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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第4章 調査開始と深まる違和感

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5話 男の子の幽霊の先導とおかしな研究ファイル

 立ち入り禁止の部屋は、外からの光があるとはいえ、とても暗かった。


 私はこの前の山田さんたちの部屋を調査した時みたいに、外からなるべく気づかれないように、ドアを閉めると窓へ近寄り、サッとカーテンを閉めて電気を付ける。もちろん最低限の明かりだよ。それでも外の光よりは、しっかりと部屋の中が見えるからね。


 そうして改めて部屋の中を見渡すと、窓側には所長机と椅子とガラス張りの書類棚が1つ置いてあって。所長机から見て、左側にはもう1つのガラス張りの書類棚と本棚、それからスチールキャビネットが並んでいる。足元にはそこら中に、たくさんのダンボールが置かれていたよ。


 そして右側には、おそらく所長室へ行くためのドアがちゃんとあった。そう、夢と同じ、所長室で見たあのドアが。


 ただ、立ち入り禁止の部屋だから、どれだけ危険な物が置いてるのかと身構えていた私は、あまりに普通の部屋で、ちょっと気が抜けてしまったよ。だって、机と棚とダンボールだよ?


 でもすぐに頬を叩き気合を入れ直すと、まずは棚や本棚、スチールキャビネットに社長机、全てに鍵がかかっていないか、それを確かめることから始めることにした。


「鍵がかかってないといいんだけど」


 そう、何気なしに呟きながら、ガラス張りの書類棚に近づく私。と、急に男の子の幽霊が私の前に現れ、かなり驚いてしまった。


 そうだった。部屋に入ってすぐにドアを閉めたから、男の子の幽霊のことを忘れていたよ。でも、男の子の幽霊に、さぁ入ろう! と言うのも違うしな? 

 かと言って、せっかく鍵を開けてくれた男の子の幽霊に、急に現れるのはやめて欲しいと言うのもね。男の子の幽霊は、こういう現れ方なのかもしれないし。


 私は、驚きすぎてドキドキしている胸をさすりながら、平静を装いつつ男の子に話しかける。


「ご、ごめんね。ドアを閉めちゃって。今からいろいろ調べるけど、まずは鍵がかかっていないか調べるから……」


 と、話している途中だった。スチールキャビネットからカチャリという音がして、それから見えない誰かが引いているみたいに、スッと少しだけ引き出しが動いたんだ。


 それから、左側に置かれている、ガラス張りの書類棚から音がした後に、本棚からも音がして。それは窓側のガラス張りの書類棚へと続き。最後に所長机から、カチャ、カチャ、カチャと、連続して音が聞こえたんだ。


 ドアと同じ、男の子の幽霊が、鍵を開けてくれたらしい。


「鍵を開けてくれてありがとう」


 私はすぐにお礼を言う。というか、うん、普通に幽霊と話をするようになってる。人の順応能力って凄いな。


 と、そんなことを考えていると、


“見てくる”


「え? 見てくるって言った?」


 夢の中の男の子の幽霊と同じ声で、そう言われた気がして、またすぐに男の子の幽霊を見ると。男の子の幽霊と少しだけ目が合ったあと、男の子の幽霊がスッと消えたんだ。


「見てくるって何を? って向こうももう、普通に話してきてない? 幽霊も順応能力があるのかな? ……まぁ、今はいいか。今はそれより、せっかく鍵を開けてもらったんだから、早く調べないとね。所長が戻ってくる前に」


 私は、私の1番近くにあった、スチールキャビネットから調べることにし、少しだけ動いた引き出しを、大きく引いてみる。


 すると中には、同じ色、同じ形のファイルがたくさん入っていて。何冊か手前から取り出し中身を見てみると、タイトルと研究過程と研究結果が記された書類がまとめられていたよ。


「へぇ、こんな研究もしてたんだ。詳しく見たいけど、でも時間がないしな。他のファイルも同じか確認しないといけないし、サッと確認したら元通り戻して次を確認しよう」


 タイトルと日付を見ると、私たちがここへくる前に、この研究所で研究されていた物らしく。とても興味を惹かれたけれど、時間がなくて読むことができなくて、少し残念だった。


 私は他のタイトルを確認すると、ササっと元の位置にファイルを戻す。元の位置に戻すのと、調べた物をすぐに片付けるのは、本やテレビで見たやり方を真似したんだ。


 誰かが忍び込んだ場所で、証拠を探していて。でもそこに主人が戻ってきて、慌てて逃げるってやつ。

 その時、部屋を荒らしたままだと、誰かが忍び込んだって一発でバレちゃうでしょう? それじゃあダメだからね。


 そうならないためには、見終わったものはすぐに、元の位置に戻すのが大事。そうすれば、いきなり主人が帰ってきても、本人はそのまますぐに逃げられるし。部屋がいつも通りなら、誰かが忍び込んだって、すぐに気づかれず時間が稼げるもの。


