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第30話 夜のアリス魔法学園には怪物が出るよ

《乙女達は男装乙女に恋をします》の隠しシナリオで出てくる特殊ギミックモンスター《夜のアリス》。


 そのモンスターの特徴はとにかく狡猾で残虐性の持ち主ということ。


 アリス魔法学園の創設メンバーの1人白騎士キャロルが自身の愛娘まなむすめが自由に冒険ができる不思議鏡国ミラーワールドを乗っ取り。夜のアリス魔法学園を裏で牛耳っていた隠しボス。


 主人公アレクシアがリゲイン王家の系譜けいふに連なるシュリディンス家の為。エロゲー本編には一切手を出さず。アレクシアが卒業するまでは生徒会長として振る舞っていたモンスター《夜のアリス》。


 ゲーム内だとアリス魔法学園起こる卒業後のとある事件を切っ掛けに暗躍している事がバレて。


 支配していた不思議鏡国ミラーワールドは崩壊。夜のアリス自体も最強主人公になったアレクシアが苦戦しながらも倒すんだけど………


「どう考えても入学《序盤》で闘っていい相手じゃないよ。エロゲーの神様。こんなの今のアレクシアが相手したら間違いなく。死んじゃうじゃないか」


「ウフフ……この姿を見られたら殺すしかなくなっちゃうじゃない……『凶器人形アリス・ドール』」


 パキッ………パキッ………バキッ………【クスクス……アハハ】【アハハハ……】【キハハハ!!】【キャハハハ!!】


 《夜のアリス》の身体がどんどん奇型へと変化していくね。大量の小さな人形へと。一体一体が小さな凶器を持っているよ。


 《夜のアリス》第一形態。『凶器少女アリス・ドール』数千体にも及ぶ《夜のアリス》に捕えられた子供達の成れの果て。


「フフフ……随分と余裕なのね。今から私のお人形さん達に串刺しにされるのに。『殺戮人形スロータードール』」


「まだ闘いも始まってないのにいきなり本性表し過ぎだよ。神器発動『白銀姫の一刀』────『白千両断』………今、解放してあげますよ。先輩方」


 神器『白銀姫の一刀』の能力は主に3種あるんだ。白銀刀の分離、銀糸、反射。これ等の能力を上手く使う事で変幻自在な戦い方ができるんだ。


 そして、今、僕に向かって来る数千体の人形に対して『白銀姫の一刀』を分離させた数千の刃を人形達に向かって一斉に放った。


【アハハ!!】ドスッ!


【キャハハハ!】ドスッ!ドスッ!


【ギャハハハ!!】ドスッ!


 まるで飛蝗ばった蝗害こうがいだね。この世界のエルフ王族に代々伝わる。神器『白銀姫の一刀』は光属性を有した神器でね。


 特殊ギミックモンスター《夜のアリス》は闇属性のモンスターとは相性最悪なんだ。


「私の学生人形さん達にいくら攻撃したところで無駄よ。学生人形さん達のたましいは一生逃げられ………ない? 何? 私のお人形さん達の魂が消えていく?」


 《夜のアリス》が驚くのも無理はないよね。長年に渡って集めてきた良質な魂が解放されて行くんだからさ。


「ゲームを確実にクリアするならギミックは最初に潰しておくのがセオリーだよね。とくに君みたいな、ずる賢くて残忍な人にはさ。神器解放『白銀姫の一刀』───全反射フルカウンター


 

 『白銀姫の一刀』の刃を突き刺した全ての人形達に反射の能力を発動。そうすると事によって起こる現象は、人形達が放たれた最初の場所へと、人形達は元の場所《夜のアリス》へと回帰するんだ。


