#22 番外編1① 本当の家族
番外編1① サリエル視点
私はへその緒がついたまま、カゴに入れられた状態で孤児院の門の前に捨てられていたらしい。
私が捨てられた孤児院は、街の外れにあるため人通りが少なく、すぐ裏には森がある。そんな人目につきにくい場所に捨てられた私は、天気が悪ければ、雪や雨に降られて低体温になっていたかもしれないし、野犬に襲われていたかもしれない。
だけど幸いなことにその夜は月が輝いていて、月明かりが私を照らしていたため、当時の孤児院の院長先生が見つけてくれたの。私の名前も、院長先生がつけてくれた。月の光を支配し、自らに浴びせ、"ここにいる"と訴えているように見えたことから、サリエルと。
うちの孤児院には孤児たちとともに、院長先生夫妻の子どもたちも一緒に暮らしていた。孤児院を訪れ、私たちの様子を見た人たちは口々に、『ここの孤児院は、本当の家族みたい。』だと言っていた。たけど…。そう言われる度に、『本当の家族ではない』と言われている気がしたわ。私にとって家族とは、この孤児院に暮らすみんなのことだから、わざわざ、『本当の家族みたい』と口にされる度に違和感を覚えたの。
院長先生の娘さんたちは結婚し、孤児院を出て行き、代わりに息子さんのお嫁さんが孤児院で暮らすようになった。このひとり息子のジェームズさんは、私より15歳年上で、兄であり、ときには父のような存在だった。そして、私の初恋の相手でもあるの。
私は教会へ引き取られるまでの間に、ジェームズさんの奥さんの出産に3度立ち会ったわ。この小さな命が誕生する瞬間は、何度経験しても心が震えた。
それで私は、本当の家族というものに憧れを抱くようになったのよ。
12歳のとき。私に聖女の力があるとわかり、教会へ引き取られた。教会では聖女の在り方や、聖力の扱い方について教わった。正しい使い方を身につけなければ魔力暴走を起こす恐れもあると聞いたため、真剣に魔力の制御に取り組んだわ。命に関わることだもの。
数年後。教会へ問題児が…、個性が強い聖女がやって来た。この子がやって来てから私は、聖女の力に真摯に向き合い続けたこれまでの日々の努力はなんだったのかと疑念を抱くようになったわ。
私より4つ年下のアリーシャは、教会内を走ったり、司祭様へ意見したり、見返りを求めたりと、この教会にはいないタイプの聖女だった。
(今思えば、こんな聖女らしからぬ聖女は、他の教会にも神殿にも絶対いないわね。)
私の疑念は、アリーシャが聖女のあるべき姿とかけ離れているからではなく、彼女の能力の高さや力の使い方にあった。だって同じように祈っても、得られる力が全然違うんだもの。
アリーシャは創薬の本や図鑑を見ずに薬草を手に取るだけで、どんな効能を持つか、どの薬草と組み合わせるといい効果が得られるかが、わかるらしいの。
司祭様は、アリーシャへ薬作りをするための研究室や薬の材料、調合棚を与えた。
(彼女の自室の散らかり具合を見かねてね。)
アリーシャの作った薬は教会に管理され、治療に訪れた人たちへ売られた。彼女の取り分はほとんどなかったけど、本人は、わずかな対価にも喜んでいたわ。
アリーシャは度々、規格外の高性能な薬を作り、その度に司祭様から注意を受けていた。
『いい薬を作ったのに叱られるなんて、理不尽じゃない!?』
アリーシャはみんなに同意を求めたけど、残念ながら同意する者はいなかったわ。だって、薬が規格外なのは本当だから。
それに本人たちは気づいてないけど、司祭様とアリーシャは似てるのよ。直感で言葉を発するところや、"こうだ"と思ったら意見を曲げないところ。それから、誰もいない場所へ向かって話しかけるところも!その様子は、見た者をぞっとさせたわ。神様と対話をしているんだって言い張る二人を、まわりの人たちはうまく受け流していた。
そんな司祭様とアリーシャのやり取りを、"おじいちゃんと孫"みたいだとみんな思っていたわ。
アリーシャが自室の他に部屋を与えられ、司祭様へ意見しても咎められなくとも、彼女を妬み、嫌悪する者はいなかった。彼女のおかげで、教会の生活水準が上がったからね。食事の質や寝具の質が上がったため、アリーシャは密かにみんなから感謝されていた。そう、密かにね。アリーシャへの感謝を大っぴらにしないのは、彼女は人使いが荒いから、そのせいよ。育てるのが難しい薬草を自分で育てると言い出し、みんなを巻き込み、温室や花壇へ薬草を植え、育てる手伝いをさせているの。それでその際、『祈りが足りない!!』とか、『ちゃんと祈って!!』とか無茶な要求をしてくるのよ。
『ちゃんと』なんて曖昧な指示で伝わるのは、司祭様くらいよ!!
