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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第6章 繰り返された絶望と芽吹いた希望

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3話 ループの異変と山田さんたちに起きたこと

 毎回場所を変えて、私の前に現れていたお兄ちゃん。今回のループでは、私がマイクロバスに乗っていると思っていた時、よく外を見ていたから、私が見そうな場所に立っていたんだって。


 ただ、これは3回目で。いつもなら、やっぱり私はお兄ちゃんに気づかずに、そのまま研究所へ到着したと思わされ、そのまま研究を始めさせられるんだけど。ここでいつもと違うことが起きたんだ。


 私が、お兄ちゃんの方を見てきたって言うの。もちろん私にそんな記憶はない。というか、お兄ちゃんが立っていれば、すぐに分かるからね。でもお兄ちゃんは、私がしっかり見てきたって言うし……。


 私はマイクロバスの時を思い出す。お兄ちゃんを見た? 本当に? あの時は、お尻が痛いなと思いながら、山田さんの話を聞いて。その後は、静かになったマイクロバスの中、これからのことを考えたんだよね。それでお守りのおかげで心が落ち着いて。


 そういえばその後、霧の中に人影を見たっけ。それで、こんな森の奥に、何で人が立っているんだろうって、慌てて確認したけれど、結局よく分からないまま、見間違いってことにして。……って、ん? 人影? 


「お前、窓にへばりついて、俺のことを見てきただろう」


「……もしかして、あの誰だか分からなかった人影がお兄ちゃん?」


「そうだよ。あれは俺だったんだ」


「あれ、お兄ちゃんだったの!? 何だ、もっとしっかり見れてれば。あの時は、顔は見えなかったし、すぐに通り過ぎちゃったから、誰か確認できなくて。ここの研究所で働いている人かなと思いながら、結局見間違いってことにしたんだよ」


「あの時はドキッとしたよ。今までぜんぜん俺の方を見てこなかったお前が、急に俺を見てきたんだから。挙句、あんなへばり顔を見ることになったしな。まったく俺の気も知らないで」


「いや、そんなことが言われても。しょうがないじゃない、私は確認しようとしただけだよ」


「まぁ、その話は置いておいてだ」


「はぁ、お兄ちゃんが言ったくせに」


「花の蕾から、お前の変化だろう? それだけでかなりの出来事だったのに、変化はそれだけじゃ終わらなかったんだよ」


「私が花を見つけたこと?」


「もちろんそれもそうだ。だけど、今回は、本当にいろいろなことが起きたんだ。花のあと、お前、息吹君にも気付いただろう」


「木の側にいた息吹君?」


「ああ。いろいろと起こることに驚いていたら、息吹君までだろう。さすがに俺も、何がどうしたんだって、少しの間考えがまとまらなかったよ。まぁ、息吹君は、お前が気づいてくれたって大喜びだったけど」


「全部同じ日に……」


「ただ、それで終わらないのが今回だ」


「まだあるの?」


「言ったろう? いろいろあったって。いつもだったら課長の説明と案内を聞いた後、すぐに研究が始まるのに。お前は説明でも案内でも、いつもと違う行動をとって、その後はどんどん違和感に気づき始めたんだから、本当に驚いたぜ」


 どういうことかと思ったら、最初の所長の挨拶のノイズも、頭痛も、それを誰かに聞いたり相談したことも、全てが初めての出来事だったみたい。


 そしてそんな初めてのことは、次の日以降も続くことになったんだ。


 そう、私に起きていた、不思議な出来事や違和感の数々。あれも初めての出来事だったの。それにその全ての出来事が、私の死につながっているもので……。


 食堂での不思議な出来事だけど、私たちは幽霊で、本当にご飯を食べることなんてできないでしょう? あれはね、食べていると思わされていただけだったんだ。


 そう、実際には食べていなかったから、そこに違和感が生まれて、何を食べたのか分からなくなったみたい。

 味も同じ。本当は食べていないのに、分かるはずもなく。だからそれも、違和感として現れていたんだ。


 自分の部屋での出来事だってそう。私は幽霊なんだから、洗濯もお風呂も関係ないでしょう? 部屋の片付けやキッチンの片付けだってね。

 だから、本当は何もしていないのに、自分ではしていると思っていて、それが違和感として現れたの。


 他の違和感も同じ感じ。お兄ちゃんは、いつもと違う私の様子に、最初は本当に驚いたみたい。でもこれで、私が本当のことを思い出すかもしれないって期待もしたって。


 それはそうだよね。私はループしていた時の記憶はないけれど、お兄ちゃんと息吹君は、ずっと2人で、この状況をどうにかしようと、頑張ってくれていたんだから。これだけ変化が起きたら、そうも思うよね。


