第22話 入学式は因縁だらけだね。だから僕はモブに徹する事にするよ
《王都 シン・セイフライドの屋敷浴場》
「シン君。お背中洗ってなの~!」
「はい。アレクシア」
約一年間の間ずっと抗い続けたアリス魔法学園の入学が決定してしまったね。
「今度はお手々《てて》をお願い~!」
「はいです。アレクシア」
今思えばこの僕がアリス魔法学園に入学しないなんて選択筋は存在しなかったんだなと思い始めているよ。
「次は足もなの~!」
「……足ですか。了解です」
修行して力は付いたといって家出しようとしても。
あの子供思いなお父様だからオーフェンさんを始めとしたお父様直属のセイフライド家の精鋭使用人の人達が僕を地の果てまで追いかけて来るだろうし。
それにもしお母様からの手紙の内容の中に僕を絶対にアリス魔法学園へと入学させる様になんて書いてあったらさ。
お父様はお母様に溺愛していて絶体にお母様に頼まれたらその約束は絶対に守るものね。
「次は髪の毛も洗ってほしいの」
「ハハハ。アレクシアは本当に全身をキレイキレイしてもらうのが好きなんですね」
「うん。シン君に洗ってもらえると嬉しいのよ」
「それは……良かったです」
とにかく入学が決まったのなら仕方ないね。こうなったら徹底的に魔法学園の落ちこぼれに徹して魔法学園から強制退学を捥ぎ取らないとね。目指せ退学後の辺境スローライフッ!
「アレクシア」
「なぁに? シン君」
「その……ずっと言いづらくて言いそびれていたのですが」
「んー? 何?」
「……そろそろ僕と一緒にお風呂に入ったり一緒のベッドで眠るのは止めませんか? アレクシアも良いお歳になりましたし。これから1人でお風呂くらい入れる様になりましょう」
アレクシアは去年の夏の終わりごろからずっとセイフライド家の別邸で僕と寝食を共にしているんだ。
何故なんだいって? そんなの僕の隠し部屋に飾ってあったパンツコレクションの一部を見られちゃったからに決まるてるよね。
あの時のアレクシアの怒りっぷりと恥じらいっぷりは最高だったね。
▽
ガラガラガラガラッ!
(シン君の部屋って変な部屋があるのね)
(ア、アレクシア。ま、待って下さい。その隠し部屋には入らないで下さい。その部屋には僕の御神体達が飾ってあるんですから)
僕はとある人をお師匠様と呼んで敬愛し心酔してるくらい好きでね。あんなカッコ良くて素敵な人に僕は絶対なりたい。パンツを飾ろうなんて思いつくなんて凄すぎるよねっ! あの人は本当に凄い人だよ。
だからパンツを部屋に飾って彼に1歩でも近付こうと努力して日夜神器集めやたまにやって来る敵の女の子達の戦利品を壁に飾っているのさ。
どうだい? ワイルドでしょう?
(シン君。何なの? この壁に干してあるおパンツは?)
(……えっと。山で拾った戦利品ですよ。アレクシア)
(………シン君は変態さんなの?……これは浮気なのよ。シン君には私の監視が必要なのおぉぉ!!)
アレクシアはプリプリと怒って僕の身体をギュっとしてきたよ。可愛いよね。
(うわぁぁ!! アレクシア。怒って抱き付かないで下さい。僕が悪かったですから)
▽
「ねぇ? アレクシア。アレクシアもレイラちゃんやメリュちゃん達と一緒にお風呂に入ったり一緒眠った方が良いですよ」
その方がアレクシアがどっちかと仲良くなってハッピーエンドを迎えてくれるからね。そして、僕は晴れてお払い箱。アレクシアの前からCOOLに去るよ。
それと幼女から少女へと成長して日増しに美少女になっていくアレクシアを変な目で見たくないんだ。
生前の記憶を思い出してこの1年間彼女やレイラちゃんの成長を近くで見ているとどうも年の離れた妹にしか思えなくなってきてるんだよね。
「ですからこんな僕とは夜以外の四六時中ずっといないで他の女の子達と仲良くした方が……」
「駄目なのっ! それは断固拒否するのよ。シン君」
「断固拒否……いえですから。アレクシア」
チャキンッ!っと夏の終わり頃からアレクシアに発動方法や使い方を教えているアレクシア専用の神器『女神の金斧』をアレクシアは小型化させて構えたよ。
何? この娘本当に一年前まであんなにか弱そうだった僕の最推しのアレクシアたん同じ女の子なの? 逞しく成長しすぎじゃないかい?