「………可笑しいとは思っていたのよ。《七神器》の1つをこんな子が持っているなんて」


「気が付くのが遅すぎるよ。アリスフィアの歪みの1つさん。『白銀加速しろがねかそく』闇魔法〖闇守球ダークボール〗」


 数千の人形と白刃が《夜のアリス》の全身に突き刺り、1本1本が別方向へと加速し回転する。


「くっ! 悪童っ! キャアアア!!」


 《夜のアリス》の奇形の身体は粉々に切り刻まれて肉塊に変身、大量の緑色の液体を体育館中に散布さんぷさせ。


 僕は周囲に防御魔法を展開して、その緑色の液体をかからない様に防いだよ。この緑色の気持ち悪い液体は身体に付着しただけで皮膚が溶ける猛毒だからね。


 戦いのギミックを理解していない状態の初見しょけんでこれを喰らっていたら。ここで間違いなく命は落としていただろうね。


「これにて、第一形態攻略完了だね。さぁ、次はどう対応しようかな」


 《夜のアリス》の肉塊の上から白い光が昇っていくね。もしかして、あれがこの世界アリスフィアの魂なのかな? だとしたら。今、彼等は《夜のアリス》の呪縛からようやく解放されて安らかに眠れるんだね。良かった………



【ウフフフ……ヨルンさんに監視させていた時は、〖シン・セイフライドは何も問題はありません〗とか言ってたのに。問題大有りじゃない。何故なぜ、無知で無力の死ぬ運命しかない貴方がこんな力と神器を持っているのかしら? セイフライド君】


 切り刻んだ筈の肉塊から《夜のアリス》の声が聴こえてくる。あれだけ攻撃したのに全然効いていないのか? どんな体力してるんだい。


こたえる義務なんてありませんね。アリス生徒会長。入学早々、新入生を洗脳する様な学生のリーダーなんかに」


【そう。なら洗脳して全部話してもらおうかしら……〖殺戮少女アリス・スローター〗】


ズズズ………


 肉塊から《夜のアリス》の本体《アリス生徒会長》が無傷で出てきたよ。右手には赤色ののこぎり、左手にはとても大きなはさみを持っていて。僕をやる気満々だね。


 あれだけ容赦なく攻撃したのにね。


「貴方は本物の化物ですね。アリス生徒会長」


【その言葉。そのままお返しするわ。新入生首席のシン・セイフライド君。これだけの力を持っていて貴方が今年の首席じゃないのは可笑しいもの。それだけの力。何で回りを畏怖いふさせる為に使わないの? 勿体ないわ】


「目立つのが嫌いなんですよ。断罪されたくありませんしね。それに貴女の様にイカれた方々に僕の力を利用されるのもひゃくですからね。天狼流〖天牙操糸てんがそうしん〗」

 

 僕は『白銀姫の一刀』の能力、銀糸に天狼流の技〖天牙〗の斬撃に銀糸を結び付けてそれを四方八方へと連続で放つ。


【アハッ! そんな普通の攻撃じゃあ私にまともなダメージは通せないわ。『趣味処刑執行ホビー・エグゼキューション』………アハハハッ!!】


 《夜のアリス》の整った顔立ちの顔から顔の部位が現れたね。文字通り顔の至る所……いや、訂正するよ。身体中至る所から顔の部位。目、鼻、口、耳なんかか身体に生え始めたんだ。


 オマケに手足は小枝様に枝分かれしていくし、その姿は虫の蚰蜒げじげじと宇宙人をして2で割った様な姿だね。


 それにしても完全に化物の姿を隠す気も無くなったのか。さっきよりも言葉使いが荒くなってないかい? アリス生徒会長はさぁ。


 そんな姿で僕に襲いかかって来るなんてキモすぎるよ。まぁ、そんな襲いかかって来られても〖天牙操糸てんがそうしん」の斬撃の嵐で1歩も僕には近付けていないけどさ。

 

【私の世界。好き勝手に出入りもできる不思議鏡国ミラーワールドを先に潰して……】


 そりゃあ。潰しておかないと《夜のアリス》の無敵状態を解除できないからね。


【体育館での私の夜の食事を邪魔して正体まで見破るなんて……】


 それは僕の最推しの娘であるアレクシアと専属メイドのレイラちゃんを食べようとすれば。邪魔もするよね。


【攻撃したら。私が長年集めて来た学生達の魂を解放してしまうなんて。貴方本当に野蛮なのね。セイフライド家の悪童令息。どうやったら私の猛毒の血を見ただけて防げるのかしら? 是非とも教えてもらいたいわ】


 そりゃあ。生前に何度もゲームオーバーになったギミックボスモンスターなんだから。生前の記憶で《夜のアリス》がどれだけ危険なモンスターか理解しているさ。


「………何度も言いますけど。そんなの教えるわけないでしょうっ! 〖白銀糸刀シルバースレッド〗」


【………さっきからムカつくは貴方の態度。『手足少女アリス・リンク』】


【キャハハハ!】【アハハハ!】【イヒヒヒ!】


「これは?………不思議鏡国ミラーワールドに居た。アリス生徒会長の手下の人達の声?……良い趣味とは言えませんね。生徒会長。天狼流〖殲滅光糸せんめつこうし〗」


 銀糸は1本ではもろくて、直ぐに切れてしまう糸だけど。それが何万もの塊でどんな物でも切れるように成ればどうだろう?


