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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第6章 繰り返された絶望と芽吹いた希望

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2話 私の力と花を生み出した息吹君

「俺も息吹君も、お前が誰よりも大切だったからな。息吹君、息吹君と俺が、初めて会った時の話を、瞳にしても良いかな? 瞳のことが大好きって話してくれたあの話だ」


「お姉ちゃんが大好きな話!! うん、良いよ!! あ、ちゃんと全部お話ししてね。この前お兄ちゃん、練習の時間違えたもん。お話しの間、僕はパパがビシバシしてこないように見てるから」


「ハハハッ、分かってるよ、ちゃんと話す。でも、お父さんの方は、危ないと思ったらすぐ言うんだぞ。まぁ、俺たちの話が終わるまでは、動けないだろうけどな」


 息吹君は花の方へ移動すると花の隣に座って、周りを見張るようにしっかりした顔つきになったよ。


「ビシバシ? 私を大好きな話?」


「ビシバシは、あいつの攻撃のことだよ。いま、あいつは怒りまくってるからな。まぁ、今は俺と息吹君で止めているから問題はない。が、さっさと話してしまおう」


 お兄ちゃんと息吹君が初めて話したのは、所長が3度目のループをした時だった。


 この頃お兄ちゃんはようやく、本当に少しの時間だったけれど、私を守りながら動けるようになったみたい。


 それまでお兄ちゃんは、いや、今もだけど。私が所長に取り込まれないように、ずっと守ってくれていたでしょう?

 ただ、さっきの話。所長の力が強すぎて、私を守るだけに力を使っていたから、それまではずっと私から離れられずにいて。


 でも3回目のループの時に、少しずつ溜めていた力のおかげで、お兄ちゃんは動けるようになって。それで、ずっと会おうと思っていた息吹君に、所長の目を盗んで会いに行ったんだ。

 

 ここで疑問に思ったのは、何で最初に会いに行ったのが、私でも他の誰でもなく、私たちみたいに、ループさせられていた息吹君だったかってこと。


 だって、みんな同じことになっているんだから、最初に私に話しかけてくれても良かったでしょう? そうしたら私が記憶を思い出して、お兄ちゃんが所長の相手をするための、何か手伝いをできたかもしれないじゃない。


 それなのに、じゃあ何でお兄ちゃんは、わざわざ息吹君に会いに行ったのか。それは……。


 どうも、完璧に良いように使われていたのは、私たちだけだったみたいで。所長は息吹君に、私たちとは違う行動をさせていたんだよ。


 息吹君は、美咲さんが守ってくれたおかげで、最初の段階では記憶を変えられずに済んだらしいの。あの、美咲さんが消されてしまった時ね。

 それでそのあと所長は息吹君を連れて行き、本当のことを話したうえで記憶を変え、それまで通り、実験対象にしようとしたみたい。


 だけどここで所長は、あることに気づいたんだ。息吹君はかなりの力の持ち主だっていうことにね。


 実は息吹君、お兄ちゃんよりも強い特別な力の持ち主だったの。まぁ、それでもやっぱり、所長には敵わないみたいだけれど。所長はね、この息吹君の力に目を付けたんだ。


 いくら息吹君の記憶を変えループさせたところで、息吹君はもう亡くなっているから、息吹君の新しい血液や細胞は採取できないでしょう? それに研究の方も、私たちの研究の記憶を使い、私たちに研究を続けさせようとしていたし。


 そうなると、息吹君をループさせる意味はなくて。なら、息吹君をループさせるよりも、息吹君の強い力を自分のものにしてしまえばいいと、所長は考えてね。一旦は息吹君を取り込もうとしたらしいんだ。


 でも、ここで所長の名誉と研究への執着心が勝ったというか。ここにはかなりの幽霊がいて、所長がみんなを操っていたけれど、それが完璧とはいかず。ほら、記憶を取り戻す人がいたわけだし。


 なら、息吹君を取り込むよりも、他の幽霊を見張らせたり、何かあれば対処させたり、おかしな動きをしている人がいれば報告させた方が、より効率よく研究を進められるのではと考え直し。

