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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第4章 調査開始と深まる違和感

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7話 男の子の痕跡と2日前の写真

 本棚の中には、少しだけファイルも入っていたけれど。ほとんどは、研究資料として用意されている、図書室にも置いてある分厚い専門書が並べられていたよ。


 ただ、半分より下には、また別の物がしまわれていて。研究にはまったく関係のない絵本や児童書、図鑑がたくさん並べられていたんだ。こう、小学低学年の男の子が喜びそうな本がね。本棚を開ける前は、目線とその上の本ばかり見ていたから、そこには気づかなかったの。


 私は、男の子用の本が気になったものの、後でそっちはしっかり調べることにし、先にささっとファイルと専門書を調べることに。


 ファイルは鍵付きのファイルじゃなく、1番多くしまってあったファイルと同じで。1冊確認したけれど、やっぱり研究内容がファイリングされた物だったし。

 専門書も、私は1度は目にしたことがある物ばかりだったから。何か挟まれているとか、書き込まれているとか、何か違うことがなければ、すぐに調べ終わると思ったからね。


 そして、私のその考えは当たっていて、まずファイルの方は、最初のように、日付と研究内容で、おかしなことはなく。

 専門書の方も丁寧に扱われていて、ちょっとした書き込みもなく、付箋なんかも挟まれていなかったし、メモ的な何かも挟まれていなくて、すぐに調べ終えることができたんだ。


 こうして、ファイルと専門書の確認を終えた私は、いよいよ子供用の本を調べ始めることに。


「この本の感じ、あの男の子の幽霊が、歳的に読みそうな本ばかりだよね。うーん、山田さんの怖い話じゃないけれど、あの子はやっぱり、この研究所に関係のある幽霊? というか、そうじゃなくちゃ、ここに現れたりしない? それか、ここにいる誰かと一緒にここへ来たとか?」


 山田さんから初日に聞いた、研究所の怖い話。もちろんその話が、この研究所の話だとは思っていないよ。

 山田さん本人だって、家には怖い話が書かれた本がたくさん置いてあって、それの何々シリーズに書いてある。あれは面白いから、帰ったら是非読んでくれって言っていたし。


 だけど、案外それと同じ感じの話が、この研究所にもあったりして?


 怖い話に出てきた、研究員と子供っていうのが、所長と男の子の幽霊とか。それからやっぱり怖い話の子供のように、男の子の幽霊は難病にかかってしまっていて、怖い話の研究員のように所長も、男の子の難病を治すために薬の研究をしていたとかね。


 それに、実は自分のための研究っていうのも、あの所長のことだから、ありえないことじゃないと思うんだ。


 だけど、所長に子供がいる、又はいた、なんて話は一切聞いたことがないし。何か事故が起きて、死者が出たなんて話も、本当に聞いたことがない。

 まぁ、どちらも、隠していたなら別だけど。でも、大きな出来事があれば、ニュースや新聞に出ると思うんだよね。


 でもここは、所長室の隣の立ち入り禁止の部屋。関係者しか入れなさそうな部屋にある本棚に、子供用の本っていうのはね。

 やっぱり男の子の幽霊は所長の関係者か、それとも上の人間の関係者か。じゃなきゃ、わざわざ子供用の本を、ここには置かないとも思うし。


 私はいろいろと考えながら、どんどん本を調べていく。ただ、こちらも、どうして置かれているのかは気になるけれど、本自体に気になることはほぼなく、すぐに調べ終えることができたんだ。そう、1冊を除いて。


 恐竜の図鑑なんだけど、それだけが他に比べて読み潰されていて。もしかしたら、男の子の幽霊がよく読んでいたのかなと思った私。


 図鑑は図鑑でも、大きな図鑑じゃなくポケット図鑑で。しかも、他の本の裏側に押し込まれる感じで、本棚に入れられていて、もし持ち出しても、すぐにはバレないだろうと。

 後で男の子の幽霊に会えたら、読ませてあげられるかなと思い、ポケットに入れさせてもらって、これで本棚の調べは本当に終了。


 こうして本棚の調べを終えた私は、ついに最後、所長机を調べることにしたんだ。


 所長机は、右に引き出しがたくさん付いていて、1番下が1番大きな引き出しが付いているタイプだったから、まずはそこから調べることにし、中央と左の引き出しは最後に見ることにしたよ。


 そして引き出しに入っていた物は……。うん、これといって、変わった物は入っていなかった。それどころか、いかにも所長のだなぁ、と思う物が入っていたっていうか。


 所長は、とても細かい性格でね。研究の過程も研究結果も、それ以外のことも。え? そこまで書かなくても良いのでは? というくらい、まぁ細かく書くんだ。もうね、紙の隙間が、ほとんどないくらいにね。


 まぁ、これが凄いんだか、ただただ見にくいだけなんだか。いや、研究している内容もやり方も、さすがここで長年所長をしているだけあって、ベテランの研究員って感じなんだけど。


 でもあの、目がチカチカするような、びっしり文字の詰まった、あの報告書を見るとね……。

時々資料として、所長のレポートのコピーが配られるんだけど、あれを見るだけで、みんな少しぐったりしちゃうくらいなんだよ。


 と、こんな感じで、引き出しには所長のレポートと、少しの資料。それから、事務的な書類に。1番上の引き出しのは、筆記用具が入っているだけで、変わった物は入っていなかったんだ。


 それから真ん中の引き出しには、付箋、電卓、封筒といった、よく使う物が入れられているだけで、こっちも変わった物はなく。もちろん、奥まで調べたけれど、やっぱり何もなくて、数分で調査は終了。


