#24 番外編1③ バラの本数
サリエル✕コーディ
コーディから想いを打ち明けられたサリエルは、ドライフラワーにしたバラの本数を数えた。この5年でもらったバラの本数は合計238本。しかしその年ごとにもらった本数は思い出せないでいた。
(21歳のときに3本、これは間違いないわ。22歳のときは10本だった?その次の年は20…??)
サリエルは花言葉について書かれた本と照らし合わせながら、何歳のときにバラを何本もらったか記憶を探る日々を送っていた。本数の特定には至らないが、本にはだいたいどの本数も『愛』について書かれているため、コーディが毎年、自分への想いをバラの本数に託していたことはわかった。
サリエルは、自身へ向けられるコーディの好意を意識するあまり、接し方がぎこちなくなってしまっている。特にこれまで自然にできていた挨拶のハグやキスは、今はする度に顔を赤らめているのだ。そんなサリエルの反応を見て、コーディは意識されていると実感し、嬉しく思うのだった。
『やっと、孤児院の子どもたちと同列でなくなった。』と。
徐々に唇へと近づいていった挨拶のキスは、コーディが24歳を迎えた日に重なり合った。
二人の気持ちがひとつになったと感じたコーディは、数ヶ月後のサリエルの誕生日を心待ちにしていた。今年こそ、サリエルへの想いを言葉にして伝えるのだと。
━━数週間後。コーディは、命の危機に瀕していた。
農機具を保管している倉庫の軒先に、オオスズメバチの巣があることに気づかずに近づき、その場にいた数人がハチの大群に襲われたのだ。コーディに至っては噴射された毒液が目に入り、失明する恐れがあると診断された。
激痛にもがき苦しむコーディを前に、サリエルは震える手で棚からアリーシャの作った薬を取り出し、刺された者たちへ分けるよう医者へ渡した。この薬は、アリーシャの披露宴へ参加するため王都へ行った際、クロエに勧められて購入したものだった。薬を買ってあげることが、一番の結婚祝いになるからと。それで、実用性がありそうな傷薬と解熱剤を選んだのだ。
傷薬は毒には効かないかもしれないと思いながらも、アリーシャの作った薬なら痛みを緩和してくれるのではないかと期待して、サリエルはコーディへ薬を塗った。そして…。目を包帯で覆われたコーディの姿に、激しい不安に襲われた。
(コーディの目が、このまま見えなくなったらどうしよう…。)
サリエルは、どうすればコーディの目を治せるか考えた。アリーシャの聖水ならば治せるはずだが、今から王都へ行って戻って来る間に容態が急変する可能性もある。一度に何ヶ所もハチに刺され、大量の毒が体内に入ったため、問題は目だけではなかったから。
サリエルは、一旦落ち着こうと椅子に座り、熱を持ったコーディの手を握り締めた。
冷静に考えると、王都へ行ったところでアリーシャの手元に聖水があるとは限らないのだ。アリーシャの特級聖水は、国王の依頼で作っているのだから。
(あの特級聖水"も"口外禁止だったわね…。)
"も"と思ったのは、聖女の秘めた力のことが頭に浮かんだからだった。
サリエルは指を組むと、神様へ祈りを捧げた。それは、数年ぶりの祈りだった。ファツマを助けられなかったあの日から、サリエルは神様へ祈るのをやめ、治癒魔法も使っていなかったから。
(何年もの間、神様へのお祈りをおろそかにしてしまって、申し訳ございません。お許しいただけるのであれば、私に、コーディを救う力をお貸しください。どうしても彼を助けたいのです!彼は、私の大切な人だから…。)
サリエルは唇をコーディの唇へ押しつけると、治癒魔法をかけるため自身の魔力を流し込んだ。コーディの体内を魔力で満たし、解毒と治癒を続けていると、コーディの意識が戻った。
「…サリエル??」
「コーディ!!大丈夫!?どこか、痛むところはない??」
