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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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深夜の襲撃

 聖都センシアを出立して昨日で3日が過ぎた。 明後日の夜にはバドック国境を超える。 これまで盗賊まがいの襲撃が数回あった。 迎撃した騎士が手傷を負ったものの、聖女セレスティアが回復魔法を掛けて損耗はチャラだ。


 そして時刻は深夜、僕は寝台を女達に譲り、大剣を枕に簡易ソファで休んでる。


「ん・・今夜もか」

「なによ。 文句あんの?」

 目の前には上気したシルフィーナの顔、既に気持ちのいいことになってる。


「ここまでされても起きないなんて護衛としてどうなの?」

「殺意は向けられてないからね。 止める理由もない」

 滾ったものを鎮めてもらう分には助かる。


「そ・・そう、目が冷めたなら集中しなさい」

「・・いいぞ」

 発育のいいシルフィーナは意外にもセレスティアと同じ14歳・・前世でいう所の中学2年生だ。 覚えたての欲望に歯止めが効かないお年頃なのかもしれない。


「どう? 気持ちいいでしょ? 私が居てよかったでしょ?」

「・・そうだね」

 そう単純な話じゃないか。


「ねぇナオキ、私のこと好きでしょ? 離れたくないわよね?」

「・・そうだね」

 彼女なりにギリギリだったんだろう。 色々と。


「無事に戻れたら、お義姉さまも自分の女にするの?」

「・・だといいな」

 お・・そろそろ。 って、フィナが動きを止めた。


「建国王アラン・センシアの血を引くお義姉さまさえ居れば私は用済み! 側室の・・それも不義の娘なんて何の価値もない! 貴方も私を捨てるに決まってるわ!」

「・・・。」

 寸止めは辛い。


 ともあれ、シルフィーナをどう扱うかはベアトリスと相談して決めた方がいい。 見捨てる気はないが、安易な返事もできない。


 ん?・・お客さんか。


「攻守交替だ」

「ふぇ? ちょっとまって・・きゃぁ」

 爆速で滾りを鎮め。


 *****


「ふぅ ベッドの下に隠れてろ」

「・・もう無理」 ガクッ

 警戒態勢を取った。


「50人は居るわね」

「ああ、いよいよ本命だろう」

 ジャネットも気付いたか。


「フィナはなぜ下着を脱いで寝てるのかしら?」

「扱き捨てられて悦ぶなんて、都合のいい女ね」

 言及すまい。


 ドド―――ン!!!


 聖法結界の外で響く爆発音、レビゾンの機械科部隊が使う魔導迫撃砲の攻撃だ。


 *****


 寝台馬車の外へ出ると、レビゾン機械科部隊が砲弾を装填している最中だった。 頑強な聖法結界も一点に繰り返し攻撃を加えれば綻びが出る。 弱点を突いてくるのが、魔獣と違う対人戦闘の厄介な点だ。


 ドド―――ン!!!


「閣下、敵の襲撃です」

「馬を落ち着かせて寝台馬車に寄せろ。 君達は騎乗して待機」

 儀仗と護衛の経験しかない公爵家の騎士はこの局面では足手まといだ。


「ティア、合図と同時に結界を解除、僕が出たら直ぐに再展開だ。 出来るな?」

「お任せ下さい」

「ジャネットは援護を頼む」

「お安い御用よ」

 僕はサトシに貰った『豪剣ムラサメ』を抜いた。


 ドド―――ン!!!


「お待ちください閣下ぁ! 結界の外へ出るなど無謀です。 このまま籠城しましょう」

「待っても助けはこない。 時間を掛ければ、それだけ包囲も厚くなるだろう。 もう一度言う、騎乗して待て」

「はっ・・はい!」

 幸い公爵家の騎士たちはガクブルながら承服してくれた。 勝手な行動を取られたら護りきれない。


「ブルース様、カウントよろしい?」

「ああ、3・2・・シッ」


 ドド―――ン!!!


 迫撃砲の着弾と同時に、大地を蹴って一気に駆ける。 僕の鼻先が結界に届く直前に半透明の膜は消失、直後に背後で再展開する気配を感じる。


「なに? 単騎で出てきおった!」

「フッ」

 一気に距離を詰めた先に槍を持った騎士が・・20騎。 先ずは追撃の手段を奪う。 大振りで指揮官の馬首を薙ぎ払った。


 バパ―――ン!!!


「ごぁぁぁ!!!」

 は?

 狙った馬ごと指揮官の胴が上下に泣き別れた。


「たいちょ―う! おのれ化け物」

 悲しいかな彼の意見に同意だ。


「シッ」

「くそっ ・・なんだと?」

 僕を化物と呼んだ騎士の握る鉄槍がポキっと折れた。 彼は未だ自分が斬られたことに気付いてない。


「アンガぁ! きっ・・貴様いったいなにをした?」

 槍先と共に上半身が左右に分かれた騎士・・アンガの同僚騎士たちは、事態が呑み込めずに足が止まった。 


 悪いな。


「どぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「ひっ」

 畳み掛けさせてもらう。


 +++++


「・・化け物だ」

「あの背中が悪鬼に見えるなら、失礼ながら貴方の鍛錬が足りない証拠です」

「聖女様?」

 ブルース様の戦い方は繊細で無駄がない。 圧倒的膂力と速度から受ける印象とは、実はずいぶん違う。


「これは不徳の致すところ。 確かに、同士討ちを恐れて砲撃も止まった。 これは勝てますぞ」

「いえ、未だです。 左翼に待機していた魔剣士が動き出しました」

「たったの7人ではないですか。 閣下ならば容易に切り抜けられましょう」

 もう。 優勢と見るや現金な方ですね。


「魔導七剣士を侮ってはいけません。 連携しての攻撃は戦乙女をも凌駕します」

「・・そのような戦力まで」

 あれは、いつもダイアナ様が従えている近衛の方々ではない。 おそらく旧皇家に仕える七剣士でしょう。


「魔剣士上等! チクチク妨害してやるわ」

 ジャネット様が七剣士の足下に一瞬だけ小さな聖法結界を展開した。 蹴躓いて倒れた彼らは、自分に何が起こったか解ってない。


「ジャネット様すごいです! それ私にも教えてください」

「いいわよ! でも、今は見て覚えてね」

 これは・・ぷぷっ ちょっと楽しいですわね。 おっと、笑ってはいけません。 戦いの最中です。


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