「ひぃっ! アレクシアは首チョンパは駄目ですよ」
「シン君……もし私とずっと一緒に居るのを断っちゃったら。シン君のお父様。ハイドパパにあのおパンツ部屋の事をバラしちゃうのよっ!」
グゥッ! まさか僕の一番の弱点である恐怖のお父様にあのおパンツ部屋コレクションを報告するだって?! そ、そんな事をされたら終わっちゃう。僕のおパンツ部屋コレクションが全部捨てられちゃうじゃないか。
「くっ!……分かりました。これからも末長く四六時中ずっと一緒に居ましょうアレクシア」
僕は涙を流しながらアレクシアに土下座したよ。おパンツ部屋コレクションを失いたくないもんね。
「うん。シン君っ! 後。土下座はみっともないから駄目なのシン君。シン君は私の大事な人なんだからカッコ良くいてほしいの」
「……はい。善処します。アレクシア」
……なんだろ。だんだんだけどアレクシアのお尻に敷かれ始めてないかい? 僕。
いや。アレクシアは僕の最推しの娘で守ってあげたくなる程一番大切な存在だけどさ。
このまま行ったら僕。アレクシアに一生頭が上がらないまま自由になれないんじゃないの?
それにさっきアレクシアはお父様の事をハイドパパとか言ってたし。セイフライド家の屋敷でも家族みたい仲良くしてたしさ。
ぶっちゃけ実の息子の僕よりも。最近のお父様はアレクシアを実の娘の様に可愛がっているしね。いや凄く良いことなんだけどさ。
なんだか色々な外堀が埋められ始めている気がするのは僕の気のせいだったりするのかな?
「シン君。じゃあこのまま一緒に湯船に浸かるのよ」
チャキンッ!っと僕を即死に追いやる事ができる『女神の金斧』が金色に光輝いてるよ。凄い怖いよパパ《お父様》。
「はい。アレクシア。喜んで……グスンッ!」
なんだか僕。だんだんアレクシアから逃げられなくなってきていないか?
いやいやまさかね。うん。僕はアレクシアがヒロインの誰かと結ばれればお払い箱になる要らない悪役令息さ。だからこのままアレクシアが誰かに結ばれたら彼女の前から静かに居なくなる。
その方がアレクシアは幸せになれる筈さ……
◇
《数週間後 アリス学園入学式》
「新入生入場」
「「「わあぁぁ!!」」」
おぉ、まるでお祭りだね。隣国の貴族や有名な亜人の一族まで来賓として招かれてるよ。
外じゃあ各国やリゲイン王国の地方から集められた出店や出張レストランがびっしりとお店を出していて賑わってるね。
入学式の頃合いを見計らって抜け出さないと損だねこれは。出店や出張レストランの味を楽しまないとね。
そしてそして。入学生の先頭を行くのはアリス魔法学園の入学試験を首席合格したアレクシアでその次にレイラちゃんが続いてホロウ。
一番最後は僕と何故か首席合格を辞退して補欠合格試験を再度受けて合格したララちゃんが僕の前にいるんだ。何でだろうね。
「……何でシン君が一番じゃないの?」
「アレクシア様。前進まないと駄目ですよ」
「そうよ。アレクシア。後ろがつっかえるんだから早く進みなさい」
うんうん。この世界の主人公とヒロイン達が順調に仲を深めているね。素晴らしい光景だよ。
「シン様。私。陽の目でシン様と共に歩ける光栄ある未来を頂けて感無量ですわ」
アリス魔法学園の制服に身を包んだ妄想変態少女…じゃなかった。
ジン教とか言う新興宗教の聖女を名乗る変態ララ・エウシュリア・メレクトルクちゃんが両手を握って天井を仰いでいるよ。皆がそれを見ていてドン引きしてるよ。止めてよ。ララちゃん。
「そうなんだ。それよりも何で首席で合格したのにわざわざ再試験なんて受けて補欠合格組になっちゃったんだい? ララちゃん」
このアリス魔法学園。試験中はかなりの試験希望者を落としてたのに。試験に落ちた子達には別の試験要項の魔法適正や剣術の才能がある子達は補欠合格としてアリス魔法学園への入学合格をさせたんだ。
多分だけど。これは入学後に化ける可能性が少しでもある子達を手元に残しておきたい魔法学園側の作戦なんだと思うんだよね。
じゃなきゃあ。入学試験で歴代最低成績を叩き出した僕を名門であるアリス魔法学園に入学させるわけないもんね。
しかし当日は上手く真なる実力を隠して他の受験生達から失笑までされながら落ちれたと思ったんだけどね。これも運命力が僕を逃がさない為に働いた結果かな?
