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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第4章 調査開始と深まる違和感

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1話 調査開始と所長の嫌味、そして視線

「うーん。どこから、どう調べるべきか、それが問題だ……」


 部屋の中、1人そう呟く私。


 明日から調査開始だ!! と、決意したのは良いけれど。そんな警察や探偵みたいなことをするのは、当たり前だけど初めてで、何をどう調査すれば良いのか分からず、私は次の日の朝になっても、まだ動けずにいた。


 いや、完璧に何もしていなかったわけじゃないよ? 調査に必要そうな、メモ帳や筆記用具、何かに使うかもしれないから、ハサミやカッター、ビニール袋なんかも用意して。

 それを、ちょっとした移動の時に使っている、肩掛けバッグに入れてね。すぐにでも動ける状態にはしておいたの。


 だからあとは、どこからどう捜査するかだけなんだけど……。


 前に読んだライトノベルとか漫画だと、こういう時は原点に返って、最初の事件現場を調べ直す、とかだったっけ? それでそのあとは聞き込み? でも、この聞き込みはなぁ。


 山田さんの部屋の隣の部屋の人たちの話は、山田さんがいなくなった次の日に、休憩室でその人たちが話しているのをたまたま聞いたんだけど。

 山田さんがいなくなったとされる深夜から朝方にかけて、何の異変もなかったし、何の音も聞こえなくて、いつも通りの夜だったって言っていたんだ。

 

 それから、山田さんと川島さんと仲の良かった人たちに話を聞いたとしても。その中の1人は私だし、あとは宮本さんと数人だけで。


 その全員が警察の事情聴取で、山田さんは急に衰弱してそのまま行方不明になった。川島さんも、急に挙動不審になって衰弱していったと、それしか話していないのは分かっている。

 警察が帰った後に、宮本さんがみんなに聞いたんだ。だから改めて聞いても、新しいことは出てこないだろうし。


 となると、やっぱりここは、しっかり調べていない、山田さん、川島さん、神谷のおばちゃんの部屋を調べるべきで。その中でも、1番最初に調べるのは、山田さんの部屋かな。


 事件後、初めて山田さんの部屋を見た時、あまりの異様さに衝撃と怖さを覚え、2度と近寄りたくないと思い、1人では行っていない。

 警察と一緒の時も、やっぱり嫌な感じがして。部屋でおかしな部分に気づき、それを警察に伝える以外の時は、部屋のことをあまり見ないようにしていたからね。部屋の全部をちゃんと見たとは言えない。


 そして、すべての事件の始まりは、山田さんの部屋だものね。やっぱり、山田さんの部屋から調べるべきだ。


「うん! そうしよう!」


 やることをやっと決めて、私はカバンをしっかりと首からかけると、ようやく部屋から出て、初調査に向かう。


 もちろん今日は、研究はお休み。他の日については、課長や所長に怪しまれない程度に休みながら調査するつもりだよ。まぁ、今は私だけじゃなく、他にもたくさん休んでいる人は多いから、少し休んだところで、そんなに目立たないはず。


 こうしてすぐに、山田さんの部屋がある階まで来た私……だったけど。


「あ、しまった。鍵のことを忘れてた。入れるかな? ダメだったら、何とか入れないか、方法を考えなくちゃ」


 調べることばかり考えていて、山田さんの部屋には鍵がかけられていることをすっかり忘れていたよ。

 でも、とりあえずここまで来たから一応確認してみるか、と私はそう思い、廊下を曲がる。すると、


「ん? ……あれ? ……あの時と同じ?」


 最初に山田さんの部屋を確認しに来た時と同じだった。ドアが数センチだけ開いているのが分かり、私は一瞬だけどその場で止まる。だけどすぐに動き出し、静かに部屋へ近づくと、ドアを動かさないように、ドアの隙間からそっと中を覗き込んだ。


 もしかしたら、課長や所長、他の誰かいるのかもしれないからね。もし見つかったら、ここに何をしに来たんだって、絶対に面倒なことになるから、見つからないように気をつけないと。


「……誰もいない? また、誰かの鍵の閉め忘れ? たまたま私が来る時に限って?」


 これも最初の時と同じだった。部屋の中には誰もいなくて、これで2回目だし、何で私の時ばかり? と少し不思議に思ったよ。

 

 だけど、案外鍵の閉め忘れが多いだけで、本当にたまたまかもしれないしと思い直し。それよりも、これはチャンスだと。鍵を閉め忘れたって、誰かが鍵を閉めに来る前に調べなくちゃと、私は急いで部屋に入る。


 そうして、電気を全開にすると、外から気づかれる可能性があったから、電気の明かりはなるべく小さくして、一呼吸したあと調査を開始したんだ。


 荷物を置き、メモ帳と筆記用具を取り出し、スマホの準備もする。暗い部屋の中、写真を撮っても、ちゃんと映らない可能性もあるから、メモはとっても大事。


 調査すると決めたからなのか、これまで来た時は怖かった山田さんの部屋が、今はそこまで怖くなくテキパキと動けている。


「まずは、窓周辺かな……。うーん、やっぱり何もないか」


 私は窓に近づき、外の様子を見てみた。もう時間が経ってしまっているから、山田さんがいなくなった時に、もしも靴跡が残っていたとしても、今は消えてしまっているだろうし。報告では、足跡はなかったって言っていたしな。

 