 そんな糸があって自在に操れれば。敵対した相手は凄く困る事になっちゃうよね。


【【【………私の玩具おもちゃ達が糸でさいの目に切り刻まれていく。くっ! 話が違うじゃない全然。何が今年の新入生は弱いよ。馬鹿にしやがってっ!】】】


【ギャアアアアア………】【イヒヒヒ……】【イヤァアア!!】


「さっきと一緒ですよ。アリス生徒会長。貴女は僕に手も足も出せず……」


【【【うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。黙れ黙れ黙れ!!! たかだか神器1つしか操らない悪童一匹に、この《夜のアリス》が戦いで負けるわけないのよ。『不思議世界ワンダーテール』】】】


 戦いの舞台になっている体育館の中が闇に包まれ始めたよ。


 僕達の戦いの余波よはで体育館に設置されていた椅子は壁に吹き飛んだり。床や壁には無数の穴が開いているのにさ。これ以上壊したら魔法学園側に怒られちゃうよね。


【【【身の程を知りなさい。悪童っ!! 貴方の様な死ぬ運命の子供が、アリス魔法学園生徒会長に逆らって良いシナリオをなんて存在しないのよぉぉ!!】】】


 《夜のアリス》の手足が肥大化して巨大な1本の尻尾に変化したよ。それを僕へ向けて振り下ろされる。


「…………そんな理不尽なシナリオをぶち壊す為に力を付けたんですよ。主人公アレクシアがちゃんと誰かと結ばれて幸せに生きられるシナリオを見届ける為に。そして、僕はそれを見届ければ役目を終えて…………破滅の物語に救いを我は彼女を守る最上の剣と盾なり。爆ぜろ爆ぜろ対峙せし愚者に悪の鉄槌を………〖暗黒深淵渦ブラックホール〗」


 僕はてのひらから漆黒の光を放つ小さな球体を《夜のアリス》へと放ったよ。


 高速の詠唱波及えいしょうはきゅうだったけどどうにか上手くいったよ。この技は僕が使える魔法の中でもかなり危険な魔法なんだ。


 なんたって敵対対象を超重力の闇魔法で圧縮し。確実にこの世界から消滅させる技なんだからさ。


 そして、僕が放った技に《夜のアリス》の尻尾が触れた瞬間それは起きたよ。


【………何なの? その力は? そんな力。たかだか人族の子供が待てる筈がないわ。そんな私を凌駕りょうがする力、この学園で認められるわけないのよぉぉ!! 『絶望少女ディスペア・アリス』】


 8本の奇形の足を持つ生徒会長が自身の危険を察知して僕へと急接近してくる。


「無駄ですよ。判断が遅い………長年の学園生活でなまってたんじゃないですか? アリス生徒会長────『悪殲滅イーヴル・アナイアレイション』」


【ゴレハァ?! 呑み込まれている?! この私の身体が………ごんな……私はただいづもよ様に食事にぎだだけなのにぃ……ふざけなぃでぇぇ!!】


 アリスの身体が〖暗黒深淵渦ブラックホール〗の中へと消えていく。ゆっくりとゆっくりとそのグロテスクな身体が。


「その食事の対象にアレクシアとレイラちゃんを選んだのが間違いでしたね。彼女達は僕にとっての理想的なカップリング。そんな娘達が一生懸命添い遂げ様としているのを僕は絶対に邪魔させない。消えて下さいアリス生徒会長、この綺麗な世界から」


【ごんな……最後っ! 私は選ばれた存在っ! 私は七の………ぞ……ん……】


ズズズ………シュンッ……ゴドッ!


