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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第6章 繰り返された絶望と芽吹いた希望

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1話 巻き戻される時間と囚われた魂

「あれ……、あの爆発事故だね」


「ああ。そしてあの爆発事故から、今回の悪夢のような出来事が始まってしまったんだ。瞳はさっき息吹君に、爆発の時の様子を見せてもらっただろう?」


「うん」


「その時、なぜかみんな、所長のところに集まっていなかったか? そして瞳は、爆発のことは思い出したけれど、なぜ自分があいつのところへ集まったのか、その理由は分からない」


「そう! それが分からないんだよ」


 息吹君に見せてもらって、思い出した私の真実。でも、まだ分からないことはたくさんあった。


 今、お兄ちゃんに言われたこともそうだし。所長のところに集まったあと、何故か私は、マイクロバスから降りてきていたよね? その辺の状況が、まだいまいち分からないんだ。それに、何で私たちは、何の疑問も持たずに、普通に研究を続けてこられていたの?


「それは、悪霊となったあいつによって、瞳たちが操られてしまったからなんだ」


「悪霊? 所長が?」


「もっと悪いパパだよ」


 そういえば息吹君、悪いパパがもっと悪いパパになったって言ってたな。もっと悪いパパ……。


「そうか、息吹君の言っていた、もっと悪いパパっていうのは、悪霊になった所長のことだったのか。息吹君や美咲さんにあんな態度をとって、私たちに対してもひどかった所長が、悪霊になって、さらにたちの悪い存在になった」


「息吹君に説明するのに、もっと悪いパパも方が、説明しやすかったんだよ。急に悪霊って言っても、息吹君は分からない可能性があったからな」


「お兄ちゃんが教えたんだね。確かにもっと悪いパパの方が分かりやすいかも。でも……、そうか、所長が悪霊か。うーん」


 それって、所長が私たちに対してあんな感じだったから、それが災いして、悪霊になっちゃったとか? 


 それともお爺さんの話していたような、理由は分からないけれど、最初から特別な力を持った霊になる人がいるように。悪霊の方でも、最初から悪霊になってしまう人がいて、それが所長だったとか。


 後は、悪霊になる素質があったとかかな? 悪霊になる素質? ……ん?


「あいつの場合は、素質があったっていうのが、1番しっくりくるか? まぁ、なるべくしてなったとも言えるけど。今回は、悪霊になった理由がほぼ分かっているんだよ」


「そうなの?」


「ああ、あいつは死んだ瞬間から、悪霊としてこちらの世界に現れた。自分の名声と研究へかなりの執着を持って」


「名声と執着……」


 所長は自分が死んだと、しっかり理解していたみたい。


 でも、そんなことはどうでもよくて。これから得られるはずだった名誉の数々を手放したくないという思いと、研究を続けたいという欲の方が、死よりも勝っていてね。

 これからは自分が皆を操り、より良い研究ができると考えていたらしく。そういった歪んだ思いが、所長を悪霊へと変えてしまったらしいんだ。


 そうして悪霊となった所長は……。


「力を使って、瞳や他の人たちの逃げ場を封じたんだ。防火シャッターが正常に作動しなかったのも、非常出口が使えなかったのも、奴の力によるものだ」


「息吹君の病室の、ガラスが割れなかったのも?」


「ああ。……あの時俺は、なんとかお前たちを逃がそうとしたんだ。だけど、奴の力が強すぎて、対処することができなかった。」


 お爺さんによると、悪霊になったばかりだと、まだ自分の力を理解していなくて、上手く力が使えないらしいの。だからお兄ちゃんは、所長が力を使えないうちに、私たちを助けてくれようとしたんだけど。


 でも所長は悪霊になった途端、すぐに自分の力を理解し使い始め。私たちを研究所へ閉じ込めると、その後も力を使い続けたんだって。

 悪霊たち嫌う、特別な力を使え、お爺さんによる地獄の訓練をしたお兄ちゃんよりも強い力を使ってね。


「訓練が終わりに近づいた頃、悪霊がどういう存在か見ておいた方が良いって、お爺さんに言われてな。それで何度か、隠れて悪霊を見に行ったことがあるんだ。だから悪霊の危険性は、きちんと分かっているつもりだったんだけど。まさか俺が見た悪霊の、何十倍も強い力を持っているとは思わなかったよ」