そう思っていたのは私だけじゃなく、みんなもだった。
それから、魔力を暴発させたこともあったわね。それで研究室を聖域に変えちゃうだなんて、いまだに意味がわからないわ。
アリーシャから無茶振りされたり、驚愕させられたりしたみんなは、彼女への感謝の気持ちを言葉にしなかった。だからアリーシャは、みんなに感謝されていることを知らないのよ。
暴走しがちなアリーシャの面倒を見る役を押しつけられたのは、クロエだった。クロエはアリーシャより年下だけど、いつも彼女の尻拭いをしていたわ。アリーシャは、頼りになるクロエのこと、『お姉ちゃん』と呼んでは怒らせていた。一方、クロエの方も、わざとアリーシャの家族の話題を出し、嫌がらせしていた。
みんなはそんな二人の様子を、ケンカするほど仲がいいと捉えていたけど、二人のこのやり取りは思っている以上に根が深いの。
アリーシャにとって家族の話題を出されることと、クロエにとって姉と呼ばれることは、お互いに精神をすり減らすタブーなのよ。二人とも仲はいいのに、ことあるごとに互いの禁句を言い合って、心をえぐっているのよね。
そんな高度な友情、私には理解できないわ。
教会で暮らすようになって8年が過ぎ、20歳になったある日の夜。司祭様から、貧民街に暮らす妊婦の出産を手伝ってあげるようにと言われたの。しかも。教会から来たことも、聖女であることも伏せて、そして出産の手伝いを終えたあとは教会へ戻って来なくともいいと…。
確かに私は、ジェームズさんの奥さんの出産に立ち会ったことがあるけど、赤ちゃんを取り上げたことはない。そのことを司祭様へ伝えると、『これは、神のお導きなのだ。』という答えが返ってきた。司祭様の言葉足らずなところ、アリーシャと同じで意味がわからないわ。
それでも私は司祭様の神託に従い、8年暮らした教会を出る決意をした。私が行かなければ、妊婦さんと赤ちゃんの命に危険が及ぶかもしれないから。急遽、夜中に教会を出ることになったため、みんなにお別れも言えないまま、私は貧民街へ向かった。
司祭様から聞いた住所を訪ねると、そこは、とても家とは呼べない場所だった。出産の手伝いに来たと告げると、旦那さんは悲しそうな笑みを浮かべ、払うお金がないと言ったの…。お金のことはあとから考えるとして、とにかく妊婦さんの状態を確認させて欲しいと言うと、旦那さんは泣きそうな表情で中へ通してくれた。
こんな寒い冬に、窓ガラスは割れ、壁や屋根はところどころに穴が開き、すきま風が吹いている家で暮していたら、妊婦さんが体調を崩すのは当たり前だわ。
妊婦さんを診察した私は、司祭様へ対する憤りで震えていた。
(こんなにひどい状態だとは聞いてない…。)
旦那さんは、お医者様から治療できないと断わられ、教会で祈りを捧げたらしいの。私は、覚えている範囲で構わないから、その祈りの内容を教えて欲しいと頼んだ。旦那さんは首を傾げながらも、思い出してくれた。
『神様。いったい、俺たちがなにをしたというのですか?なぜ、次から次へとひどい仕打ちを与えるのです?多くは望みません…。どうか、ファツマとお腹の子をお助けください。』
この旦那さんの祈りを聞き、救いの手を差し伸べるべきだと司祭様の直感が働いたのだろう。
(だけど、司祭様…。私の力では、奥さんもお腹の子も助けられそうにありません…。)
お腹の大きさから見て、予定日はまだ先。予定日前に破水したことで子宮内感染が起こり、奥さんの体は今、高熱や全身への強い炎症反応、脈拍の異常な上昇がみられている。
「ファツマさん。お腹の子も頑張ってますよ。だから、あなたも頑張って産みましょう。」
不安を隠しながら声をかけると、ファツマさんは頷いてくれた。
お腹に魔力を流して出産を促し、なんとかお腹の子を取り上げた。けれど…。
(そんな…。産声を上げない。)
「頑張って。せっかく、生まれてきたんだから…。お願い神様、この子を助けてください。」