 アリスの身体が無くなり。床にはアリスが身に付けていたリボンが落ちた。


「最後に何か言いかけてたけど。終わったね……後は体育館を〖全快復オートヒール〗で治して、今夜は体育館からバ、バ、バ~イだ……」


ドスッ………スパンッ!


「……ね?……は?……僕の胸に剣が突き刺さって……え?」


ドサッ!


【アハッ……アハハハ!! 馬鹿な悪童。あのみにくい身体が私の本体なわけないでしょうっ! あんな身体はただのダミー、本体はこの美しい『肉塊の髪飾り』なのよ。シン・セイフライドっ!! アハハハ!!】


 アリスの鋭利えいりになった手足が僕の有りとあらゆる身体に突き刺った。そして勝者気取りの《夜のアリス》が高らかに笑い───


 パチパチパチパチ………とっ! 本体の僕は《夜のアリス》の笑い方を真似ながら拍手を送る。


「アハハハ!! そうだね。『誓書ホノリウス』で作った劣化コピーの僕に、ここまで手こずるなんて想定してなかったですよ。アリス生徒会長」


【ハハハ……ハァ?……貴方。何で私の場所に……壇上に座って居るの? 貴方は私の目の前に倒れて】


「だからそれは僕の偽物だって言ってるんですよ。僕の半分の力も与えていない劣化コピーだってね」


【……劣化コピー?】


 いつの間にか元のアリス生徒会長の姿に戻っていた。《夜のアリス》が驚いた顔をしているよ。


「あぁ、こちらの世界ではそんな言葉は無いんでしたっけ?……まぁ、いいや。これで本当にさようなら。《夜のアリス》……闇魔法【闇祓ダーク・エクソシスム】」


 僕は闇魔法でも初級の闇魔法をアリス生徒会長へと放ったよ。


【アハッ! 今更こんな攻撃しても無駄……ぁぁ?】


 ………パキンッ!


 【闇祓ダーク・エクソシスム】を避けもしないで喰らった《夜のアリス》……いや『肉塊の髪飾り』は身体が鏡の様に割れ。砂上の砂の様に粒子となって消えていく。


「………弱かった。予想はしてたけど酷い弱体化だったね。さようならアリス生徒会長。この魔法学園は今後、アレクシアの箱庭にさせてもらいますよ。僕はあの娘に最高の環境で過ごしてもらいたいので。ではさようなら」


 僕は冷たくそう告げ終えた後、〖全快復オートヒール〗で体育館を元の状態に戻して男子寮の自室へと。アレクシア達が眠っている場所へと静かに戻った。


《男子寮 セイフライドの間》


「シン君……ムニャムニャ」

「ぐごぉぁ! シンしゃま」


 主人公アレクシアとレイラ《ヒロイン》ちゃんが仲睦なかむつまじく同じベッドで眠っているね。きかな。きかな。ホホホ。


 僕はアレクシアの前髪を優しく撫でた。


「………今夜の悪夢は全部終わりましたよ。アレクシア。僕の最大の宿敵で僕の最推しの女の子。アレクシア……君がこの世界リアルで幸せになれる様に僕はこれからも頑張りますよ。そして、それが終われば、僕は辺境でスローライフを」


「フニャフニャ……シン君。浮気したら地の果てまで追い掛けて首チョンパなのよ。一生追いかけるの」

「シンしゃま……追いかけます」


「…………ん? この娘達。何を恐ろしい事を言っているんですかね?」


 な、なんて寝言を言っているんだい、この2人は。お、恐ろしいねぇ~………


「……………だ、誰が助けて~! こんな死亡フラグあり得ないでしょう。神様~!」


 僕は恐ろしい事を言った眠っている2人を見て天井に向かって叫んだよ。それゃあそうだよね。


 僕が逃げようとすると地の果てまで追いかけて来て、首チョンパなんてどんな死亡フラグだい?


 こんなの一生アレクシアに寄り添って首チョンパされない様に立ち回らないといけないじゃないかい。


 そんな人生幾いくら命のストックがあっても足りないよ。


「くぅぅ! 僕は生きるよ。絶対に老衰するまで生きて、この僕に理不尽な人生を行かぬいてせるんーだっ!」


 そんな誓いを立てて僕は明日も一生懸命頑張ります。



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