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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第4章 調査開始と深まる違和感

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6話 記憶にない集合写真

 読めば読むほど、もっと詳しく研究内容を確認したくなったけれど、調べるところはまだまだあったし。せっかく男の子の幽霊が鍵を開けてくれたのに、調べる前に所長が帰ってきてしまったら、調べるどころじゃなく逃げなくちゃいけない。


 しかも、もう2度とこの立ち入り禁止の部屋へ、入ることはできないかもしれないからね。


 私はとりあえず、全てのファイルをスチールキャビネットにしまうと、次は2つあるガラス張りの書類棚を調べることにしたよ。


 ただ、2つある書類棚の中をささっと確認すると、半分以上はスチールキャビネットに入っていたファイルと同じ色、同じ形のファイルがしまわれていて。中身を確認すると、やっぱり研究結果がまとめられていてね。

 それに、こっちのファイルには、おかしな日付や、おかしな研究結果もなく、すぐに調べ終えることができたんだ。


 というかね、おかしな物がなくて、この時の私はそれだけで、ホッとしてしまっていたかな。

 調べているんだから、何かあればちゃんと記憶して、後で考えなくちゃいけないけど。どうにもこの違和感に、とても嫌な感じがしていたからホッとしたんだよ。


 こうして同じファイルの確認はすぐに終わり、残りのしまわれていた物を調べようと思った私。でも……。


「あとは、これか。でも……、さすがにこれはな」


 私は何冊か手に取り少しだけ眺めた後、すぐに書類棚にそれを戻し、また数冊取り出して確認する。


 残りも全てファイルだったんだけど、形は同じ、だけど色が違うファイルで。しかも、よほど見られたくないのか、それとも重要すぎる物で、所長とか上の人しか見られないようにしているのか。


 色違いのファイルには全て小さな鍵が付いていて、開けられないようになっていたんだ。しかも2個付いているものまであったんだよ


 男の子にせっかく鍵を開けてもらったのに、調べられないのは申し訳ない。だけど、壊すわけにもいかないし、また鍵を開けてと、男の子に全部頼るのもね。というか、呼んで来てくれるかも分からないけど。


 ということで、書類棚はここまでにして、次は本棚を調べようと、他にも出していた鍵付きのファイルを元に戻そうとした私。でも、その時だった。


「あっ……って、え? 何これ?」


 私は手を滑らせ、ファイルを1つ落としてしまったんだ。そうしたら、落とした拍子に鍵を壊してしまったのか、それともきちんと留められていなかったのか。ファイルから中身が出ちゃって、私は慌てて出てしまった物をしまおうとしたの。ただ……。


「これ、写真? 研究の?」


 出てきたものを確認すると、どうにも裏返った写真に見えて。それは大きなサイズから通常サイズのものまであり、気になった私はまとめて拾い上げると、一気に表に返してみた。


 すると、やっぱりそれは写真で、飛ばし飛ばしそれを見ていくと、おそらく今までここで働いてきただろう人たちが写っていたよ。

 庭で談笑している姿や、食事をしている姿。真剣な表情で研究をしていたり、研究の発表か、会議をしている姿が写っていたり。この研究所での、日常生活が撮影されたもののようだった。


 私たちも、最初はこうだったんだけどなぁ。ここへ来るまでは、そして研究が始まってから少しの間は、とても充実していたのに。今は、いろいろなことがあって、結局探偵や警察みたいなことをしているんだから。と、ちょっと寂しくなる。


 ただ、私の気持ちは置いておいて。この写真は、ここでの日常が映されたものだから、これといっておかしなことは写っていないだろうと思った私は、これはもう良いかなと。最後の方はペラペラと捲るようにして終わらせ、次の本棚へ移動しようとしたんだ。


 でも、最後の写真になった時だった。


「……え?」


 それは一瞬。そう、一瞬だったから、私の見間違いだったかもしれない。でも、あれはどう考えても……。


 私は最後の方は、勢いよく写真を捲っていたから、今は最初の写真へ戻ってしまっている写真の束の、1番後ろの写真だけを、そっと手で引き抜こうとする。


 この時、私の手は少し震えていたよ。そして、私の見た物が、見間違いであって欲しいとも思って……。

 