祈りを捧げながら治癒魔法をかけ続けていたら、弱々しいながらも産声が聞こえた。赤ちゃんを洗い、ファツマさんに抱かせ、初乳をあげるよう声をかけた。授乳しているファツマさんに治癒魔法をかけようとして、魔力切れを起こしていることに気づいた。私にはもう、治癒する力が残っていなかった。
(どうしよう…。教会へ戻って助けを求める??)
悩んでいるうちに、ファツマさんの心音はだんだん弱くなっていった。ダメ、間に合わないわ…。教会へ行って戻って来る前に、ファツマさんはきっと…。
(ごめんなさい…。私の力が足りなくて…。)
心の中で謝りながら、家族3人で過ごす時間を見守った。それはとても短く、そして最初で最後の一家団らんとなった。
「…ごめんなさい、コーディ。最期まで、迷惑かけて…。私、コーディにも、コージーにも、なにもお返しできなかった…。」
「最期とか言うなよ、ファツマ…。お前まで、俺を置いていなくならないでくれ…。」
「私の、ろくでもない人生の中で…、あなたたちに会えたことが、唯一の幸運だったわ…。コーディ…。ごめんね…。ありがとう…。」
「…ファツマ!?」
彼の悲痛な叫びが、私の胸に突き刺さる。私に、もっと力があれば…。そんな罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、私は冷静にやるべきことを考えていた。ファツマさんに抱かれている赤ちゃんを抱きかかえ、寒くないように何重にもタオルで包むと、憔悴しているコーディさんに声をかけた。母乳を分けてくれる人を探すため、私と赤ちゃんは街の外れにある孤児院へ先に行っているから、ファツマさんとのお別れがすんだら、赤ちゃんを迎えに来て欲しいと。コーディさんは頷いていたけど、私は心のどこかで彼は迎えに来ないのではないかと思っていたわ。だって。生まれてきた赤ちゃんを見ようとせず、ファツマさんのことしか考えられないように見えたから。
孤児院を訪ねると、現在の院長であるジェームズさんと奥さんが温かく迎え入れてくれた。そして街の人たちに声をかけ、母乳の問題を解決してくれたの。
(まぁ…。はじめは、抱いている赤ちゃんを、私の産んだ子だと勘違いしていたみたいだけど。)
ジェームズさんは孤児院の子どもたちに、私が孤児院に帰って来ていることを、誰にも言ってはいけないと念を押した。私が聖女だと知っている人がいた場合、治癒の力を求めて孤児院に人が押し寄せて来たら困るもの。街の人たちは、私が聖女だとは知らないはずだけど、万が一ということもあるからね。そのため私は孤児院の敷地内で過ごし、庭先で洗濯するのにも顔を隠すために被りものをしていたわ。
そして10日後、コーディさんが孤児院を訪ねた来た。赤ちゃんが迎えに来てもらえて、ホッとしたわ。私は捨てられたまま、迎えに来てもらえなかったから。
ジェームズさんは、憔悴しきったコーディさんを心配して、彼と赤ちゃんにしばらく孤児院で過ごすことを提案した。私も、孤児院への滞在を勧めたわ。今の状態の彼に、赤ちゃんを育てられるとは思えなかったから。
赤ちゃんはエリックと名づけられ、孤児院のみんなにかわいがられている。コーディさんも、ちびっこたちに毎日もみくちゃにされているわ。コーディさんが傷心中だろうと、ちびっこたちはお構いなしだからね。ジェームズさんも、ちびっこたちの行動をあえて止めていなかった。コーディさんの気がまぎれればと思ってのことだろう。ちょっと申し訳ない気持ちでちびっこたちの子守りをお願いしたら、意外にもコーディさんはちびっこたちの面倒をよく見てくれた。
(あっ!笑った。)
ちびっこたちの元気な笑い声につられてコーディさんが笑ったのを見て、私も自然と笑っていた。そのときコーディさんと目が合って、私は慌てて口元を隠したわ。ちびっこたちに振り回されている姿を見て、笑っていたのをごまかすためにね。