 私を、自分の体の中に入れて苦しめてやるぞ、と息吹君を脅し。息吹君の記憶には何もせずに、そのまま息吹君を、所長のために働かせたの。


 お兄ちゃんはもちろん、そんな状況の息吹君に気づいていて。操られている私たちじゃなく、今の状態をしっかりと認識できている息吹君に、これからのことを話そうと、会いに行ったんだ。そう、所長を止めるにはどうすれば良いのかの話をね。


「ちょっと待って。何で所長は私を息吹君の脅しに使ったの?」


「そうだな。まずは息吹君の話をしてしまおう。さっき本人の許可も得たしな。……息吹君な、瞳のことが大好きだったんだよ」


 息吹君がお兄ちゃんに、話してくれたこと。それは、私のことが大好きという話だった。


 ここへ来る前の息吹君の傍には、研究に没頭する大人たちしかいなくて。誰も遊んでくれないし、話もほとんどしてくれなかったから、ずっと寂しくてつまらないって、思っていたんだって。


 でも、私が来てからは、私が毎日遊んでくれたし。前は、ダメだって言われてばかりだったのに、元気な時は、私が目黒先生に頼んで、外にも行かせてもらえるようになった。

 他にも、一緒にご飯を食べたり、余計なことをして一緒に怒られたり。それがとっても嬉しくて、私とずっと一緒にいたいと、私のことを好きになってくれたみたい。


 だから息吹君は、お兄ちゃんと話をする前から、大切なお友達をいじめるパパから守らなくちゃと、私をずっと守ってくれていて。

 そして所長は、息吹君の気持ちを分かっていて、私を脅しに使ったんだ。息吹君ならそれで従うと分かっていたから。


 私はお兄ちゃんと息吹君、2人に守られていたんだよ。


「ママに次に大好き!! って、それはものすごく良い笑顔で言ってたぞ」


「そっか、息吹君が……。さすがに美咲さんには負けたか」


「お前、それはそうだろう。母親には勝てないさ」


「だよね」


「まぁ、奴がお前を狙っていたのは、脅しじゃなく、本当だったんだけどな」


「え? 脅しじゃない?」


「奴は、お前の力も狙っていたんだよ。それで俺は始め、お前を守ることに徹底するしかなかった。だから息吹君には、かなり無理をさせてしまったし、大きな負担を強いてしまった。本当にあの子には感謝しかない」


「どういうこと」


「いいか。お前が真実に気づいたことは、大きな前進だ。だけど、周りを見てみろ。この全てを覆う暗闇と嵐は、やつが俺たちが邪魔したことに怒り、そしてまた時間を戻そうと躍起になっているからだ。そう、真実に気付いたところで、まだ終わりじゃないんだ。ここからは、俺と息吹君、そして瞳。俺たち3人で、奴を消すか封印をする」


「3人で?」


「瞳、お前は俺や息吹君よりも、さらに強い特別な力を持っているんだ」


「え?」


 まさかのまさかだった。私にお兄ちゃんたちと同じ、特別な力があったなんて。しかも2人よりも私の方が力が強いだなんて。私は自分のことなのに、何も感じないんだけど。でも、それは確からしく、だから所長は、私のことをいつも狙っていたんだって。


 でも、お兄ちゃんが徹底的に私を守ってくれたことで、それは達成されず。所長はかなりイラついていたみたい。


 そしてお兄ちゃんが私を守っていることで、他のことを全て引き受けてくれたのが息吹君だった。


 ほら、お兄ちゃんは3回目のループの時に、少し力を溜めることができて、息吹君に会いに行くことができたでしょう?

 

 その力を溜めるのを、お兄ちゃんの代わりに、息吹君がやってくれるようになったんだ。


 少しずつ少しずつ、本当に少しずつ。その溜まった力によって、いつか私が本当のことに気づけるように。そして気づいた後は、みんなで所長を消すか封印できるよに。所長に脅される中、自分も取り込まれてしまうかもしれないのに、ずっと力を溜めてくれたの。


 そんな大変なことまで、してくれていたなんて。


 そして、息吹君が力を溜め始めて、何回目かのループの時だった。お兄ちゃんも予想していなかったことが起こったんだ。集めていた力が、突然変化したの。


 息吹君が所長の目を盗んで、中庭で力を集めている時。息吹君は、私とまた話したいなぁ、遊びたいなぁって思いながら、力を溜めてくれていたみたいなんだけど。そうしたら突然、ようやく溜まった力が一点に集まり始めて……。

