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残り物には福がある  作者: 橘 葵
13/106

光剣乱舞・・ダ

「配置に付け!」

 ダイアナの指揮で即座に布陣が完成する。 今回の作戦目標は飽くまで鋼索鉄道ケーブルカーの駅舎を防衛すること。 僕が率いるマスタング辺土伯家の重騎士20名が大盾を構えて正面に、レビゾン連邦魔導士20名がその後衛に、レビゾン連邦近衛騎士団所属の魔剣士7人が駅舎の周囲に布陣して、戦乙女ダイアナが駅舎の屋上に立った。


 タンタタン♪ タタタ♫ タン♪・・・。

「*****♪ ***♫ **♪・・・。」 

 子気味よいステップを踏んでダイアナの歌が始まった。 聴く者を魅了する古代聖霊語を使った歌唱は、レビゾン王家が代々継承してきた秘匿魔法で、その意味を知る者はごく一部の王族のみとされている。


『ねぇダーリン♪ 初めての♫ キスは♪・・・。』

 因みに、何故か僕は歌詞を理解することが出来る。 厳かな雰囲気とブリブリな歌詞の違和感が半端ない。 歌が2メロからサビに入るとダイアナは剣を抜いた。 そして、全身を躍動させ踊り狂う彼女からフラッシュが放たれる。


 戦乙女ダイアナが持つ『聖剣プルート』は光の魔剣だ。 今、ダイアナが舞っている演目は『光剣乱舞』文字通り光の速さで斬撃を放つ必殺の舞だ。


「絶対に手を離すなよ、必ず死ぬぞ」

「はぃぃぃ!!!」

 僕は従軍書記官のデイビッドをおぶってやる。 射線を予測して回避しないと巻き添えを食うのだ。


 見る者を死出に誘う光の乱舞、古代の英雄になぞらえ王女ダイアナを戦乙女たらしめた舞だ。 あまりの美しさに戦場に居ることを忘れそうになる。


 僅か数分のオンステージが終幕して、辺りの魔狼ウルフは全て息絶えた。


「損害報告!」

「閣下、私すごい血が出てます。 重傷です」

 唯一傷を負ったデイビッドも幸い軽傷だ。


「少し息を整えるぞ。 繰り返しになるが、本作戦の目的は駅舎の防衛だ。 深追いせず、戦域は最小限に留めるように」

「はっ!」

 戦いは始まったばかり、セレスティアの到着まで持たせねば我々の敗北だ。


 +++++


「ヤッキュウをす~るなら、こういう具合にしやしゃんせ。 アウト! セーフ! よよいのよい! おっしゃぁ!」

「きゃぁ! これ以上 脱いだら見えちゃいますぅ」

 長い歴史の中で多くの異世界人を召喚してきたシンセス聖教国は、市井の者にも異世界の文化が広く根付いている。 アキラ様が興じる『ヤキュウケン』なる遊戯もその一つだ。


「ささ、聖女様もおひとつ」

「いえ、私は職務中ですのでお酒は結構です」

 はぁ この馬鹿騒ぎはいったいいつまで続くのやら。


「聖女、ちょっといいか」

「はい。 何でしょう?」

 アキラ様が連れてきたエルフの少女・・といっても100歳を超えてるとか。 彼女はエルフ族とシンセス聖教国の友好の懸け橋としてアキラ様と婚約した。


「其方は勇者の婚約者だと聞いた。 淀みない魔力を持つ其方が何故、あのゴミと結婚する?」

「ご・・ゴミ?」

 曲がりなりにも勇者様ですよ。


「人間は結婚すると直ぐに交尾するだろう? あんなゴミと交尾をしたら魔力が濁るぞ」

「いえ、貴女様こそアキラ様と婚約されたではないですか?」

「おいおい、『貴女様』なんて堅苦しい呼び方は止せやい。 先日、ダッダーダダンダダ・ダッダーダ・ダーダダッダンダと名乗ったであろう?」

 失礼ですけど『ダ』が多すぎて無理ですわ。 


「私は人間の街を見物したいだけ。 そもそも、私が人間と交尾するような変態に見えるの?」

「えっと・・おっしゃる意味がよく解りません」

 情報過多で処理が追いつきませんわ。


「ねぇ ゴミの宴会にも飽きたし、今から2人で抜け出さない?」

「・・そういう訳には」

 ホントは早く2人の下へ行きたい。


「聖女は『パンドラの窯』に行きたいんでしょ? 私が連れてってあげるよ」

「え?」

 ダ・・様が言う『パンドラの窯』とは、確か亜人種が使う『奈落』の別称です。 アキラ様はダ・・様には強く言えないし、彼女の我儘という形ならば無理が通るかもしれません。


「お願いします! 連れてってください」

「そうこなくっちゃ」

 ブルース様、ダイアナ様、今から行きます。

 

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