 ただ、それで終わらないのが今回のループだった。変化が起きたのは私だったけれど、私がこの研究所や所長たちに疑問を持って、それに合わせて動いたせいで、他の人にも変化が起きたんだ。


 それが山田さんに川島さんに、神谷のおばちゃんに宮本さん、私と関係が深かった人たちだった。


 山田さんたちも以前のループなら、ただ研究をするだけで、他の動きはしていなかったの。でも、私がお兄ちゃんたちに気づいたからなのか、他の人たちも息吹君やお兄ちゃんの存在に気づき始めて。それが最初の幽霊騒動に繋がり、山田さんはそれを調べることになったんだ。


 山田さんのことを、お兄ちゃんは止めようとしたみたい。余計なことをすれば、取り込まれる可能性があったから。でも……。


 夜中に、息吹君の幽霊を探してフラついていた山田さんは、所長が誰かを取り込むところを見てしまったの。そしてその衝撃で、全部の記憶を思い出すことになって。それからはずっと、所長に狙われていたみたい。


 そして、本当の自分のことと、所長に狙われたことで、山田さんは一気に衰弱し。休憩室にいた私たちの前に現れたんだ。


 でも実は、山田さんが、所長が人を取り込む場面を見てしまったのは、あいつが仕組んだことだったの。


 息吹君や他のことを調べ始めた山田さんのことを、邪魔に思っていた所長。どうも、ループにはかなりの力を使うらしく、自分の力にする以外に、ループをさせるために、時々他の人を取り込んでいたんだ。


 そんな、かなり力を使わないといけないのに、山田さんのせいで、みんなが一斉に真実に気づいてしまったら? また全員の記憶を変えて、ループし直さないといけない。そう、全員だからね。


 私たちにとっては、逃げるチャンスだから良いことだけれど。所長にとっては、記憶を変えるにもループさせるにも力が足りず、その間に私たちが逃げてしまったら、そんな最悪なことはないでしょう?


 そして、そんな最悪の事態を避けるために、邪魔者は取り込んでしまえばいいと思うのも、当たり前のことで。


 それから、どうも相手を怖がらせ、相手が恐怖を抱くほど、取り込んだ時の力が強くなるみたいで。だから所長は、山田さんを怖がらせた上で取り込んだの。


 ただそれでも山田さんは、最後までなんとか意識を保っていたみたい。そして私たちに本当のことを伝えようとした結果が、山田さんのあの暗い文字だらけの部屋だったんだ。

 少しでも所長から逃げたくて、部屋中に紙を貼り所長の侵入を防ごうとしながら、私たちの真実を伝える。


 そうして山田さんは、あのたくさんの言葉を残したところで所長に……。


 川島さんも同じで、山田さんのことを調べ始めて、真実に気づきそうになり。それならばついてに川島さんも取り込んでしまえと、散々怖がらせたあと。外へと出て行ってしまった川島さんを取り込んだんだ。


 ただ、神谷のおばちゃんの時は、ちょっと事情が違ったみたい。私がしっかりと、花を気にするようになると、それまでやっぱり花に気づいていなかったか他の人たちも、続々と花に気づき始め。

 そして息吹君が力を溜めれば溜めるほど、息吹君とお兄ちゃんの力も強くなっていったんだって。


 するとさすがに、それに所長も気づいたようで。何か余計なことが起こる前に、私を無理やり取り込み、花を消そうとしてきたみたい。

 でも、お兄ちゃんたちの力が強くなったから、私と花をしっかりと守ることができて、所長には手出しさせなかったんだ。


 そんな中、神谷のおばちゃんと私が、花の前で話していた時のこと。おばちゃんはご飯を作りに行こうと立ち上がろうとして、蕾に指が触れたでしょう? そしてその瞬間、私は何か変な感じがして。