 そうしていよいよ、本当に最後の左の引き出しを調べる時が……。


 ここまで、なんだかんだ、そこまで時間をかけずに調べることができたし、所長が来る前に調べ終えられそうで良かった。

 これから考えること、改めて調べることはたくさんできたけれど。本当、ここまで調べることができたのは、男の子の幽霊のおかげだよ。後で本当に会えたら、お礼を言わなくちゃ。


 そんなことを考えながら、私はそっと左の引き出しを引く。


 すると、こちらにも、あの細かい字で埋め尽くされたレポートが出てきて、思わず、うえっとなってしまったよ。だけど、調べないわけにはいかないからね。

 レポートを取り出し、サッと内容を確認。ただ、おかしなことは書いていなかったから、全体的に確認せずに途中で終了。


 まさかの最後の引き出しが1番早く調べ終わるっていう、あっけない終わり方で。私はちょっと拍子抜けしながら、すぐにレポートを引き出しに戻そうとしたんだ。


 ただその時、引き出しの奥の方、レポートが何かに引っかかっている感覚がして、レポートが上手く中に入らず。私は引き出しの奥に手を入れて、中を探ってみることに。


 すると、手の先に何かが触れたから、それを取り出そうと何とか指で掴み、そっと引っ張り出してみて。流れのまま、私は何気なしに、その出てきた物を見たんだ。


 その瞬間、私は衝撃を受けることになったの。


 出てきたのは、また写真だったんだけど。その内容が……。そこに写っていたのは、どこかの病室、たぶん広い個室かな。そのベッドの上でピースをし、ニコニコと笑っている男の子。そう、あの男の子の幽霊が写っていたんだ。


「……あの男の子の幽霊だよね。やっぱりこの研究所と、何か関係があるの? というか、この所長机が、本当に所長の物なら、あの子は所長の子供で間違いない? ……ううん、まだ完全に親子とは言い切れない。だけど……」


 写真の中の男の子はよく見ると、痩せ細り、かなり顔色も悪いようだった。それから点滴に、右の枕元には、たくさんの薬が置かれている。男の子の様子と薬の感じから、もしかしたらかなり病状が悪いのかもしれない。


 ただ、それが何の薬までかはわからなくて、男の子がどんな病気に罹っていたのかまでは分からなかった。


「男の子のことで、他に何か分かることは?」


 そのまま、写真を確かめる。すると、


「ん? これ、目黒先生が来ていた白衣と同じ? でも、似ている白衣なんて、たくさんあるし。ん? 待って、このピアス……」


 写真の右側に、少しだけ白衣を着た人物が写っていて。その白衣の人物の顔は3/1程度、しかも、斜め左側を見ていて、ほとんど顔は見られなかったんだけど。その白衣の人が耳につけているピアス、それが目黒先生のつけているピアスにそっくりだったの。


 目黒先生は、独特なデザインのピアスを付けているんだ。どんな物かというと、注射器のデザインのピアス。しかも、結構リアルな形の物と、可愛いタイプの物、両方を付けていて。それと同じと思われるピアスを、写真の中の人物も付けていたんだよ。


「もしかして、この人物は本当に目黒先生? って、ちょっと待って。この写真の日付。数日前じゃない!?」

 

 白衣の人物を調べていたら、右下の写真の日付が目に入り、その日付が2日前のものだったんだ。


 まさかこんなことあるわけがない。だって、この写真の男の子は、男の子の幽霊かもしれないのに。それに、研究所に子供がいたら気づくはず。もしかして、他にもある、立ち入り禁止の部屋に子供がいる? いや、それにしたって……。


 まさか男の子の幽霊とは違うかもしれない男の子が、今ここにいるかもしれないなんて、思ってもいなかった。


 だけど、そう考えても、写真の男の子の姿は、男の子の幽霊にそっくりで、ほぼ同一人物だと思うの。でも、そうなると、今度はこの写真に記されている日付がおかしいことになるし。


 心臓がドキドキし、頭の中がまとまらない。そんな状況のまま、ふと目線を映した私。するとまた、あれ? と思う物が写っていて。


「窓の方、あれってここの研究所の施設内で、1番背の高い木と同じなんじゃ。他にも窓の作りが、私たちの部屋と同じような気もするし」


 目黒先生かもしれない人とは反対側、窓が写っていたんだけど。その窓の向こうに、大きな木が写っていることに気づいたんだ。

 実は、この研究所に施設内は、森の木よりも大きな木が1本あって、それが私の部屋から見えてね。写真の木の写り方が、私の部屋からの景色とほぼ同じだったの。


「……やっぱり男の子がいるのは、この研究所のどこかの部屋で間違いない? ……って、ん?」


 少しも考える間もなく、ここにきて1番気になる物が目に入った。


 それは男の子のベッドの左側。サイドテーブルに、ある物が飾られているのが写っていていて……。


 それが中庭に咲いている、あの花にそっくりだったんだ。葉っぱも、全体的な形も本当にそっくりで。そして写真の花も、まだ蕾だったんだけど、それまでもが、中庭の花の蕾にそっくりだったの。


 こんな偶然ってある? 私が見つけた花と同じ花を、男の子が飾っていたなんて。もしかして私が同じ花を見つけたから、男の子の幽霊が、この男の子の存在を、私に知らせに来たとか? え? 自分の存在を?


 ……違う。私はこの光景を知っている? 何で? 私の部屋から、同じ風景が見えているから、そう思うだけ? ううん、それも違う。そうじゃなくて。


 この写真を撮ったのは誰? 所長? それともタイマーで目黒先生が撮った? ……違う、そうじゃない。この写真を撮った気がする。誰が? 私が?


 何かが。そう、何かが、私の中から出てこようとしているような、思い出させようとしているような、そんな感覚に襲われて。自分でも何を思い、口に出しているのかよく分からず、その場に立ち尽くしてしまった私。


 と、その時だった。男の子の幽霊がドアの前に現れたんだ。

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