「あぁ…。ハチに刺されたんだった…。ごめん。心配かけて…。」
焦った様子のサリエルの声を聞き、コーディは心配かけたことを謝った。
「謝らないでよ。バカね…。」
「バカって言うのは、ひどいだろ。それより、辺りが暗いようだけど、今何時なんだ?エリックは寝てるのか?」
サリエルは心臓を掴まれたように苦しくなった。窓からは強い西日が差し込んでいたため、包帯で覆われていても明るさを感じるはずだが、コーディの目は光を感知できていない。サリエルの治癒魔法では、目を治すことはできなかったのだ。
「エリックはお隣に泊めてもらうことにしたの。あなたには安静が必要だから。辺りが暗いのは、あなたの目が包帯で覆われているからよ…。邪魔だからって、取っちゃダメだからね。」
「そういや、ハチになにかをかけられたな。あのハチ、的確に目を狙ってきたんだよ。他のみんなは、大丈夫なのか?」
「みんな、同じような状態よ。でも、毒液が目に入ったコーディが一番重症なんだからね。」
その夜。コーディの目を、聖女の秘めた力を使って治すと決めたサリエルは行動に移した。
「なぁ、サリエル。エリックのいない夜なんて、はじめてじゃないか?」
「そうね。今夜は、二人きり。だから…。子どもをつくりましょう。」
「…な、なんて??」
「私、あなたの子どもが欲しいの。」
「今!?今、俺、目がこんなんなんだけど??」
サリエルは、聖女の秘めた力の発動条件を満たすため、アリーシャに聞いた通りに行動を起こした。そう、アリーシャに聞いた通りに…。
「今がいいの。むしろ、今じゃなきゃダメなの!手遅れになってしまうもの!!」
「今夜は、エリックがいないからか?いや、それにしても突然過ぎるだろう!?」
「…嫌なの??」
「嫌なわけないだろ!!そうじゃなくて…。俺は、サリエルの顔を見ながら触れたいんだよ。それに見えないから、うまくできないだろうし…。」
「うまくできなくても構わないわ。私が、なんとかするから。」
「なんとかするって…。まさか、経験があるのか!?」
「ないわよ!!だって、純潔を捧げなきゃ意味がないじゃない!?」
聖女の秘めた力を発動させなければと、頭がいっぱいいっぱいになっているサリエルは、混乱状態だった。コーディの方も、サリエルの突然の子作り宣言に困惑していた。
サリエルの表情も、考えも、思いも、真意もわからないが、それでもコーディは彼女に身を委ねた。そして、見えない状況故に他の感覚が研ぎ澄まされ、どこを触られても敏感に反応するのだった。
「ねぇ…?コーディも、私との子ども、欲しい??」
「ああ、欲しいよ。」
同意を得たサリエルは、安堵の表情を浮かべた。これで、発動条件をひとつ満たしたから。
サリエルの手つきや動きはぎこちないが、彼女の手や肌が触れる度にコーディは翻弄されていた。
そして。見えないストレスが頂点に達したコーディは、発狂しだした。
「あ"ー!サリエルの顔が見たい!今、どんな顔して俺に触れているんだ!?」
「や…、待って…。コーディ…、暴れないで?」
「神は、なんて仕打ちをするんだ!サリエルとの初夜をこの目に焼きつけられないなんて、残酷過ぎるだろ!!今すぐ、俺の目を治してくれよ!」
「そうよ、コーディ!そのまま、目が治るようにって祈り続けてね。そしたら、絶対見えるようになるから。」
(アリーシャが言っていた発動条件は、純潔を捧げること。治療する側と受ける側が、お互いに同じ想いでいること。それから…。あ、大変!大事なことを忘れていたわ。)
「神様。不実だったこれまでの私をお許しください。そしてどうか、私に癒やしの力をお与えください。コーディの目を癒やしたいのです。」
祈りが大事だと言う、アリーシャの教えに従って、サリエルは、神様へ祈りを捧げた。コーディの目の前で、口に出しているとは気づかずに…。
