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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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聖女の一撃

 助かった・・みたいだな。


 目覚めたら屋敷の寝具に寝ていた。 セレスティアが治療してくれたのか。 


 む・・消耗しても朝の生理現象は健在か。 流石は18歳の身体だ。 雄々しい支柱に突き上げられたシーツを剥ぐと、下は全裸か。


 そして全裸がもう一人。


「・・ティア?」

 僕の胸筋にちっちゃな少女がしがみ付いてる。 全裸で。 恐らく肌を合せて癒しの聖法魔力を流してくれていたのだろう。 泣き腫らした瞼がなんとも痛々しい。


 それにしても不味い。 絵ずら的には完全に通報案件だ。


 コンコン

「入りますわよ」

「ぬぉ!」

 ここでベアトリスが登場か。 タイミングいいな! ホントに。


「お目覚めのようで・・あら、聖女様とは何時からそのような関係に?」

「違うんだ! これは治療の一環・・いや、生理現象の一環?・・で、ござる」

 やましいことは何ひとつ無い・・と思う。 何故だろう狼狽えてしまう。


「男女の過ちは戦の常、私は責めませんわ」

「だから誤解です」

「寧ろ今からでも遅くありません。 寝ている隙に種を蒔いて下さいませ」

「公爵令嬢が下種な後押しすな!」

 ベアトリスのテンションが若干おかしい。


「・・辺土伯夫人」

「は?」

「私はもうヘロウ公爵令嬢ではなく、マスタング辺土伯夫人です。 間違えないで下さい」

「申し訳ありません」

「許します」

 結局 怒られた。


「で、何故こんなことになってる? ティアを寝室に招き入れたのも君だろ?」

「旦那様のそういう所、嫌いじゃないわ」

 おおよそ検討は付いてる。


「お2人は憎からぬ関係だと伺っております」

「だからといって彼女は婚約者がいる他国の王族だ」

「その婚約者が起こした騒動の顛末も聞きましたわ。 レビゾン王家は怒り狂ってますよ」

 あの勇者は立場を負われる可能性が高いか。 ならばいっそ・・いや。


「シンセス王家とウチとじゃ家格が合わんよ」

「それなら心配には及びませんわ。 陞爵を見据えた準備は着々と進んでおります」

 え・・そうなの? まだ結婚して半年も経ってないけど。 公爵令嬢ベアトリス恐るべし。


「惹かれ合う2人が結ばれるなんて素晴らしいじゃないですか。 加えてマスタング家にシンセス王家の血が入る」

「とにかく駄目だ」

 後者が目的か。 あの言い方からして、ベアトリスは自ら側室の立場に甘んじるつもりなのだろう。 個人の感情云々よりも『家』を優先する彼女らしい・・貴族らしい考え方だ。


「ところで、彼女が起きてること気付いてます?」

「・・え?」

「ブルース様のお股に魔獣が・・えい!」

 再び起き上がれたのは半日後だった。


 +++++


「どうしようシルフィーナ。 戦乙女が俺を殺しにくる」

「安心してください。 世襲の戦姫如き教会の権威の前には無力ですわ」

「・・そうなのか?」

「はい。 教会が後見に付く限りアキラ様に手を出せる勢力はありません」

 助かったぁ やはり持つべきは権威ある後ろ盾だ。


「可能ならば枢機卿の後見も得られれば盤石なのですが」

「彼はセレスティアを嫌っているからね」

 あの生意気な女の所為で俺が迷惑を被っている。


「私が聖女ならば叔父上の働きかけであるいは・・でも異母姉は亡くなった正妃の娘。 ()()()()()()がない限り側室の娘である私が選ばれることはありません」

「しかし、俺はあの女と結婚する気はない。 俺の嫁はシルフィーナ、おまえしかいない」

 勇者だから聖女と結婚しなければならないなんて間違ってる。


「アキラ様の申し出を受け取れたらどんなに幸せだったでしょう」

「何か事情があるのか?」

「異母姉は私を蛮地の『好色卿』に嫁がせて、彼の将軍の後ろ盾を得ようと画策しているのです」

 なんてことだ。 卑怯な策謀を巡らせやがって。


「しかも、レビゾンの戦姫と画策してアキラ様のお立場まで悪くするなんて」

 ・・そうなのか?


「確かな筋の情報ですわ。 アキラ様を誘い出したのは異母姉、魔獣を差し向けたのはレビゾンの戦姫だったと聞いております」

 そうだ。 言われてみればそうだった。


「俺は嵌められたんだな」

「はい。 アキラ様の強大な力に嫉妬して愚かな陰謀に加担したのでしょう。 私の異母姉が本当に申し訳ありません」

 つくづく目障りな女だ。


「シルフィーナが謝ることはない」

「・・アキラ様」

 彼女を護れるのは俺だけだ。


「敵国に通じ勇者暗殺を画策した容疑であの女を告発する」


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