「あれがセイフライドで有名な悪童ですか。噂では貴族として教養も一切身に付けず野山を駆け回っているとか」
「プッ……あれが入学試験で歴代最低を叩き出した。セイフライド家の野猿令息と可笑しな宗教の宣伝をしまくる変な娘ですか」
「セイフライド家の? 他の子供はかなり優秀だと伺っていたが。まさか歴代最低を?……ふっ! セイフライド家の未来も暗くなったものだな。それにしてもあの小僧の前を歩く娘。なかなか端正な顔立ちではないか」
聴こえて来るのはララちゃんが変態って話ばかりだね。可哀想なララちゃん。ひとえにこれも君が常時変態行動をしている行動のせいだね。アーメン。
「……シン様。あの来賓の方々。シン様の悪口を沢山言ってらっしゃいますわ。神罰を与えて改宗させて差し上げねばいけませんね」
ララちゃんはそう言うと懐からトンファーみたいな武器を取り出したよ。怖いよね。
「ちょっと。それ僕が2ヶ月前にランファンちゃんから回収した『二双の聖棒』じゃないか。何でララちゃんが持っているだい?」
「はい。シン様の神器部屋に侵入してお借りしましたわ。この神器をシン様だと思いこれからは大切に致します」
それを世間では泥棒っていうんだよ。ララちゃん。
……まぁ、良いや。なんか使いこなせてるみたいだし。そのままララちゃんに持たせておいてあげようっと。
「そうなんだ。でもここは公共の場だからそんな危ない物はしまおうね。ララちゃんを変態呼ばわりした人達は。後日夜の屋敷にでも忍びこんで血祭りにあげれば良いからさ」
「まぁ、それは素敵過ぎる名案ですわ。流石シン様です」
こんな感じで僕とララちゃんはアホなやり取りに花を咲かせていたんだ。
◇
《入学生 先頭側席》
「何? あのピンク髪の娘? シンとだいぶ仲良さそうじゃない? ねえ? アレクシア、レイラ……ヒィッ?!」
「シン様……どなたですか? その可愛い女の子は?」
「シン君………浮気は首チョンパって前から言ってるのよぉ!」
◇
「シン様~! 右手をギューッ!ですわ~!」
「ララちゃん。夜の時みたいに引っ付かないでよ。恥ずかしいからさ」
何だか入学試験上位組の方から凄い圧が感じられるね? 何でだろうね。
「……つっ! 君達。少しは静かに出来ないの? 今日はアリス魔法学園の入学式にして隣国が集まる祭典め兼ねている。もう少し合格者としての自覚を持って行動しなさい」
「ヘァ?! ごめんなさい。」
「……あれ? この声はまさか」
金髪、長耳、少し成長して伸びた背。ララちゃんの前を歩いていて。騒いでいる僕達を注意したのは……
「………君………どこかって会った事ないかしら?……つっ! 君を見ていると頭が痛くなるわ」
ドスケベ悩殺に成長する予定の金髪エルフの女王ちゃん。
僕が初めて戦利品を頂いた女の子と再会し。不味い事が起こるフラグが立った事を確信したよ。