まさかこのとき、コーディさんが私の笑顔に心を奪われていたなんて夢にも思わなかったわ。
数週間後、ジェームズさんがコーディさんの働き口を見つけてくれた。とある領地で農夫を募集していて、家族で住める家も用意してくれるというの。
コーディさんはあまりの好条件に裏があるのではと疑っていたけど、貧民街で暮らしていたあの家はエリック君を育てるのに適していないため、農夫になる決意をした。
それからジェームズさんは、コーディさんが働いている間、エリック君の面倒を見てあげたらどうかと私に提案したの。戸惑っていたら、抱っこしていたエリック君が私の指をぎゅっと握ったの。それが、"一緒に来て"とお願いしているみたいに思えた。心が揺れた私は、今度はコーディさんの方へ目を向けた。コーディさんの目からも、"一緒に来て"と切実な訴えを感じ取った私は、ついて行くことにしたの。
こうして、私は二人と一緒に、農夫を募集しているファーマー子爵領へとやって来た。コーディさんが、新しい土地での暮らしに慣れるまでのつもりでね。
エリックは、何人もの人たちから母乳を分けてもらい、私はそのお礼にみなさんの子どもたちをあやしたり、寝かしつけたりしたわ。みんなからは、『あやし上手』と言われているけど、じつはこれ、聖女の力を使っているのよね。回復魔法をかけて、リラックス状態にしているの。
そういえば以前、魔力の細かい調整が苦手なアリーシャがクロエにかけたら、まる一日目を覚まさなかったなんてことがあったわね。
長い期間留まるつまりはなかったのに、コーディが農作業に慣れても、エリックがつかまり立ちができるようになっても、私は二人と一緒に暮らしていた。私たちは、いつからかお互いを敬称なしで呼び合うようになり、周囲から仲のいい家族だとうらやましがられているのだった。
(本当の家族じゃないのに…。)
本当の家族に憧れを抱く私は、憧れと現実の乖離に心が不安に支配されていった。
だからコーディへ、エリックが言葉を覚える前に二人のもとを去ると告げたの。そしたらコーディが、駄々をこねる子どもみたいに、『行かないでくれ!』って泣きながらしがみついてきての。それはファツマさんを亡くしてから気丈に振る舞っていたコーディが、はじめて見せた弱さだった。私が必要だと訴えるコーディを、私は突き放せなかったわ。
2つ年下のコーディと、その子どものエリックとの共同生活を送り続け、5年が過ぎたある日。ポーター子爵家の使者が、私を訪ねて来たの。クロエから預かった手紙を持ってね。
クロエが、ポーター子爵家と繋がりがあることや、私を探していることに驚くとともに、なにも告げずに教会を出て行った私の心配をしてくれていたことに、申し訳なさと嬉しさが込み上げた。
それから何度か手紙のやり取りをしていたら、アリーシャの結婚式に誘われたの。アリーシャを驚かせるために、本人には内緒でね。だけど、式場が教会だと知って、式への参列は見送ったわ。司祭様に会いたくなかったから。
(だって司祭様が、ファツマさんを助けるよう言わなければ、彼女を救えなかった罪悪感に苛まれることはなかったのよ。)
それで、披露宴にだけ参加すると返事をしたの。当日はポーター子爵家の馬車が迎えに来てくださり、子爵邸でクロエと5年ぶりの再会を果たしたわ。衣装も宝飾品も、メイクもすべて子爵家の方々が用意してくださり、私は披露宴会場であるアダルベルド伯爵邸でアリーシャと再会した。
クロエからの手紙で、あのアリーシャが結婚すると知ったときは、からかわれているんじゃないかと思ったのよね。だって、家族だからって分かり合えるとは限らないとか、家族の話をすると体が拒絶反応を起こして発疹が出るとか、終いには、『自分は家族とは血の繋がりがあるだけの他人なのよ!!』なんて謎なことを言っていた、あのアリーシャがよ?