この祈りを聞いたコーディは、サリエルの言動が自分のためであると理解した。そして、これまでのサリエルの言動を思い返すのだった。
(サリエルは一見しっかりしてるように見えるけど、どこか抜けているんだよな。そういや、院長先生もそう言っていたな。)
コーディは5年前、ファーマー子爵領へ移り住む際、ジェームズからサリエルのことを頼まれていた。世話になるのは自分の方ではないかと聞き返すと、孤児院でのサリエルの様子を伝えられた。サリエルは、孤児院のみんなを本当の家族だと思っているが、迷惑をかけないようしっかりしなければと気を張り、甘え方を知らずに育ったのだと。しっかりしてそうで抜けているサリエルのことを、気にかけてやって欲しいと頼まれたのだった。
これまで抜けていると感じたことは多々あるが、それは初対面のときからだった。
教会で何を祈ったかを教えて欲しいと言われ、答えたところ、ブツブツ言い出したのだが、その声が大きめだったため、コーディの耳に入っていたのだ。
『ファツマを助けて…??妻を助けてじゃなくて??司祭様、聞き間違ったのかしら?司祭様って、意外とおっちょこちょいなのよね。まぁ、どちらにせよ意味は同じだから、別にそこは重要じゃないわね。』
それを聞いたコーディは、サリエルが司祭様と繋がりがあると知った。そして、司祭様からの指示で彼女が家を訪ねて来たのだと察した。助産師だと名乗ったサリエルが、本当は聖女だということも。
医師からは、ファツマもお腹の子も助からないと言われていた。特に胎児の方は生まれるにはまだ早いため、自力で生まれてくるのは不可能で、たとえ生まれたとしてもわずかな命だと。そう医師が断言したにもかかわらず、サリエルが、ファツマの腹に手を当てるとエリックは自力で生まれてきて、サリエルの手に包まれると顔色もよくなった。それを見たコーディは、子どもの方は助かったと確信した。そのため、ファツマとの別れに集中したのだ。最愛のコージーを亡くした悲しみに囚われたままの彼女には、生にしがみつく力はないと悟ったから。
だが、ファツマの死に、今度はサリエルが囚われていたのだ。彼女を助けられなかったと自分を責め、司祭様への怒りを口にする、そんなサリエルのひとり言をコーディは何度か耳にしていた。
(ファツマを助けられなかったのは、サリエルのせいじゃない。罪悪感に囚われている彼女を解放してやらないと。)
コーディは体を起こすと、包帯を取り、サリエルと向き合った。
「もう、コーディ!包帯、取っちゃダメって言ったじゃない!!…ねぇ?見える??」
サリエルは包帯を取ったコーディを叱ってから、恐る恐る目が見えるか尋ねた。
「…いいや、見えないな。」
「ごめんね…。」
サリエルは謝ると、コーディの首に腕を回し、しがみついた。
「なんでサリエルが謝るんだよ?ハチのせいなのに。そういや、ファツマのときも自分を責めてたよな。サリエルは悪くないのにさ。」
「それは…、そうなんだけど…。」
「ファツマが助からなかったのは、コージーの死を乗り越えられなかったからだ。エリックの存在だけじゃ、生きる力には足りなかった…。それを知られたくなくて、エリックにファツマのことを言えなかったんだ…。」
「そうだったのね。コーディが、ファツマさんの死を受け入れられないからだと思ってた…。」
自分の想いがまったく伝わっていなかったと再確認したコーディは、サリエルの腰を掴むと、自身の体にぐっと引き寄せた。
「あっ…。動いちゃダメ…。」
「あぁもうっ!!サリエルの顔が見たい!今、どんな顔してるんだ!?おいっ、神様!いるなら、早くこの目を治してくれよ!!拷問だろ、こんなの!」
「コーディ…。ごめんね…。私が、神様へのお祈りを怠っていたから…。」
