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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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貴族の女の本懐

 僕の回復を見届けたセレスティアが帰国した数日後、寝物語にベアトリスから釘を刺された。 いいかげん、ジャネットとマリアンヌの寝室にも行けと。


 もちろん僕は複数人との関係に苦悩する物語の主人公とは違う。 ハーレム万歳だ。


 しかし、幾度か邸内で遭遇した2人は明らかな怯えを示していた。 男性の使用人も近付けないらしい。


 前世で会った風俗嬢やこの世界の娼婦たちは奔放であっけらかんとしている。 複数人と関係を持ったり暴力的な男の相手をしたからといって誰しもトラウマを抱えるとは限らない。 心の内は解らないけど。 しかし、段階を踏んで娼婦に身を窶した女と違い、貴族の令嬢であるジャネットとマリアンヌが、ある日突然男達の相手をさせられたのだ。 その恐怖と絶望は計り知れない。              


「心を癒す時間が必要だと思ったんだよね」

「成程ね・・でも、その配慮は余計に相手を傷付けるわよ」

「そうなのか?」

 前世の認識ではDV被害者にはとにかく休息が必要だったと思う。 但し、そういう知り合いがいた訳ではないので自信はない。


「第一に夫に蔑ろにされた夫人は使用人に侮られます」

「そんな部下がいるのか?」

「いませんわ。 よく指導されてると関心もしますが、先々は解りませんわよ」

「・・そうかもな」

 これは反論の余地もない。


「第二に2人は貴族の女です。 その本懐は然るべき相手に嫁ぎ血を繋ぐこと。 そして、女が子を成せる期間は限られているのです」

「のんびり愛情を育む余裕はない・・か」

「愛? なにそれ? 美味しいの?・・と、言ったら軽蔑します?」

「軽蔑しない。 でも僕は君に親愛の情を抱いている。 義務と性欲だけでこの部屋に通っている訳ではない」

「・・憶えておきますわ」

 性欲が9割なことは黙っとこう。


「解った。 その辺りを踏まえて明日 話してみるよ」


 *****


 翌日、ジャネットとマリアンヌを四阿に呼んだ。 ここは視界が通るし、辺りで使用人の子供達が花を摘む姿も見える。 恐怖は最大限抑えられてる筈だ。


「こうして話すのは初めてかもね」

「・・そうですわね。 改めて無事の御帰還お喜び申し上げます」

「ありがとう」

 ジャネットの態度は普通だ。


「マリアンヌはどうだ? 快適に過ごせてるか?」

「芋料理ばかりじゃなくパスタが食べたいわ、もっと洗練されたお菓子も」

 マリアンヌが並んだ芋ケンピに視線を落とす。


「すまないね。 マスタング領は小麦が育ちにくくて。 でも、ヘロウ公爵家やジャネットのマッケィン侯爵家の協力で少しずつ物流も増えている。 今後に期待してくれると嬉しい」

「えっ? あの・・失礼なことを言って申し訳ありません」

 彼女が嫌味を言ったのは理解している。 鈍感な振りをするのは得意だ。


 その後は学院生活の話でお茶をにごす。 僕のとほほネタ10選は意外にウケた。 その内の一つはマリアンヌが当事者だったりする。


「2人との今後の関係について相談したいんだ」

 場が温まったところで本題を切り出す。


「旦那様が私達に嫌悪を抱くのは理解できます。 ですが、子を授けて頂かないことにはマーシャル子爵家の創設が立ち行かなくなります。 お願い出来ませんか?」

「私も精だけください。 あとは上手くやります」

 だいたいベアトリスに聞かされてた通りだ。


「解った。 希望する日時を連絡してくれればいい」

 薄っぺらい慰めは寧ろ傷付ける。 いまは淡々と応えよう。


 *****


 数日後、寝具に並んで横たわるジャネットとマリアンヌ、互いに手を繋ぎ目を瞑る2人に僕は可能な限り時短で精を放った。 はぁ こんな虚しい3Pは初めてだ。


「やっぱスラグ人の考えることはよく解らないわ」

 文字通りの種付け作業が終わった僕は、癒しを求めてマァリとミィカの寝室を訪れた。 今夜は親子3人 川の字で寝よう。


「人生最悪の3Pだった」

「はいはい。 今度、そのサンピーしてあげるから。 元気出しな」

 言質いただきました。 


 学生時代、ゼミの後輩の紗理奈と久美子とはよく3Pを楽しんだものだ。 3P・5Pは異世界ハーレムの定番。 5Pってなにをどうやるのか謎だ。


 *****    


 翌朝、ベアトリスが発した『矜持に反する』という取り付く島もない一言で僕の壮大な計画は白紙に戻った。


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