そんなアリーシャが家族になりたいと思った相手との馴れ初めを聞いたら、あまりにも衝撃的な馴れ初めだったわ…。
そして。そこで私は、聖女の秘めた力について耳にしたの。
帰りの馬車の中でクロエに、アリーシャとの地雷の踏み合いについて聞いてみた。二人は5年経っても相変わらず、互いの傷を攻撃し合っていたから。
「だってアリーシャが、『お姉ちゃん』って呼ぶのをやめないんだもの!」
「クロエも、アリーシャの嫌がる家族の話をしているんだから、どっちもどっちじゃない?ところで、クロエはいまだに、『お姉ちゃん』と呼ばれると拒絶反応を起こすの??」
「ええ、やっぱりダメ…。何度もアリーシャに呼ばれたけど、耐性はつかなかったわ。どうしても、あの子の顔が浮かぶの…。」
「私は、血の繋がりのある家族に憧れを持っているけど、クロエもアリーシャも血の繋がりがあるからこそ苦悩しているのよね…。」
『あの子』とは、クロエの父親と継母との間に生まれた異母弟のこと。父親は継母に気を遣うあまり、クロエとの距離感がおかしくなり、継母はクロエと弟を同じように愛さなければと、思い詰めていた。家族の形に歪さを感じるようになったクロエは、その原因が自分にあると考えていたの。この家族の中で、自分は異物なんだと。そんなクロエを、弟は屈託のない笑顔で、『お姉ちゃん』と呼び続けた。自分がいなければ正常な家族になれると思い、家族と距離をとりたかったクロエは、『お姉ちゃん』と呼ばれる度に、無理やり"家族"という輪の中へ押し込まれる感覚に襲われた。そして。弟はなにも悪くないとわかっていても、その屈託のない笑顔に苛立ちを覚えてしまったの…。
クロエは家を出て10年近く経つ今も、『お姉ちゃん』と呼ばれと身体が拒絶反応を起こしている。歪な家族の形を思い出してしまうから。
ファーマー子爵領へ戻り、家の前まで来ると、"帰ってきた。"と心の中で思ったの。それで気づいたの。私にとって、ここが自分の家になっているのだと…。
「サリエルっ!!」
家に入ろうとしたら、中からコーディが飛び出してきて、私を力強く抱き締めた。
「コーディ??なにかあったの?」
「サリエルが、このまま帰って来ないんじゃないかって思ったんだ…。」
私はコーディの背中に腕を回した。
「ただいま。」
「おかえり。サリエル。」
以前私が、ここを去ると言ったときと同じように、震えながらしがみついているコーディを安心させるため、彼の背中をポンポンと叩いてなだめた。
(このままじゃいけないわよね…。)
私は、クロエとアリーシャに話を聞いてもらったことで、私たちのこれからについてコーディと話し合う決心がついたの。
エリックを寝かしつけてから、私とコーディはテーブルに向かい合った。
「私の夢はね、本当の家族を持つことなの。」
そう言った途端コーディは席を立ち、また、しがみついてきたわ。
(今回も、話し合いにならないかもしれない…。)