(神様への祈り、か…。それも言っちゃダメなやつなんだろうな。さっきもうっかり、純潔を捧げるとか口を滑らせていたよな。つまり。この行為は、俺の目を治すためなんだな。)
コーディは意識を取り戻した際、ハチに刺された痛みがまったくないことに気づいた。あれ程の激痛が数時間で完全に消えるわけがないため、サリエルが力を使ったのだと考えた。エリックの命を助けたときのように。それなのに、痛みを取ってくれたサリエルは、目を治してやれない己の力のなさを嘆いている。
コーディはいたたまれない気持ちだった。自分がハチなんかにやられたせいで、サリエルが心を痛めているから。
「なぁ、サリエル。子どもが欲しいんだろ??なら、もっと頑張らないとな。」
「…が、頑張る??」
「ほら、こうやって。」
「やだ…、コーディ…。そんなに激しく…。待って…。ねぇ、コーディ。コーディ!!」
「あ"ぁぁっ!くそっ!なんで見えないんだよ!?サリエルがどんな顔して俺の名前を呼んでるのか見せてくれよ!!」
「もう!見えるようになったら見ればいいでしょう!?お願い神様。コーディの目を治してあげて。目が見えなくて錯乱してしまっているから。」
サリエルがコーディの名を呼べば、興奮したコーディが激しく動き、動かれるとサリエルが嬌声を上げ、その声に欲情したコーディが顔も見たいと発狂し、そして治せないことをサリエルが謝罪する。
二人の初夜は、それらの繰り返しだった。
朝の光を浴びて目を覚ましたコーディは、自身の腕の中で眠っているサリエルを見て、人生で一番満たされた朝を迎えた。
(サリエルの顔が見える…。それだけで、こんなにも幸せな気持ちになるんだな。)
コーディは、サリエルの顔に穴が開くほど凝視していた。視線を感じたのか、サリエルが目を覚ました。
「…コーディ??」
「おはよう、サリエル。」
「おはよう、コーディ。…ねぇ、もしかして。目が見えてるの?」
「ああ、見えてるよ。サリエルが、神様へ祈ってくれたおかげだな。ありがとう、サリエル。愛してるよ。」
「なっ…!!不意打ちは、心臓に悪いわ。」
照れるサリエルを見て、コーディはまた幸せを感じていた。
「照れるサリエル、かわいいな。」
「もう、コーディ!!からかわないでよ!?」
「からかってない。ところで、愛してるとか、かわいいって言ったくらいで照れてるけど、今自分がどんな格好してるのかわかってないのか??」
体を隠しているのが布団1枚だけだと気づいたサリエルは、布団をぎゅっと握り締めた。コーディはニヤッと笑うと、無駄な抵抗だと言わんばかりに布団をはぎ取った。
「目が見えるようになったら見ればいいって言ったのは、サリエルだからな?」
「言ったけど…。コーディは、顔が見たいって言ったじゃない!?」
「俺は、サリエルのすべてが見たい。さぁ、サリエル。子作りの続きをしよう!エリックが帰って来る前にな。」
しかしエリックが帰って来るのは、数日後のことになる。
サリエルは一度、エリックを迎えに行ったのだが、そこで、他のハチに刺された者たちがまだ動ける状態ではないと知り、慌てて家へと引き返した。
「だめよ、コーディ。まだ安静にしてなくちゃ!」
サリエルは、立ち歩いていたコーディをベッドへ寝かしつけた。
「はぁ…。アリーシャの薬のおかげで、他の人たちも腫れは引いたみたいだけど、まだベッドから起き上がれないなんて…。お医者様は、絶対に失明するとは言ってなかったわよね??でも、一番重症だったコーディの目が治り、もう治癒してると知られたら、不審に思われるわね…。ところで。治癒したのって、お祈りのおかげ??それとも、純潔の効果!?」
(あぁ、サリエル…。また、心の声を口に出してるぞ。けどそうか、他のみんなはまだ起き上がれないんだな。なら俺も、寝ていた方がいいよな。俺だけが早く治癒した理由を、探られる訳にはいかないからな。)
