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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第4章 調査開始と深まる違和感

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3話 4人目の失踪者と霧島所長、そしてチャンス

「瞳さん、行きましょう!」


「はい!」


「こんなことになるなんて。さすがに今回は所長がなんと言おうと、みんな止まらなくなるんじゃないかしら」


「そうですね。でも、それでも、ここから出る方法はありませんよ」


「そうなのよね。所長から車の鍵を奪ったところで、よね。まぁ、とりあえず確認しに行きましょう!」


 今、私と宮本さんは、早歩きである場所へ向かっている。ただ、向かっているのは私たちだけじゃない。途中、他の研究員や他の人たちにも、何人も会って。その人たちみんなが、同じ場所へ向かっているよ。


 一体何があって、私たちは何処へ向かっているのか。それは……。


 私が調査を始めてから3日後、ついに4人目の失踪者が出てしまったんだ。しかも、ほんの数時間前にいなくなったらしいの。


 そのせいで、今研究所の中は大騒ぎで、みんながその現場に向かっているって感じかな。それはそうだよね。行方不明なんて、身近で早々起こるわけないのに、この短期間に4人もの失踪者が出ているんだから、騒ぐなって方が無理だよ。


 1階へ降りて左右を確認する。すると、右の方に人だかりが見えて、宮本さんとそっちに向かうと、みんなが集まっていたのは、別の班がいつも使っている研究室だった。


「ねぇ、失踪者が出たって本当なの?」


 宮本さんが、先に集まっていた人たちの中の、1人の女性研究員に質問する。


「ええ、本当よ。あそこ。あそこに集まっている人たちが、ここの班の人たちで、班の1人が、研究中に消えたって」


 私はそれを聞いて、一瞬のドキッとした。


 今までは、いや、山田さんはみんなが寝ている間に失踪してしまって、みんなどうやって失踪したか分からないし。

 川島さんは、私と宮本さんが、自ら霧の中へ走って行く姿を見ていて。その時はそれだけで、他には、おかしな出来事は見ていない。


 でも、研究中に失踪となると……。もし、神谷のおばちゃんの時みたいな、非現実的なことが起きていたら? ただでさえ、今研究所の中は大変なことになっているのに、よりパニックになるんじゃないかと思ったんだ。


 だけど……。よくよく観察してみると、ヒソヒソ話をしている人たちや、驚きの声をあげている人たちはいるけれど。非現実的な光景について、騒いでいる人たちは見当たらない?


「でも、私も詳しくは知らないのよ。さっき来たばかりだから。そうね……、あの人! あの人なら、詳しく知ってるみたいよ。話が回ってきて、すぐにここへ来たみたいだから」


「分かったわ、ありがとう。瞳さん、行くわよ!」


「はい!」


 研究員の彼女が教えてくれたのは、研究室にはみんなが入らないようにするためか、ロープが引いてあったんだけど。そのロープの前で、何人かの人に囲まれながら、話をしている研究員だった。どうやら、その人が事情を知っているらしい。


 私と宮本さんは人混みを進みながら、なんとか事情を知っている人の近くまで移動。ただ、先に話を聞いていた人たちが多かったし、今から聞いても中途半端になると思ったからね。

 みんなが落ち着いてから、改めて話を聞くことにして、それまでは研究室の様子を見ていることにしたんだ。


 すると研究室の真ん中には、課長を含めた責任者たちがすでに集まっていて。神妙な面持ちで、研究員たちと話をしていたよ。たぶん、この研究室を使っている研究員たちかな。


 ただ、他には? と言われるとね。


 研究室の中は、今までの事件を考えると、何か異変が起きていそうなものなのに。そう、山田さんたちの部屋のような異常も見当たらず。

 むしろ私たちの研究室よりも綺麗に整理整頓されていて、本当に何があったの? と思うくらいだった。


 と、こんな感じで一応確認をしていると、事情を知っている人に話を聞いていた人たちが後ろに下がったから。事情を知っている人に、何回も同じ話をさせてしまって申し訳ないけど、何があったのか教えてほしいと、宮本さんとお願いをして、話を聞かせてもらうことに。


 ただ、事情を知っている人は話好きなのか、喜んでとばかりに話してくれたけどね。喜んでっていうのも、どうなんだろうね。人がいなくなったっていうのに。


 って、まぁ、事情を知っている人のことは、今は置いておいて。彼の話によると、真相はこうだった。


 まず、私たちが最初に聞いた、研究中に消えたって話だけど。あれは正しく言うと、消えた現場を、ハッキリ見た人はいないみたいなんだ。


 私はそれを聞いただけで、ちょっと安心したよ。いや、安心って。事情を知っている人じゃないけれど、人が失踪しているんだから、そんなことを言ったらダメなのは分かっているよ。


 でも、神谷のおばちゃんの時のような光景を、誰も見ていないと分かっただけでも、良かったかなって。


 本当、あんな場面を見たら、今どころの騒ぎじゃなくなって、それで何か良くないことが、また起こってしまうかもしれないでしょう? 誰かが慌てて怪我をするとか、パニックになって外へ出てしまい、ここへ戻れなくなってしまうとかね。


 今回失踪した研究員は、今日の研究が始まる前から、どうにも様子がおかしかったみたいで。班の人たちは今までのこともあったから、研究をしながらも、みんなでその人の様子を、気をつけて見ていたらしいの。


 でも、8人で見守っていたのに、いつの間にか、様子のおかしな研究員の姿が消えていて。慌ててみんなで探したけれど、ぜんぜん見つからず。そこで課長たちを呼んだ、というのが、今回起きたことの詳細だって。


