エルフとお風呂2
混浴NOW
「ですが、エリシアさんはパッチを探しに行く……という選択は取らなかったようですね」
「まぁね、馬鹿らしいもの。 だって考えても見てよ。 魔王は心臓の力で生きながらえているのよ? パッチを探して復活の方法とか聞いてどうするってはなしよ? 見つかる前に復活したら終わりでしょ? だったら、命の根幹はわかってるんだからそいつをさっさと潰そうと思ったのよ もう部族戦争は終わったし、復興の必要はない…心臓がなくたって私たちはもうやっていけるぐらい回復した……だったら、そろそろお別れすべきなのよ」
淡々と語るエリシアに俺は一つうなずく。
「確かに理にかなったやり方だな」
それが達成可能か否かはまた別の話であったが、現に達成はこうも簡単になった……結果論ではあるが彼女が正しかったということだ。
「……ふふっありがとう。 そういってくれるのはあなただけよ……」
「エルフの里では、認められなかったということですか?」
「ええ。 だから一人で戦うことにしたのよ」
「そうだったのですか……」
簡単に言ってはいるが、その心のうちにある覚悟はどれほどのものか想像できないほど
彼女の信念は美しかった。
「すごいなぁ、お前は。 なんでそんな頑張れるんだよ」
国を抜け、一人で奔走し、こうして魔王のハートを手に入れた。
だというのに彼女は誇ることもせず、当たり前という様に屈託なく笑っている。
それが高潔と言わずに何と言おう。
「……言ったでしょう? 私はこの世界が好きなの。 生まれた世界だもの……その世界が壊されそうになってたら、誰だって頑張りたいと思うでしょう? 幸い、私にはそれが出来そうだったから、やることにしたのよ」
「……かっこいいなぁ」
不意に、岩陰から俺はそんな言葉を漏らす。
「え!?本当! えへへ、なんだかうれしいわね」
嬉しそうな声が浴場に響き、見ることはできないが俺はそんな彼女の球のように笑う姿を想像して口元を緩める。
そんな、格好いい彼女の英雄伝説の一ページに、俺は出演者として名を連ねたのだ。
エリシアとは反対に、心の高揚が止まらない。
これが俺の望んだ転生生活であり……彼女といれば俺は、日陰者だった過去から離れて、日の当たる場所で生きていられるのだろう。
「それでエリシアさん、次はどちらに向われる予定なんですか?」
そんなことを考えていると、ミユキがエリシアにそんなことを問いかける声が聞こえてくる。
「あぁ、そうよね。 当然その質問は飛んでくるわよね……私だって次に行きたいけど、少し困った問題があってね」
そんな浅はかなことを考えている俺に、エリシアは一つつぶやく。
「どうした?」
何かを言い淀むようなそんな言葉に、俺は一つ首を傾げてそう問うと。
「実は、魔王のハートのあるダンジョンの情報を、私はここの分しか持っていないのよ」
そんなことをエリシアは語った。
「そうなのか!?」
俺は驚き、岩陰から顔を出し……すぐに戻る。
「ごめん……。 でも、ついこの前まで戦争していた国同士で……他国の情報は殆どないのよ。 この鍵だけは偶然手に入れたけど……それ以外は、国を出てから地道に探していくしかなかったの」
「そうなんですか、てっきりエリシアさんは他のダンジョンの場所も把握しているのかと思っていました」
「本当は全部分かったうえで私だって出発したかったわよ……でもできなくて」
「そうか……まぁでも仕方ないな。 情報を一から調べるしかないってことだ」
「ええ。 ごめんなさいリューキ……だますみたいな形になって」
「ん?」
エリシアの謝罪に俺は首を傾げる。
「どういうことですか?」
「だって、貴方達との契約はダンジョンの攻略に付き合ってもらうことだったのに……そのダンジョンがまだ見つかっていないんだもの……ダンジョンを探すのは契約には入って」
「おいおいおいおいおいおい、ミユキ……エリシアさんが何か勘違いしているみたいだぞ?」
「これだからRPGに不慣れな人は困りますねぇリューキ様」
「ふえ?」
あまりにも場違いなことを言っているクライアントに対して、俺は一つ大きなため息をつくと、岩陰から姿を現してダンジョンについて語ってやる。
「いいか? ダンジョンってのはな! 異世界のフィールドを駆けずり回って、私が町長ですって名乗るやつから情報を聞き出して! たまに重要アイテムを殺してでも奪い取って! 騙されて、当てが外れて! やっと見つけたダンジョンを死に物狂いで攻略する! その行程すべてがダンジョン探索って奴なのさ」
「へ? そ、そうなの?」
「リューキ様と私の個人的な意見です、異なった意見や見方も当然あります。不思議なダンジョンや、世界樹の下とかにあったりする迷宮は違いますし」
「何なのよ」
エリシアはきょとんとした表情をしながらも冷静に突っ込みを入れるが大事なことはそこではない。
「つまりだな、せっかくこんな広い世界に放り出されたんだ! 冒険しなきゃもったいないだろう!」
「そういうものなの?」
「そういうものなの!」
そう言うことなのである!
「ええ! ですから何も気に病むことなんてありません! 私達は好きでエリシアさんに協力をするんですから! 細かいことなんてノープロブレムですよ!」
「そう言うことだ!」
ミユキの言葉に俺も賛同し、エリシアに対し笑みを浮かべる。
「……そう。 ありがとう……これからよろしくね。二人とも」
「ええ!」
「おう!」
その言葉に安堵したのか、エリシアは優しく微笑み。
「それはそうと……リューキ、アンタ意外に大きいのね」
そんな言葉を俺の下腹部よりさらに下を見てそうこぼし、死線を落とすとそこには巻いてあるはずのタオルはなく。
「はぅ!?」
「きゃー!? リューキ様のえっちー!」
「い、いやああああぁ!?」
俺の悲鳴と、ミユキの悲鳴がのどかな浴場に騒がしく響き渡り……こうして俺たちの最初の冒険は無事に終わりを迎えたのであった。