 今回私は、立ち入り禁止の場所に忍び込んでいるんだから。所長にバレないように、すぐに逃げられるように、ちゃんと片付けながら調べないとね。


 そんな感じで、どんどん調べていく私。ただ、タイトルを確認するだけだから、思っていた以上に、調査はスムーズに進んで。スチールキャビネットの調べる引き出しは、あっという間に、あと1つになったんだ。


 そして最後の引き出しのファイルも、どんどん確認していく。と、最後の数冊に取り掛かった時だった。


「あれ? これって今、宮本さんたちが研究しているものじゃないの? それに、こっちは隣の班の人たちが研究しているはず」


 他の班が何を研究しているか、全部をきちんと把握できていないものの。宮本さんや、同じ階で研究をしている班の人たちが、何を研究しているかくらいは、ちゃんと分かっているからね。だから、これに気がつくことができたんだけど……。


 何故かそのファイルには、宮本さんたちや隣の班が、今まさに研究しているはずの内容が、その過程から結果に至るまで、すべてまとめられた状態でファイリングされていたんだ。


「どうして?」

 

 私は残りのファイル全てを取り出し、すぐに内容を確かめてみる。


 この時、確かめるファイルは残り3冊だけで。今出しているファイルと合わせても数冊だから、何かあってもすぐに片付けられると思ったし。どうにも、その残りのファイルが気になって、すぐに確かめたかったの。


 そして確かめた結果は……。私の感覚は当たっていて、3冊のうちの1冊、まさかのファイルが出てきたんだ。


 なんと、宮本さんたちの研究みたいに、今まさに私たちの班がやっている研究のファイルが出てきたの。しかも私たちは、まだまだ結果なんて出せていないのに、そこにはまだやっていない研究過程と、結果がしっかりと記されていたよ。


「研究は終わっていた? じゃあ何で発表していないの? いや、失敗したから、何も言わなかった? でもそれじゃあ……」


 ファイルの研究結果は失敗に終わったことが書かれていて、今後また研究される可能性があるとも書かれていた。


 だから、もしかしたら私たちが、新しく研究することになったのかもしれないけれど。でも、この失敗のことをちゃんと伝えておいてもらわないと、同じ失敗をする可能性だってあったのに。


「どうしてこんなこと……」


 ペラペラと紙をめくり、どんどん内容を確認していく。


 と、ここで他の異変にも気づいたんだ。記されていた研究日時が、少し前だったの。そう、20日前に研究は失敗に終わったことになっていて、そしてこの報告書は、数日前に提出され、ファイリングされていたんだよ。


 もちろん、私たちはこんな研究記録を提出した記憶はないし。なんなら今日も、事件がなければ、今頃研究していただろうし。


 それに、他の班が同じ研究をしているなんて話は聞いていない。基本、研究するものは、班ごと違っていて、重ならないようになっているからね。


 それなのに、ファイルにはしっかりと、研究内容と結果がまとめられているなんて……。


 私は急いで、宮本さんたちと同じ研究のファイルの日付も確認をしてみる。すると、同じように、日付が数日前や1ヶ月前になっていたんだ。


 まさかの状況に、何も言えなくなってしまった。


 ただ、何冊かそういうファイルが出てきたからといって、日付違いというだけの可能性も、かなり低いけれどまだ残っている。それに、前にここにいた研究員たちが、本当に研究したものかもしれないから、まだなんとも言えないけれど。それにしても、この数は……。


 私は、自分の研究のファイルだけ残し、あとは全て元に戻してから、もう少しだけ詳しく中身を見てみた。


 あっ、ここ! 今まさに私が研究しているところだ!! こんな研究結果が? もしかして私も今のまま研究を続けたら、同じ結果になる? それに……。


 こっちの研究結果は、明日から始める研究だよね? 手順も私たちがやろうとしている手順と同じだし。なら、このままやれば、やっぱりこっちも失敗するってことじゃん! はぁ、本当に何で、情報の共有をして、研究の無駄を省こうとしないの?


 それからも、少しだけファイルを確認した私。でも……。このファイルがこれからの全ての始まりになるなんて、この時の私は思っていなかったんだ。


 そう、私が今まで体験していた、たくさんの小さな違和感たち。そんな小さな違和感なんて、大したことがないと思えるくらい。

 それは調査を進めていくうちに、とてつもなく嫌な感じのする大きな違和感となって、私を混乱させながら……ね。

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