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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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残穢

「突撃ぃぃぃ!!!!!!」

 重騎士100騎の編隊を5つ組み。 各個に突撃する。


「ぬうぉぉぉ!!!!!!」

「うぎゃぁ!!!」

 雄叫びを上げて襲いくる金属と筋肉の壁に、レグルス軍は成す統べなく吹き飛ぶ。 牛魔人ミノタウロスと比べれば、木の葉のように軽い。 最早、一方的な蹂躙だ。


 +++++


 いったい何が起きている?  突然友軍が消え、援軍と思われた部隊が襲ってきた。 シュナイダー様はご無事か? とにかくお側に参らねば。


「ベレン坊ちゃま、右からきます」

「わっ わわわっ ぐわぁぁぁ!!!!!!」

 雑魚の相手をしている場合ではない。


「ぬうぉぉぉ!!!!!!」

「ちっ 小癪な!」

 立ちはだかる、分厚い金属の壁。 重騎士か・・最も魔剣士との相性が悪い相手だ。 


 ガキンッ


 しまった・・魔剣を折られた。 このままでは殺られる。


「止めはいい。 とにかく、急いで魔剣士と魔導士を無力化するんだ」

「はっ」

 あの声は、ブルース・マスタング? やっと見つけた。 敵わずとも、せめて一矢報いてやらねば。


「うっ」 ドスッ

「抵抗するな。 寝ていろ」

 おのれ、私など歯牙にも掛けぬか。 シュナイダー・・さま。


 +++++


 味方が何処にもいない。 ダニエルもスティックもビービーもシクレグも・・皆一瞬で消えてしまった。 死・・死ぬ。 死んでしまう。 


「ベレン坊ちゃま。 お気を確かに」

「爺? おまっ・・おまえは本物なのか?」

「はい。 本物の爺にございます」

 良かった。 何時もの爺だ。


「戦いの趨勢は決しました。 一刻も早くこの場から離れましょう」

「しかし、敵に囲まれてしまった」

 猛獣のような重騎士が彼方此方で暴れている。


「戦意を失った者は捨て置けと、マスタング卿から指示が出ているようです。 武器と鎧を捨てれば、襲われません」

「そっ・・そうか。 ならば、急いで逃げるぞ」

 やはり『好色卿』は無能だ。 敵の大将を見逃すとはな。 卑怯な手を使った報いを必ず受けさせてやる。


「我らは、武力も精神性もマスタング卿に遠く及びませなんだ」

「馬鹿を申すな。 さあ、行くぞ」

 爺は何を言ってる? あの無能が俺より優れている訳がなかろう。


 +++++


 レグルス軍の本隊は東部に用意した『穴』から撤退を開始した。 辺土を抜けて、レビゾン本国に落ち延びるルートだ。 途中の村々が心配だが、シュナイダーの人柄に期待しよう。


「サンサーンス殿、聖騎士は外壁門の警戒をお願い致す」

「敗残兵を追い返せば宜しいのだな」

「ええ、但し、保護を求められたら、拘束した上で受け入れて下さい」

「あいわかった」

 暫く治安維持の部隊を巡回させる必要があるな。


「やり方はあれだが・・完勝だな」

「卑怯で結構、こっちは攻められた側だ。 しかし、シュナイダーを見逃して悪かったな」

「なあに、私は文句を言える立場にない。 それに、旧皇家の魔導七剣士は2人が戦死、1人は捕獲された。 戻ったところで、奴には何も出来んよ」

 統率が回復して、集結した敵部隊は800人程。 正攻法で十分勝てる戦力差ではあった。 しかし、此方もそれなりに犠牲を覚悟せねばならない。 帰ってくれるなら御の字なのだ。


「これから、後片付けが大変だ」

「街も荒れておるしな」

 これ、賠償を払ってくれる人は居るのだろうか?


 +++++


 ご丁寧に用意された『穴』から、退却するしか選択肢はなかった。 我々が全滅すれば、未だ完全に掌握しきれていない政権をゾンダ家一党に取り返されてしまう。 そもそも、他国に侵攻している場合ではないのだ。


「追手は距離を取ったままです」

「たかが、200騎程度の寡兵。 取って返して蹴散らしてやりましょう」

 東に撤退する我々を、マスタング卿の部隊がこれ見よがしに尾行している。


「捨て置け」

「しかし、宜しいので?」

「あれは、ただの監視だ」

 道中の開拓村で物資の徴発は難しいか。


「スーザン、残りの食料は何日持つ?」

「あの・・閣下。 パーナム卿は」

 そうだった。 スーザンは戦死したのだったな。


 +++++


 そばかすの女魔剣士こと、旧皇家の魔導七剣士スーザン・パーナム。 期待を裏切ったシャーロットと違い、彼女は才能の塊だった。 繰り返し厳しい尋問を行ったところ。


「くっ・・殺せ」

 様式美を違えることは一度もなく。


「私の身体に、いったい何をした?」

 感度は極めて良好。


「ブルースしゃまぁ もっと可愛がってぇ」

 そして、ヨワヨワなのである。


「マスタング卿、今日の尋問は終わりましたか?」

「ああ、レグルスの妹ヴェロニカが現れた経緯について聞き出せたよ」

「そうですか」

「この続きは明日だ」

 スーザンとは魔剣士養成学校時代の同期だというシンシア。 表情に苛立ちが滲んでいる。 過酷な尋問に晒されるスーザンを案じているのだろう。


「貴様のような男を私は認めん」


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