コーディは、他のケガ人が回復するまで出歩かないことにした。そしてサリエルに、お隣へ、もう少しエリックを預かっていて欲しいと頼んでもらったのだった。
エリックは、コーディの元気な姿を見たら、ケガが治ったと言いふらしてしまうだろうから。
それから数ヶ月後。
コーディは、サリエルの誕生日に108本の赤いバラを贈った。
「サリエル、俺と本当の家族になって欲しい。もちろん、エリックも一緒に。」
「…もしかして。このバラって108本??」
バラの本数ごとの花言葉を調べていたサリエルは、コーディからプロポーズされ、贈られたバラの本数を尋ねた。
「ああ、そうだよ。」
「それなら、去年は108本ではなかったということよね…。」
サリエルの大きなひとり言を聞いたコーディは、がっくりと肩を落とした。サリエルは結局、どの年に何本のバラをもらったのか特定できなかったのだ。
「はじめが3本。次の年が11本、その次が24本、99本、それで去年が101本だよ。意味はわかるよな?調べてたもんな。」
「…本当に、私でいいの?」
「サリエルじゃなきゃダメなんだ。というか、まだ俺の気持ち疑ってるのか??俺たち、子作りまでしたのに!?」
「ちょっと、コーディ!!エリックに聞かれたらどうするの!?」
サリエルは慌ててコーディの口を塞ぎ、エリックの部屋の方を確認した。
「別に聞かれてもいいだろ?エリックに弟か妹ができるって言ったら喜ぶと思うぞ。」
「そのことなんだけど…。私も、コーディとエリックと本当の家族になりたい。でも私たち、子どもを作らない方がいいと思うの。いつか真実を知ったとき、エリックが疎外感を抱くことのないように。」
「俺の子どもが欲しいって言っていたのに…。俺の気持ちをもてあそんだのか!?」
「違うわ!!私だって、あなたの子どもが欲しい。だけど私たちに子どもがいたら、エリックは血の繋がりを比べてしまうと思うの。だって、クロエがそうだもの…。」
サリエルは、クロエを見てきて、家族の在り方の複雑さを感じていた。クロエの家族は、父親の再婚をきっかけに歯車が噛み合わなくなったから。
「はじめから親がいないとわかっていた私たちと違って、私たちを親だと思ってくれているエリックが、本当の親のことを知ったらどれ程ショックを受けるか…。」
サリエルを引き留めるために、エリックへ、サリエルをママと呼ぶよう仕向けたコーディは耳が痛かった。
「あぁ、どうしたらいいの!?私たちが本当の親じゃないと知って心を閉ざしたエリックから、『他人』だって言われたら…。いやよ、エリック!お願いだからグレないで…。私の治癒力では、心は治せないのよ…。」
(おいおい。治癒力のことを口に出しちゃダメだろ!)
「サリエル、何を想像したんだよ?しかも、それって心の声だろ!?うっかり口に出てるぞ!」
「えっ、うそ??口に出ちゃってた!?」
「今の話、エリックに聞かれてたら質問攻めに合ってたからな。本当の親とか、他人とか、グレるとか、どういう意味なの?って。」
(治癒力のこともな。)
「その上、エリックがグレるなんて話を近所の人たちに聞かれたら大事になるぞ。ここの人たちは、領民はみんな家族だと思っていて、とんでもなく距離感が近いから。」
「そうね。でもそのおかげで、母乳に困ることはなかったのよね。当たり前のように、エリックに与えてくれたもの。こんな、いい人の集まりみたいな領地もあるのね。」
「いい人過ぎる人たちばかりで、ちょっと怖いくらいだけどな…。」
そんな、いい人たちに囲まれて育ったエリックもまた、この地に暮らす領民の気質の影響を受けているのだった。聖人一家が治める、博愛精神に満ち、同胞愛に根ざし、血縁を超えた絆で結ばれたファーマー子爵領の気質を━━。