 その後の神谷のおばちゃんの様子は、明らかにおかしかったじゃない? 慌てて建物に入っていっちゃったし。


 あの時ね、それがなぜ起きたかは分からないけれど。でも、神谷のおばちゃんは蕾に触れたことで、一瞬で記憶を思い出したらしいんだ。その瞬間が、私が異変を感じた時で。


 こうして真実を思い出した神谷のおばちゃん、でも、自分が死んでいると認めることができず、この研究所から逃げようとしたんだ。でもそれを所長が許すわけもなく、山田さんたち同様、所長はおばちゃんも取り込むことにして。


 その取り込まれる瞬間を、私は見てしまったんだ。


 暗闇に引っ張られ、消えてしまった神谷のおばちゃん。そうそう、あの時、山田さんに神谷さん、それから他の人たちがいたでしょう? 


 あの人たちはみんな、所長に取り込まれた人たちで。取り込まれたことによって、自分が誰だか分からない状態になり、所長に操られ、おばちゃんを取り込む手伝いをさせられていたんだって。


 そして息吹君は、なぜか私を睨んでいたし。


「あの時、何で私、伊吹君に睨まれたんだろう。他の時も結構睨まれたんだよね」


「それはお前の後ろに、あいつがいたからだ。お前が怖がる様子を見て、笑っていたんだよ。次は絶対にお前を取り込むってな。そんなあいつに息吹君は、お前をいじめるな、あっちにいけと睨んでいたんだ。別にお前を睨んだわけじゃない」


「え? 私の後ろに所長がいたの!?」


「ああ。他の、お前が夢だと思っているやつもそうだ。あれは夢じゃなく、お前の意識に息吹君が直接語りかけていたんだよ。それでその時も、所長がお前の周りをフラフラしていてな。それで息吹君はやっぱりあいつを睨んでいたんだ」


「……そうか、あれは夢じゃなく、睨まれていたのは私じゃなかったのか。てっきり私だと思っていたから、何で睨むんだろうって、怖がっちゃったよ。悪いことしちゃったな」


「仕方ないさ。お前に気づかれないように、所長も動いていたからな。ただ、神谷さんの後は、ちょっと大変だったよ」


 私が落ち込んで、怖がるようになって、私の持っている力が弱くなったんだって。そんな状態の私は、所長の格好の獲物だからね。

 お兄ちゃんは、今まで以上に気をつけて私を守らなくちゃいけなくなってしまい、前みたいに、また他のことに力を使えなくなってしまったの。


 それに、花にも変化が起きて。私の弱っていく力に比例するように、花に溜めた力も弱まっちゃったらしいんだ。それに光もね。


 でもそれを、なんとか止めてくれたのが息吹君だった。息吹君は私が元気になると信じて、変わらずに力を溜め続けてくれてね。そして、弱っていた花の蕾を回復させ、蕾も大きく成長させてくれたの。


 それが、私が蕾が大きくなったと気づいた時で。そして私はその蕾を見て、自信を取り戻すことができたんだよ。


 ここまで話を聞いた限り、私がどれくらい、特別な力を持っているか分からないけれど、息吹君の方が私よりも強そうだよね?


「もちろん、お前が立ち直ってくれるって、俺も信じてたさ。そして、お前が自信を取り戻してからは、全てが良い方向に進み始めた」


 私が元気になって、さらに自信を持つようになると、またそれに比例して、花の力も強くなり始めて。それからお兄ちゃんも息吹君も、力がどんどん強くなっていったんだ。


 さっきお兄ちゃんに聞いた、私が夢だと思っていた、息吹君が私の意識に話しかけてくれてたあれ。あれも力が強くなったから、直接私に話しかけることができるようになったの。


 ちなみにあの時、息吹君はフラフラしていた所長を睨んでいたけれど、お兄ちゃんもそこにいて、所長を止めてくれていたんだって。あの時振り返っていれば、もう少し早くお兄ちゃんに会えていたかも。


 そうして息吹君に導かれた私は、所長の記憶の中の立ち入り禁止の部屋で、たくさんの違和感を見つけ。最終的に真実を思い出すことができたんだ。

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