 山田さんは窓から外へ出たのか、それとも玄関から出たのか……。


「さすがに、これは分からないか。よし、次よ次。このいっぱいの、殴り書きの言葉。できる限り写真を撮って、メモもとらなくちゃ!」


 分からないことに時間をかけて、やっぱりそのせいで、誰かがここへ来たら、何でここに来たと所長や課長に詰められるだろうし、他が調べられなくなってしまうかもしれないからね。こういう時は、無駄なことに時間をかけない。


 まず、窓のところに一際大きく書いてあった、『俺たちは、もう』と言う言葉を写真に撮る。それから、ぐるっと1周、壁の写真を撮って、その後は天井と床の写真を撮って。

 その後はササッと写真を確認。うまく写っていない文字を、どんどんメモにとっていく。


 偽物、嘘、子供、真実、騙されるな。それから、呪い、生贄、繰り返し、出口はない、終わらない、とか。できるだけメモしたよ。


 あまり良くない言葉が多く、ちょっと嫌な気持ちになったけど。でも、きっと山田さんがこの言葉を書いたのには、理由があるはず。それが分かれば、少しは調査が捗るかも。


 ほら、『子供』は、幽霊の男の子のことだと思うし、『真実』は、もしかしたら男の子の幽霊の、何かが分かったのかもしれないでしょう?


 どのくらいの時間、メモをとっていたか。そんなに時間はかけていないはずだけど、メモ帳の5ページほど書いたところで、一旦書くのをやめた私。


 部屋には、たくさんの言葉が書いてあると言ったけれど、すべて違う言葉ではなく、重複しているものも多いし。全部完璧にメモを取るのは無理だから、次を調べることにしたんだ。


 次は、言葉以外の部屋のいろいろと、トイレやお風呂を調べたよ。


 荷物に関しては、たぶん山田さんがいなくなった時のまま。ただ、何か物がなくなっていたとしても、私が山田さんの荷物をすべて把握しているわけじゃないから。これはとりあえず、失踪時のまま、ってことにしておくことにしたんだ。


 それからお風呂やトイレにも、やっぱり紙が張られていて。全体的に黒く塗りつぶされ、余白に言葉が書いてあったけれど。同じような言葉ばかりで、新しく分かることはなく、すぐに調査は終了。


 そのあとは、ミニキッチンと戸棚、押し入れも調べて。最後にベッドの方へ戻り、もう1度だけ文字を確認したあと、私は部屋を出たんだ。


 すると、その瞬間だった。誰かの視線を感じ、私は思わず視線を感じた方を振り向いた。だけど、そこには誰もいなくて。時々感じる、誰かの視線。最近それが、多くなって来ている気がする。


 私は一応、視線を感じた方へ歩いて行き、誰かいないか確認をした。だけどいつも通り、やっぱりそこには誰もいなくて。一体何なんだと思いながらも、そのまま山田さんの部屋の前を通り、次の場所へ向かうことにする。


 でも、いつもは『またか』で済ませるんだけど、今回は調査をしている最中だからね。気をつけておかないといけないことが増えてしまって、ちょっとイラッとしてしまったよ。


 ただ、そのイライラも、この後起きた出来事ですっかり消えるころになっちゃけど。


 まさかの、まさかのね、廊下を曲がったところで、所長と出くわしてしまったんだ。


「おや、高橋君、こんな所で何を?」


「いえ、ちょっと班の人に確認することがあって」


「そうか。私も、ある研究員に用があってね。そう言えば、今日は君は休みをとっているらしいね。何の確認をしていたかは分からないが、それも終わったようだし、早く部屋へ戻って静養すると良い。そう、何しろ今回の君は、今までと違うようで、行動的になったが、その分疲れているようだからね。私と話しているこの時間勿体無いだろう。さぁ、行くと良い」


「……はい。では、失礼します」


 そう言い、軽く会釈して歩き始める私は、一旦自分の部屋のある階へと進む。


 もしも今、私たちの近くに誰かいたとしたら、今の私は、ハキハキと話しているように見えたかもしれない。だけそう本当は、心臓が爆発しそうだった。

 

 本当、まさか所長と出くわすなんて! 私は階段を登り切った所で思わず、


“上手いこと部屋から出られて良かった!” 


 と、心の中で言いながら、やっぱり心の中でガッツポーズをしながら、それと同時に大きな溜め息を吐いてしまったよ。


 ほんのちょっと、部屋から出るのが遅れていたら、部屋を出がところを見られたか。それどころか、完璧に部屋にいるところを見られてしまい、それこそ何をしていたんだと、かなり責められていただろう。


 それにしても、今までと違うようで、行動的になったが、その分疲れているようだからねって、あの言葉は何? 嫌味かな? 今まで文句を言ってこなかった奴が、急に文句を言ってくるようになって面倒な奴になったって?


 しかも文句を言ってくる元気はあるのに、研究を休んでフラフラしているところを見たから。そんな元気があるなら、休まず研究しろよって言う嫌味?


 ああ、ヤダヤダ。文句を言われるのは、自分のせいじゃない! まったく嫌になっちゃう。


 こうして、間一髪で難を逃れた私は、少しの間その場に止まり。落ち着いてから、このあとは、山田さんたちがいなくなった順に調査してみようと思って。次は川島さんの部屋へ、向かうことにしたんだ。


 そういえば、所長の横を通り過ぎ、階段を上ろうとするまでの間、所長は私の方を見ていたみたいなんだけど。その視線が、この頃感じる、あの謎の視線と似ていたような? 


 ……いや、気のせいか。所長の視線の方が、アレ謎視線よりも強いもんね。

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