大体リューキのせい
「仲がいいのはわかったけど、あんまりはしゃぎすぎないようにね?」
「あぁ、それは大丈夫だ、NEETは見知らぬ人間の前では子犬のようにおとなしくなる」
「ナイトのことを信じていないわけじゃないんだけど、なんだかリューキが騎士みたいにふるまってるところを想像できないのよね」
「私もですね」
「安心しろ、俺もだ」
はっきり言って、アクションゲームとかの敵キャラで、時折礼儀正しく礼をしてくるやつとかいたが、その隙に最大火力を叩き込んで沈めていた。
「謙虚だけど、どこかひねくれてるからねリューキは」
「そこがいいんだろ? 味があって」
「自分で言うそれ? まぁいいけど」
からりとエリシアは笑うと、宿のあった道を曲がり、大通りへと抜ける。
「大通りに戻ってきたがどうするんだ?」
「まずはギルドに行くわ」
「ご飯ですか!?」
「それもあるけど、まずは情報集めね」
「情報収集……だけどよ、そんな都合よくいくのか?」
「まぁ、あまり期待はしない方がいいわね。 そもそも、ダンジョンの情報が目当てじゃないわ」
「じゃあ何の?」
「次に行く国を決めるためよ……ここ、アルスマグナのダンジョンは攻略した。次はドワーフの国か、ノームの国のダンジョンを攻略しなきゃいけなくなる」
「あぁなるほどです。 双方の国の状況や、安全な侵入ルートを調べるんですね?」
「そうね。 アルスマグナ公認ギルドだからね、あんまり不法入国とかの話は聞けないだろうけど、それでも行先の情報はあるに越したことはないわ」
「そりゃそうだ。 行った先が戦争中でしたじゃ洒落にならないな」
「そういう事。 一石二鳥でしょ? 冒険者じゃなくても、ギルドマスターなら旅の情報はくれる。 もともとそういう施設だしね」
「なんだか旅行案内所みたいだな」
「まぁね。 このご時世戦争も、ダンジョンに町が呑み込まれるなんてこともないし、国がしっかりとしてる分道路に魔物が入り込んだりもしてない。 それでも冒険者が食べていけるほどには魔物被害もあるんでしょうけど、ギルドの収入のほとんどは観光所案内や、旅行案内よ。 世界各地を回ったギルドマスターお勧めの旅行プランを提供してくれるわ」
それは、人気が出るのも納得だ。
「見えてきたわよ」
「まぁ、私達不法入国者だから正式には利用できないんですけどね」
「話を聞くだけでも十分よ、ほらもうつくわよ」
大通りを歩いていくと、一度見たことのある景色が俺の前にあらわれ、冒険者ギルドが姿を現し、俺たちは昨日と同じように扉を開けて=飛翔する竜の太陽=へと入る。
と。
昨日とは違った、重苦しい雰囲気が俺達を取り囲む。
「なんだ? やけに空気が重いような」
「ざわついてますね」
昨日のような活気はどこへやら、皆が皆ざわつき落ち着きがない。
「………どうしたのかしら?」
と。
「……誰もいないのか、本当に? 信じられないぞ……まさかここにいる冒険者の誰もが、ゴブリン族を恐れているっていうのかい?」
男性の声なのか、女性の声なのかよくわからない高く透き通った声がギルドの中に響き渡る。
「ゴブリン族?」
「エルフ族と、竜神族の国の間に集落をつくって暮らす部族ね……魔物ではないけど、人を襲って生計をたてたり、街で略奪を繰り返したりする無法者ね……何かしでかしたのかしら?」
そうエリシアは首を傾げると、人混みをかき分けてその声の主の元まで向かっていき、俺たちもそれについていく。
「この町は今危機に瀕している! 今こそギルドを上げて町を守る時だ!? 国境が突破されたなら次はこの町! 騎士団の到着なんて待っていられないんだぞ!」
人混みの中でも目立つ長身長髪の眼鏡の男。
俺よりも不健康そうな眼の下のクマが印象的なその男は、今にも喉から血を拭いて倒れてしまうんじゃないかと心配になるほど似つかわしくない大声を上げて人々に何かをしきりに訴えている。
「失礼……何の騒ぎ?」
「ん? 誰だお前」
「同業者よ……それで、私たちは優雅に朝食を取りに来たんだけど。 ここでは鶏の代わりに、あの人を朝は鳴かせるの?」
「エルフ族のジョークは笑えんな……」
男の訴えかけに、後ろの方で腕を組んで唸る剃髪の男にとりあえずエリシアは話を聞くことにしたのか、声をかけると、男は渋い表情のまま苦笑を漏らすと。
「国境付近でどうにも不穏な動きがあったらしくてな」
「不穏な動き?」
「あぁ、国境の守りがゴブリン族かエルフ族に突破されたかもしれないんだ」
「どういうこと?」
「昨日の昼のことだ、国境守りの成獣の世話をしている駐屯兵が……聖獣が姿を見せないとギルドに調査依頼を出してきたのが始まりだった。 当然ギルドはすぐに依頼を出して、幸いすぐに依頼を受けてくれる奴は見つかった……聖獣は許可証や証を持つものは襲わないからな、だが、今度はその依頼を受けた冒険者が帰ってこないんだ」
「まだ探索しているってことは?」
「その可能性もあるし、道に迷っているだけかもしれない……だが」
「もしゴブリンや、エルフ族の侵攻だったとしたら……確かに冒険者だけじゃ荷が重いよなぁ」
「……あぁ、そう言うことだ」
なにやらとんでもない事態がこの国を襲い始めているようであり、俺は面倒ごとが始まる前にダンジョンを攻略できた幸運に感謝をする。
「ちなみに……国境付近って、どこの国境付近のお話なんですか? 場所によってはまだ移動中という可能性も?」
「いやいや、それはない。 場所は目と鼻の先……テルモピュリーとアルゴンの国境線付近だからな……」
「「ん?」」
そのセリフとキーワードに、俺は一瞬疑問符を浮かべてエリシアと顔を見合わせる。
「……あのぉ……もしかしてなんだが……ここの国境を守ってる聖獣って……」
「レッドドラゴン……国境をけん制する役割を何年も果たしてきた夫婦の竜種さ」
―――あいつかあああぁーーー!?—