 

 そして、私がこの研究所での1番の親友だと思っていた、あの花に変化したんだ。


「あの花が……」


 まさか蕾のままの私の親友が、息吹君の力によって生み出された物だったなんて。


「俺もまさか、あんな変化が起こるなんて、まったく思ってもいなかったよ。だけど、その花が、息吹君と瞳の思い出なのは知っていたし、もしかしたらそれを見たら瞳が思い出してくれるかと思って期待したんだ。でもな……」


 何度目の私も、中庭に出て花の前にいるのに、まるでそこには何もないかのように、まったく気づかなかったって。


 そしてそれは、所長もだったみたい。もしかしたら息吹君が無意識に力を使い、所長に見えなくする何かをしていたか。それとも、特別な力を持っている息吹君が作ったものだから、悪霊の所長には見えなかったか。

 あとは、真実を知っているお兄ちゃんと息吹君だけに見えたとかね。ほら、所長は自分の名誉と研究しか考えていないから。


 ただ、理由は分からないけれど、でもわざわざ花に変化したんだから、何か意味はあるはずだと。お兄ちゃんは息吹君に、引き続き花に力を溜めるように言い。それからは私と花、どちらも守るようになったんだ。


「それからは、何も変化がないまま、俺たちもお前を守ることしかできないまま、時間だけが過ぎていったよ」


「そうなんだ……。お兄ちゃん、私を守ってくれてありがとう。後で息吹君にも、お礼を言わなくちゃ。ただ、うーん。お兄ちゃんの話だと、私は花にまったく気づかなかったんでしょう? 目の前にいてもね」


「ああ」


「じゃあ何で急に、私は花に気づいたんだろう」


「実はな、今回のループでは、いつものループとは違うことが起きたんだ」


 今回のループでは、最初の変化は、息吹君の作った花だった。


 何度ループしても、その花だけはずっとその場に咲き続け。そして少しずつ少しずつ、本当に少しずつ育っていた息吹君の作り出した花。


 今回もループした直後、いつものように息吹君はその花に力を溜め。お兄ちゃんはその様子を見ながら、所長をどうにかする方法を考えていて。


 でも、その時だった。今まで少しの変化しか見せなかった花が、ほんのりと淡く輝いたと思うと、気づけば小さな蕾が1つできていたんだ。しかも蕾ができた後も、花は輝き続けていて。


 お兄ちゃんは息吹君が何かしたと思って、所長が関わってくる前に、急いで息吹君にはなしを聞くことに。


 最悪の世界で、唯一輝ける希望のような存在に見えた花。もしかしたらこれだけ綺麗な花を育てられるんだから、その力が今の行き詰まった状況を、突破できる鍵になるかもと思ったんだって。


「ただな、何か特別なことをしたのかと思ったら、お前を思って力を溜めたって言うんだよ。いつもよりもいっぱいお前のことを思ったって」


 前回のループの時、私は所長に取り込まれそうになったみたいなの。それから力を使って、私を苦しめようとしたみたいで。


 だから息吹君は……。大好きな私を守る力を、いっぱい溜めたいです。自分も所長に負けないように頑張るから、いっぱい力を溜めて、悪いパパを止めるお手伝いお願いします、ってお願いしながら、力を溜めてくれたらしいの。


 そうしたら、体が暖かくなった感じがして、それから蕾ができていたんだって。


 そんな話しを息吹君から聞いたお兄ちゃん。結局、花が成長した、はっきりとした理由は分からず。


 息吹君は、お兄ちゃんよりも強い力を持っているから、息吹君の思いに力が反応して、やつをどうにかできるように、花を成長させたんじゃないか。

 それか、今まで力を溜めてきていて、それがようやく一定量溜まり、成長したんじゃないか。


 と、いろいろ考えているうちに、私の方の時間が動き始めたんだ。それで考えるのは一旦やめて、いつも通り動き始めたお兄ちゃんと息吹君。


 お兄ちゃんは、私に自分達に気づいてもらった方が、記憶を思い出すかもしれないと考え。所長に隙をついて、2人は時々私の前に現れてくれていたらしいの。でも、それにも気づかなかった私。


 ただ、今回のループでは……。


「お前、マイクロバスに乗っていた時、俺の方を見てきていただろう?」


「え?」

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