争いの終結
魔導七剣士とブルース様との攻防は予断を許さない状況が続きました。
「くっそ~ 早すぎて見極めが難しいわ」
「でもジャネット様は凄いです。 ご自身で聖法魔法の新しい術を開発されるなんて」
ジャネット様は自身が考案されたこの術を『聖法ブロック』と呼んでおられます。 こぶし大の聖法結界を任意の場所に展開して、足を掛けたり、剣を振る腕に通せんぼしたりできます。
「必要に駆られただけよ。 そもそも基礎は貴女から教わった・・。」
「私が?」
「なんでもないわ。 次くるわよ」
「はい!」
いけません。 お話してる場合ではありませんでした。
「あの青髪男が特にやっかいね。 こちらの手に気付いて避けてくるわ」
「はい。 どうにかしてあの方を止めなければなりませんね」
とはいえ、困りました。 足掛けも腕取りも避けられてしまいます。 良い方法はないものでしょうか?
むむ、青髪の剣士さまは私の作った『聖法ブロック』を華麗なステップで避けてしまいます。 ジャネット様のように小さくないぶん目立つのでしょうか? 完全に見切られてますわね。 くるっと回って舞っておられるかのよう。 悔しいですわ。
いっそ躱された結界を動かせないでしょうか?
「えい! ・・動いた」
ふと思いたち、押しだすイメージで『動け』と念じたら本当に動きましたわ。
「・・あ」
「ぷぷっ 何あれ? ねぇティア、いまの見た?」
私が作った少し大きめの『聖法ブロック』は、青髪の剣士様の膝裏をトンッと押しました。 重心をやや後ろに傾けていた青髪の剣士様は、堪らずにすってんころりん。 愉快な姿で転んでしまわれました。
「うわっ 痛そう」
「わわっ ごめんなさい」
ブルース様にお顔を踏まれて、文字通り尊厳を踏みにじられた青髪の剣士さまに、思わず謝ってしまいます。
「なんか揉めてるわね」
「謝りに行った方がよろしいでしょうか?」
ブルース様と七剣士が戦いを止めて口論を始めました。 きっと恥を掻かされたと怒っておられるのですわ。
「えっ? なぜ彼らが」
「ここで新手か。 いよいよ厳しいわね」
その時、現れた騎馬の大群。 あれは白頭巾・・枢機卿直属の天誅騎士団ですわ。 彼らは遠方で戦うブルース様たちに気付いていない。 私達を包囲する機械科部隊に、横合いから一斉に襲い掛かりました。
*****
「無抵抗な方まで」
「これはただの虐殺ね」
終わってみれば、一方的な蹂躙だった。 国内の不穏勢力や邪教徒を粛清する使命を担う天誅騎士団。 女神メフィストフェレスの名のもと一片の容赦もない。 何故なら彼らは『完全なる正義』の代行者だから。
戦いが決しても降伏した者への無体が止まらない。
「私はここに居ます! もう止めて下さい!」
「ちょっとティア。 私達も何されるか解らないわよ」
私の声を聞いた白頭巾がこちらに歩いてきた。 わかって頂けたのでしょうか?
バンッ
「ひぃ」
「絶対に結界を解いてはだめよ」
天誅騎士は、手に持った生首を結界に叩きつけた。 塗りたくられた血が結界の表面を伝って落ちる。 あまりに凄惨な景色に悲鳴が漏れてしまう。
「おらぁ 目障りな結界をどかせ! 隣の女もぶち犯してやる!」
「さっさと除けろ! てめぇも首を刎ねられたいか!?」
「げひゃひゃひゃ たっぷり可愛がってやるぜ。 聖女さまぁ」
魔獣よりよほど恐ろしい。
「正義の代行者が聞いて呆れるわね」
「申し訳ありません」
「だから、なんでティアが謝るのよ。 ほら、やっときたわ!」
ジャネット様に促され、おそるおそる結界の外を見やると、そこにあったのは大きな背中。
「どぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
噴き上がる怒気、放たれる純粋な殺気、ブルース様だ。
+++++
戦闘が終わった聖騎士はすっかり緩みきっていた。 捕らえた女魔導士を前に、凌辱する順序を巡って争ったりしてる。 あぶれた聖騎士も捕虜の首を刎ねて盛り上がるありさま。 蛮族かな?
「私は先ず馬車の包囲を退ける」
「よかろう。 2人付いてやれ。 残りは本陣を制圧する」
「「はっ」」
敵陣に侵入したところで、シュナイダーとは別行動をとった。 出来れば一人にして欲しかったのだが。 混乱に乗じて逃げる手はなしか。
馬車に近付くと、聖騎士がセレスティアを罵っている最中だった。 足下に転がる生首、血に染まる聖法結界、有罪確定だ。
「どぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
両者に割って入り怒気を放つ。 もう戦意を失おうと赦してやらん。
ズパパパ―――ン!!!
棒立ちの聖騎士3人を鎧ごと一刀のもとに切り伏せる。 避けない的は楽だ。
「大将首だ! 討取って名を上げ・・・かっ」
「勘違いするな。 大将は薔薇の貴公子シュナイダー様だ」
そばかす魔剣士のシュナイダー推しがすごい。
「ティア! この2人は味方だ」
「はい。 もう悪戯はなしですわね」
魔剣士2人が『おまえか~』と恨み節を零す。 手の内を知られてしまった。
*****
馬車を包囲していた聖騎士の一団は、魔剣士2人の助けもあって容易に排除された。 本陣の戦闘音も止んだようだが。
「白旗が上がったか。 流石だな」
「弱者を嬲る卑怯者などシュナイダー様の敵ではない」
槍先に括った白頭巾が本陣で振られ、聖騎士の抵抗が止まった・・ていうか、負けると見るや大半が一目散に逃げ出した。 やっぱ蛮族で確定。
未明より始まった一連の争乱は、レビゾン、シンセス両陣営に多大な損害を残し終結した。
面白かったら 評価・ブックマーク・感想などお願いします。
誤字の報告も助かります。
とても励みになります。