 でも、引き抜いた写真を確かめると、それは私の見間違いなんかじゃなく。さっきの自分たちが研究している日付違いのファイルの時よりも、衝撃を受けたんだ。


 それは、研究所の前で撮られた集合写真だった。真ん中に所長がいて、周りには課長や上の人たち。そしてその周りに、神谷のおばちゃんたちや佐藤さん、研究員、その他の人たちが、4列に並んで写っていたよ。


 そう、これだけだったら良かったんだ。ただの集合写真で終わらせられたから。でも……。


 集合写真の1番右端に、私の姿が写っていたんだ。私だけじゃないよ。私の横には宮本さんが、その周りには山田さんや川島さん、そして私の班の人たちが、笑顔で写っていたの。


 しかもそれだけじゃない。神谷のおばちゃんが消えた時に現れていた、白衣を着ていた人たち。洋服から研究員かな? とは思っていたけれど。その人たちもこの写真に写っていたんだ。


「……何、この写真? ……私、こんな写真撮った覚えないよ。……日付は、私たちが来た日? まさか、そんなわけない。だってあの日は、すぐに研究所に入って、課長の話を聞いたんだから。話の後だって、すぐに部屋に行ったんだから!!」


 思わず大きな声を出してしまう。でも、誰かに気づかれるとか、そんなことを気にしていられなかった。だって、ありえない写真が出てきたんだから。


 私はここへ来た日のことを、何度も何度も思い返す。でも、いくら考えても、初日に写真を撮った記憶はない。


 神谷のおばちゃんの時にいた人たちだって、ここで働いていれば、どこかですれ違っているはずだから、記憶に残っていると思うんだよ。

 もしもすれ違っていなくても、定期的に全員が集まる日があるから、そこで絶対見ているはずそれなのに……。


 私が気づいていなかっただけ? それにしたって、少しも記憶にないものなの? 


「落ち着いて、落ち着くのよ瞳。……ふぅ」


 私は自分にそう言い聞かせ、何度か深呼吸をする。考えているうちに、少しだけだけど落ち着いてきていたから、もっと落ち着いてから、もう1度写真を確認しようと思ったんだ。


 ただ、いくら深呼吸しても、それ以上はなかなか落ち着かず。無理やり落ち着いたと自分に言い聞かせ、写真のことを改めて考えたけれど、やっぱりこの写真について、何も思い出すことはできなかった。


「この写真、本当に撮ったものかな? また、私の違和感じゃなくて? 私にそう見えているだけで、みんなには違うように見えるとか」


 今すぐに確認したいけど、誰か呼ぶわけにもいかない。もしそれをすれば、所長が戻って来るだろうしね。はぁ、これ、どう考えれば良いの? 


「それに、この違和感は何? いつもの違和感と違う、このおかしな違和感」


 記憶にない、どう考えてもおかしな写真。それなのに、どうにも私の頭に引っかかるんだ。


 撮っていないはずなのに、撮った感じがしてきたっていうか。私は、本当はこの写真のこと知っているような、何とも言えない感じ。私は本当に、こんな写真は撮っていないんだよ? 


 私は思わず、その辺に置いてある段ボールに座りそうになってしまった。でも、何とか思い止まり、写真をファイルに戻してガラス張りの書類棚にしまう。


 このまま、悶々と考えていても仕方ないからね。まぁ、無理やり片付けたって感じだけど。そうでもしないと、このままずっと考えることになりそうだったから。


 それに、せっかく男の子の幽霊のおかげで、部屋に入ることができたのに、全部調べないで終わるなんて、そんなのダメ。

 止まりかけていた私。でも、男の子の幽霊のことを考えたら、調査を続ける気持ちが戻ってきたんだ。


 もちろん写真については、戻ってから確認するよ。宮本さんに、それとなく聞けば良い。そういえば、集合写真についてなんですけどって話しかけて、向こうが話してくれるのを待つとか、そのまま様子をみるとかね。


 それで写真の話を聞くことができれば、また私だけに起きている違和感で話を終えることができるかもしれない。


「……早く他を調べて、ここを出よう」


 私は、フラフラと本棚の方へ移動する。そして本棚の扉を開けたんだ。

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