の首席の女の子。可愛いらしくて逞しい身体をしていたから。骨も残さず全部頂こうかしら」
手足は不揃いに伸び。歪な背格好に変化していた。
「いひぃ。あの次席の女の子は頭からかぶりついて皮膚を生きたままゆっくりと剥がしていってあげましょう。それであちらの誰かにその皮を被せて。新入生達の人間関係をメチャクチャにしてあげるの。フフフ」
悪意ある性格で不気味に微笑む。
「いやいや、させませんよ。そんな事。アレクシアとレイラちゃんには結ばれてもらわないと困りますからね。僕のバットエンド回避の為にもね。偽者のアリス生徒会長」
「………この声は? あら? 何故、新入生がこんな場所に居るのかしら?」
「特殊ギミックモンスターの貴女を討伐して。この歪んだアリス魔法学園を救いに来ました。悪役令息であるシン・セイフライド。この僕がね」
「…………あら、なら粛清するわ。アリス魔法学園の生徒会長アリスとして。貴女をね」
こうして僕《悪役令息》と化物に闘いは始まりを告げた。