「何十倍!?」


「ああ」


「所長はそんなに……」


 お兄ちゃんがどれだけ力を使えるのか、私には分からないけれど、お爺さんの地獄の訓練に耐え抜いた兄ちゃんが敵わないなんて。


「だけど、奴が俺より強いからといって、好き勝手させるわけにはいかなかったからな。どうにかしようと動いていたんだ。だけどその間に、奴は次の行動を起こしてしまった。それが瞳たちが爆発と火事で死んだ後の出来事だ」


「死んだ後……。あの、みんなが所長の周りに集まったやつね。あのねお兄ちゃん、あれで私、不思議に思っていることがあるんだけど……」


 ここで私は、疑問に思っていることをお兄ちゃんに聞いてみた。あの、所長のところに集まった後、爆発と火事でボロボロの研究所が元通りに戻り、そして外へ出てみれば、私たちがマイクロバスから降りてきたことについてね。


「息吹君は初めから、いろいろな場面を見せてくれていたでしょう? だからもしかしたら、その場面が混ざってしまって、マイクロバスから降りてくる私を見たのかなとも思ったの。ただ、研究所が元通りになったのは、火事の時間が巻き戻る感じで綺麗になったから、間違えじゃないと思うし」


「それだ。それが奴がやった次の行動だ。言っただろう? 奴は自分の名声と研究に執着してたって。奴はまず全員を操り、そのあと記憶をも操り、生きていると思わせたんだ」


 所長の元に集まった時、私たちはすでに全員、所長に操られていたんだって。そして所長は私たちに幻覚を見せて、普通にまだここで研究しているように見せかけて、私たちに研究を継続させたらしいの。


 私たちがマイクロバスから降りてきたのは、最後にこの研究所へ来た人間だったからだ。みんなの元々の記憶も使いながら、所長が操っていると気づかれないように、そして自分たちが死んでいると悟らせないように。これまでの流れを再現して、さらに研究を続けさせたの。


 こうして私たちは、所長の作り出した世界で、ずっと働くことになってしまったんだ。ただ……。所長がやったのはこれだけじゃなかった。


「奴は研究が行き詰まると、全てをリセットして爆発前まで時間を戻し、また同じ研究を瞳たちにさせたんだ。そう、何度も何度も、お前たちの時間をループさせたんだ」


 所長に操られてから初めての研究のとき、死ぬ前と同じところで研究が止まってしまったんだって。そして、その影響かは分からないけれど、記憶を取り戻した人もいてね。


 そこで所長は、その人が真実に気づいて邪魔だったのと、私たちを操るには力が必要だと、その人を自分の中に取り込んだの。

 そしてその後は、私たちにまた研究をさせるため、私たちが来た時まで時間を巻き戻し、そこからまた、研究を再開させたんだ。


「そうして奴は研究が立ち止まると、時間を巻き戻すという行為を、もう何度となく繰り返してきたんだ。今回で10回目だったか。まぁ、人を取り込むのは毎回じゃなかったけどな。本当に所長にとって邪魔な人が、取り込まれたって感じだ。奴も、全員を取り込んでは研究ができなくなると、ちゃんと分かっていたからな」


「ループなんて、悪霊ってそんなことまでできるの?」


「奴は特別だろう。それだけ力も強いってことだ。お爺さんにはこんな話聞かなかったしな」


「あ、息吹君のぐるぐる回って、同じことを繰り返してって、もしかしてループのこと?」


「ああ。ループの説明なんて、ちゃんとしたら難しいからな。というか、俺だってうまく説明できないから、簡単にそう説明したんだよ」


「うん、それはね。でもループさせたってことは、息吹君は病気の時間を繰り返したってことでしょう。亡くなってからも、苦しい時間を繰り返しただけなんて。お兄ちゃんも大丈夫だったの?」


「それなんだけどな、俺と息吹君は、瞳たちとちょっと事情が違うんだ。そしてそれは、これからやろうとしていることと、瞳、お前と関係がある」


「私と? 事情が違う?」


「俺は最初の頃、瞳が所長に取り込まれないように守るだけで精一杯で、他のことに力を使えなかった。息吹君も同じ感じで、奴の言いなりになるしかなかったんだ」

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