「必ず誰かが見ていたのに、フッと消えたらしいぜ」


「それは、いつくらいのことなの?」


「今から40分くらい前だ。今は何人で、研究所の周りを探してるってよ」


「なら、私たちも探しに行った方が良いんじゃない?」


「どうかな? ……たぶん、ここはこれから、別の意味で騒ぎになりそうだしな」


「騒ぎって?」


 事情を知っている人と話している時だった。誰が最初に声を発したのか、それは分からない。だけど、少し向こうの方から、


「一体どうなっているんだ!」


 と、誰かが大きな声で叫んだんだ。するとそれを皮切りに、集まっている人たちから、続々と声が上がり始めて。そう、みんなが口々に不安をぶちまけ始めたの。


 ただ、課長たち上の人たちに言うだけじゃなく、周りの人たち同士も、言い合いをし始めてしまって……。


「だから、早くここから出た方が良いと言ったんだ!」


「どうして、早く動かなかったんだよ!!」


「待てよ、逃げるって言ったって、どうやって逃げるんだよ。この前の悪天候で道も塞がっているっていうのに」


「それに車の鍵は所長が管理しているんだから、誰も運転できないでしょう」


「なんでも良いから、ここから離れれば良かったのよ!!」


「霧島所長が、俺たちの話を聞いていれば!!」


 うん、みんなの気持ちはよく分かる。まぁ、そうも言いたくなるよね。


「やっぱり今の状況じゃ、こうなると思ったぜ。言ったろう、たぶん、ここはこれから、別の意味で騒ぎになりそうだって」


「確かにね。はぁ、本当、一体この研究所はどうなっているのよ。……瞳、どうしたの? 何か気になることでもあった?」


 振り向くと、隣で宮本さんが不安そうに私を見ていて、私は急いで答える。


「あ、ええと、何も。ただ、私だけじゃなく、みんなも同じ気持ちなんだなと思って」


「ああ、そういうことね。それなら私も同じ気持ちよ。でも、そうね。私から見たあなたは、今までの中で、1番落ち着いているように見えるわ。あの花のおかげかしらね」


 宮本さんが静かな笑みを浮かべ、私にそう言ってきた。


 そう。今までの私だったら、みんなと一緒にパニックになっていたと思う。でも、調査をすると決めた私は、今までの私じゃない。


 慌てたり怖がったりするんじゃなくて、誰かがいつもと違う動きをしていないか、課長たちが何かしようとしていないか、少しも見逃さないように。みんなの声を聞きながら、そして様子を見ているフリを装いながら、周りを確認しているところだよ。


 それからも、みんなの声は止まらず、騒ぎはどんどん大きくなっていく。


 と、みんなが騒ぎ始めてから、数分後のことだった。ここで、いつもの失踪事件とは、違うことが起きたんだ。もしかしたら初めての異変かもね。


「皆、何を騒いでいる? 私の名が聞こえたが、私がどうかしたか」


 その声が聞こえた瞬間、みんなが一斉に散り散りになった。声の主はもちろん霧島所長。これまで事件現場に1度も姿を見せなかった所長が、何故かここに現れたんだよ。


 そして所長は、みんなが離れたことで、研究室の前にできた空間を、悠々と通ってロープの前まで移動し。私たちの方へ振り向き止まると、鋭い視線で私たちを見てきたの。


 その間、誰も声を出さなかったよ。今まであれだけ騒いでいたのにね。実は、所長はここへ現れてからすぐ、こう、みんなを黙らせるような、凄い『圧』をかけてきて。今もそれは止まっていないから、誰も何も言えなくなっているんだと思う。


「もし、私に言いたいことがあるならば、ここで聞こう。だが、失踪者のこともあるからな。そう長く時間は取れんぞ。……それで? 話がある者は前に出ろ」


 所長のその言葉に、誰も何も答えず、前に出る人もいないし、みんな所長から目を逸らしている。


「あれは今、近づいたらダメなやつね……」


 私にこそっと、そう言ってきた宮本さん。振り向くと、宮本さんは苦笑いしていたけれど、表情はすごく緊張していたよ。いつも強気な宮本さんがそれだもん。それだけ所長の雰囲気が異様なんだろう。


「何でも良いのだぞ。今までいろいろ言っていたじゃないか。さぁ、前へ」


 それでも、誰も前に出ず、何も言わない。


 そんなピリピリとした空気が流れ始めてから、どのくらいの時間が過ぎたのか。先に動いたのは、やっぱり所長だった。


 所長は大きな溜め息を吐くと、さらに鋭い視線で私たちを睨みながら、


「私に意見がなく、ただただ騒ぐだけならば、今すぐ皆、部屋へ戻るか研究室へ戻れ」


 そう、冷たく言い残し。そのあとはもう振り返ることはなく、話をしている課長たちの方へ歩いて行き、何かを話し始めたよ。あの問題の圧も消してね。


 その瞬間、みんなからホッとした溜め息が溢れる。ただ、この時の私は、安堵よりも別のことを考えていてね。そして……。


「はぁ、本当、嫌になっちゃうわね、瞳さん、私たちも戻りましょうか。でも、こんな気分じゃ研究なんてできないし、図書室かプレイルームにでも行く?」

 

 宮本さんが声をかけてくれる。でも、


「……宮本さん、私ちょっとやること思い出したので、ちょっと行ってきますね!」


「え? ちょっと瞳さん!?」


 早歩きで歩き始める私。宮本さんの私を呼び止める声が聞こえたけれど、私は足を止めなかった。


 こんなチャンス、今度いつ訪れるか分からない。動くなら今しかない、と思ったからね。確実に、所長の居場所が分かっている時じゃないと、って……。

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