表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り物には福がある  作者: 橘 葵
14/106

駅舎防衛戦線

「第3波きます!」

「ぬぅおぉぉぉ!!!」

 牛魔人ミノタウロスのくせに波状攻撃なんて生意気だぁ! 重騎士のプライドに掛けて、この力比べは負けられない。 ズズンッ よし! 今度こそ足が停まった。


「魔導士隊、たっぷりくれてやれ」


 ドーン! ドドド―ン! ドゴゴゴゴゴッ!!


 停まった牛魔人ミノタウロスは急には引き返せない。 押し寄せる後続も将棋倒しになる。 そこへ魔導士隊が迫撃魔砲を撃ち込む。 これで勝負あった。


「ふぅ ホント息つく暇がないな」

「前線基地からの観測では、今ので暫くは休めるそうよ」

 未明より始まった少数精鋭による決死作戦。 降下直後の大規模な魔狼戦、その後も背後の岩壁から壁蜥蜴ゲッコーの大群、泥濘地から這い出た巨大蛞蝓ビッグ・スラグ、そして牛魔人ミノタウロスとの正面衝突。


「物資の補充に交代要員も降りてきた。 今のところ作戦通りか」

「そうね。 ただ、シンセス側はなしの礫みたい」

 そうか・・今は持ち堪えていても、このままでは何れジリ貧になる。


「リスクはあるけど本隊を下ろして、撃って出た方がいいかもしれないわ」

「・・あの惨劇の再来か」

 3年前、魔獣飽和に伴う緊急招集をシンセスは祭事期間を理由に断ってきた。 その結果、聖法結界の護りを欠く辺土統括軍は兵員の7割を損耗する大敗を喫した。 しかも、互いに戦力を融通し合う関係を重く見たレビゾン、バドック、両政府はシンセスに遺憾の意を示さなかった。


「あの時、責任の所在を明確にするべきだったのだ。 ティアは道理の解かる人間だが如何せん幼い、彼女一人の意見など狡猾な司祭どもに一蹴されてしまう」

「そうだな。 最近大人びてきたとはいえ未だ14歳だ」

 思えば中学2年生くらい。 初めて顔を合わせた5年前は9歳の小さな女の子だった。


「例の勇者も評判が悪い」

「早めに為人を見極めて教育的指導を施してやる」

「ブルースの屋敷で半年も扱けば真人間になるさ」

 勇者アキラはエルフの姫と婚約して以降、その傍若無人な振舞いが目立っている。 異世界にきて『俺TUEEE』で舞い上がったのかな? 根はいい奴であって欲しい。


 *****


「これはまた大物だな」

 目の前に現れたのは大百足センチ、体長100メートルはあろうか? ほぼ電車だ。


「閣下、逃げましょう。 ここは人が立ち入ってはいけない場所なんです」

「逃げるたって何処に? 悪いが鋼索鉄道ケーブルカーは使えないぞ」

 これまで上手いこと逃げ回ってたデイビッドもついに降参か。 鋼索鉄道ケーブルカーを上げればコイツはたぶん付いてくる。 こんなデカブツを外へ出す訳にはいかない。


「魔剣士達を借り受ける。 魔導士は後方から援護、重騎士は皆を護れ」

「なっ? ブルース貴様・・勝手に」

 下手な集団戦は犠牲者を増やす。 この巨体にダイアナの『光剣乱舞』も無効だ。


「君達は奴の意識を逸らしてくれ、私が頭を潰す」 

「承知しました。 閣下、ご武運を」

 後方をにいた魔剣士5人が大百足センチの体側ヘ散開した。 2人はダイアナの所へ戻ったか。


 ギチギチギチギチ


 大百足センチが気味の悪い音を鳴らす。 ずいぶんとお怒りのようだ。


 キンッ カインッ キキンッ


 硬い外殻が魔剣士の刃を弾く。 それでも彼らは細い足や間接を狙い着実にダメージを与えていく。 魔導士隊は派手な砲撃は避け、風刃魔法でチクチク牽制しているようだ。 


 長い攻防の末、遂に痛みに耐えかね大百足の顎が上がった。 外殻の柔らかい腹側が露出される。


「・・シッ」

 大盾を捨てて、僕は大百足センチの下に滑り込んだ。 


「おぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 そして顎の下から脳天に向け力の限り斧槍をカチ上げた。 全身の筋肉が悲鳴を上げ、噛みしめた奥歯が砕ける。 斧槍の切先は顎を貫通して脳髄に達し頭外殻の裏に突き刺さった。


 ギチギチギチギチ


 断末魔か怒りの発露か解らない。 顎に斧槍が刺さった大百足センチは身体をくねらし、暫しのた打ったのち『ブシュ―』と体側から息を吐いて、そのまま沈黙した。


「うぉぉぉ!!!」

 まだ我々は戦える。 この大百足センチ戦は戦意湧きたつ意義ある勝利となった。


 +++++ 


 凄まじい。 マスタング卿はあの大百足センチを斧槍の一撃で討ち取った。 流石は殿下が信をおく御人だ。


「参謀閣下!」

「また新手の接近か?」

 見張り台から眼下の駅舎を観測する我々は、魔獣の接近を殿下に伝える役割を担っている。


「とんでもないスピードです!」

「何がだ? いいから落ち着け」

 要領を得ない。


「地竜です。 襟巻地竜エリマキ・ドラゴンが高速で接近します」 

「・・地竜だと?」

 おかしい。 竜種は『奈落』の瘴気に耐性がある。 魔獣化した事例など聞いたことない。


「いますぐ殿下に報告だ」

 しかも、襟巻地竜エリマキ・ドラゴンは2足歩行で高速移動する厄介な相手だ。


「見当たらないぞ。 現在地は?」

「うっ・・上です」

 見上げるまでもない、巨大な何かが黒い影を落とした。


 フワッ!


 そして、眼前に音もなく巨躯の襟巻地竜エリマキ・ドラゴンが着地した。


「ね? 城壁なんてひとっ飛びって言ったでしょ」

「ちょっと! ダ・・様、皆様が驚くから駄目だって申し上げたじゃないですか」

 そして始まる少女2人の姦しいやり取り。


「皆様、お騒がせして申し訳ありません」

 地竜の背中から降りてペコリと頭を下げたのは。


「・・聖女様?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