第六章 色づく紅葉(クレハ)①
オープニング曲 『クレハの季節』
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今日も朝が来た。
その当たり前のことが、ここ数日はとても嬉しい。
少し前、シャルたちと旅をしていた頃は、朝が来ることが陰鬱で仕方なかった。
夜も、だったけど。
今日という一日が自分のためにやってくるなんて、考えてもみなかった。
さらに私のために用意される時間まである。
でもそれも今日で最後、か。
もちろん寂しいし、もっと、いつまでも、と思わなくもないが、今の私にやらなければならないことがあり、その為の時間なのだから。任務を放棄してしまったら本末転倒だ。
今日という新しい日、その朝。今日一日で先生から学び取れることを、少しでも多く、と決意を新たにする。
もう一つ、今日はお楽しみがある。
自分の服を着ることができる。
それも、オランジェットさんが私のワードローブからセレクトしてくれたもの。凄いのですよ。靴まで選んである。本当に素敵な女性だ。
私が分析するに、ポイントは白の七分袖のオーバーサイズカットソーだなって思う。だってこれ、一度も着てないから。値札が付いたままだったと思う。それを目ざとく見つけたんだね。首周りが大きく開いた、ちょっと大人なデザイン。試着の時は良いと思ったんだけどなぁ。自分の部屋で着てみたら、思った以上に首周りの開きが大きくて。ブラのストラップとか丸見え過ぎちゃう。生地が白で夏用の薄手だから透けちゃうし。他のみんなはともかく、あの男には絶対に見せたくなかったから。だからいつか着てやる!って思っても着る機会が無くて、哀れタンスの肥やしに。トホホ。それで、このカットソーの下にサックスブルーのキャミ。これも着る機会が無かった。そしてカットソーと組み合わせると、透け防止にもなる。さらにこの薄い青と相性の良さそうな、ベージュのロングスカート。さらに白のパンプス。それこそパンプスなんて、履く機会がまず無かったからね。
それで、全体的に爽やかで清楚な、でもちょっと大人のムードもある感じのコーディネート。さすがにこれで先生からお叱りを受けることはないだろう。しかし、もう一品ある。素敵な、金色のネックレス。これを着けろってことだと思うんだけど、凄いな、このセンス。ちょっと物足りない首周りにキリッとアクセント。これを選ぶセンスって私にはないから、間違いなく私の物ではない。オランジェットさんが自分で足したんだろうなぁ、と思う。今日お会いできたら、そのあたり伺ってお礼を言わなくちゃ。
着替えが済んで、そうそう、今日は道場のシャワー室の使用許可が出ているそうだ。替えの下着と、シャツ、短パンも持って行けば大丈夫かな? そして昨日の荷物には、何も入っていない小さなトートバッグが入っていた。これを使えということなのだろうが、私の物ではない。これもオランジェットさんの仕業だろうか? 本当に何から何まで…
牢を出て、みんなに挨拶。ゴリ男君。モヤシ君。そして今朝はシャルも。まだ心身共に万全じゃないみたいだけど、行ってきます、って声を掛けたら、行ってらっしゃい、って返って来た。本当に信じられないことだが、数日前までは「近くに居る他人」程度だったのに。状況がそうするのだろうが、人は変われるのだ。
さて、道場へ到着。
まずは元気な挨拶から。
「おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」
「おう! 来たな! …あ、ああ、そうか、今日は寝間着じゃないんだな」
昨日も寝間着ではなかったのだが…そういう風に見られていた、ということだ。
「先生のおかげで自分の私服が着られるようになりました。それで、これ、オランジェット先生が選んでくださった物なんですよ!? いかがです?」
先生の前でくるっと一周回ってみせる。
「お、おう。いいんじゃないか?」
うん…武人に感想を求めた私が悪いのだ。多分刀剣だったらめっちゃめちゃ褒めてくれただろうにな。
「それじゃクレハ。準備しろ。おっと、まずは凍結解除からだな。耳よこせ」
「はい! お願いします!」
私は先生に駆け寄り、左耳を差し出す。
「ちょっと待ってろよ」
また先生の手が耳に触れ、摘まれる。やはりくすぐったい。
しかし。
「ん?」
凍結解除の信号音が聞こえない。
「【設定】解除…されてないよな?」
「ええ。はい」
「なんだこりゃ? スマン、ちょっと待ってくれ」
「はい…」
相変わらず耳を摘まれたまま。封印具の様子を見ようと先生が顔を近付けているので、耳に息がかかってくすぐったさが倍増する。さらに、何度も指紋認証を通そうとしているので、ずっと耳を揉まれているような状態。
「スマンな…いや、昨日はなんともなかったろ…」
独り言なのか問われているのか分からず、とりあえず返事はする。
が。
「はい… …あン…」
慌てて口を抑える。なに今の。変な声、出ちゃった…
チラッと先生を見る。封印具に夢中で、聞かれてはいないようだ。ふぅ。ちょっと安心。
ピッ。やっと解除音。
「ふぅぅぅ。どうしたってんだ? 電池が無いとか、そういうヤツか? まぁいい。ん? どうした? 体調でも悪いのか?」
「あ、いえ、別に…え? どうしてですか?」
「いや、なんか顔が赤いから…」
!!!
え? 私、顔赤くなってるの?! ヤダなぁ、恥ずかしい…
「いえ、別に、全然普通に大丈夫ですから! それでは着替えてきます! 更衣室、お借りします!」
【設定】が機能している以上、その場で騎士服へ【設定】変更すれば済むのだが、なんだか顔が赤いと指摘されると、ちょっとそれすら恥ずかしくなってしまう。それで、更衣室へ…逃げてきちゃったみたいだな…
◆
エンディング曲 『私だけ(F)』
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