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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第3章 警告と覚醒

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7話 男の子の幽霊の声と私の決意

 そして、次の日から、今まで以上に花の世話に力を入れるようになった私。すると、すぐに私自身に変化が現れたんだ。今まで感じていたイライラが、少しずつ治ってきたというか、不安が少し消えたというか。


 あれかな。蕾が大きくなって、花が元気になったことが嬉しかったことと。


 これまでは、あまり嬉しいことがなく、嫌なことばかり考えてしまっていたし。それだけじゃなく他にも、所長たちの言葉や行動にイライラさせられ。そのせいで、いやでも所長たちのことを考えてしまい、それでも時間を潰されて。


 だけど、花が咲くことを楽しみに、どんな花が咲くのか考えるようになったら、その余計なことを考える時間が減ったんだ。


 それが良かったのかも。嫌なことから離れられたことで、心が少しずつ落ち着いてきたんだと思う。本当に、あの花には助けられてばかりだよ。ただ……。


 私や花は変わったけれど、アレだけは変わらなかったんだ。ううん、正確に言うと、変わらなくて、変わったんだ。


 心が落ち着いて来てから数日後。私は深夜1時ごろ、いつも通りベッドに入り、花のことを考えながら目を閉じて。


 そうしてどれだけ経ったのか、いつ寝たのかは分からないけれど、私はまた、研究室で目を覚ましたの。


 心が落ち着けば、夢も見にくくなるのかな、と思っていたんだけど。これだけは変わることなく、毎日同じ夢を見続けていてね。もしも、夢の中の私を、自由に動かせる能力が私にあったとしたら、きっと『またか、はぁ』と、溜め息を吐いていたと思う。


 そして始まる、やっぱりいつも通りの夢の中の私の行動。電気が消えているのに、真っ暗にならず、なぜかちゃんと周りが見える研究所内。


 研究室の窓から外を眺め、そして自分の研究道具を片付けたあと部屋に戻ろうとするけど、誰もいないことに違和感を覚えて、研究所内を探し始める。


 もちろん、所長室に行くことも忘れず。所長室にある、隣の立ち入り禁止の部屋に続いているドアも毎回確認。


 そうしてその後も研究所内を調べ、最後に中庭の見える廊下へ辿り着き、廊下の向こうを見てみれば……。


“うん、やっぱり今日もいるんだね”


 男の子の幽霊が、私に気づき顔を上げる。それから、あいかわらず射抜くような鋭い視線で私を睨みつけたあと、聞こえない声で私に何かを言ってきたあとに。これまたいつも通り、研究室と所長室の方角を見た後に中庭を見て。そして最後、私を睨みつけてきたよ。


 そうして、暗闇に消え始める男の子の幽霊。


 今日もこれで終わりかな? 夢の中の私か、それとも現実の私なのか。はっきり分からないけれど、そう思った私。それと同時に、周りが暗くなり始め、全ての物が消え始める。


 やっぱりね、今日もそのまま消えるみたい。どんどん周りの物が消えていく。


 そして数秒後、最後は、私の周りと男の子の幽霊しか見えなくなって。あとは、私たちが消えるだけ、そうすれば目が覚める、と、私はその瞬間を待つ。


 そう、いつもなら、これで目が覚めるはずだったの。でも、全てが消えようとした、その瞬間、いつもと違うことが起きたんだ。


『……気をつけて』


 え?


 それは、初めて聞く、男の子の幽霊の声だった。と、それとほぼ同時に、パッと目が覚めた私。


「……え? 何!? 今、聞こえた? え? え?」


 男の子の声が聞こえた!? 今まで1度も聞こえなかったのに!? 


 その後は、いつもと違うことが起きて、動揺してしまい、もう1度眠ることができず、そのまま朝を迎えてしまったよ。いつもは『またか』で済ませ、2度寝できていたんだけどね。


 ただ、宮本さんと朝ごはんを食べに行き、研究が始まる頃には、何とか落ち着いてきて。驚きよりも、今度はどうしてだろうという気持ちの方が、大きくなっていたんだ。


 ちなみに、私の様子がおかしいことに気づいた宮本さんに、どうかしたのかと聞かれたけれど。夢の内容は話さず、変な夢を見たとだけ話したら。それなら良いけど、とそのあと深く聞かれることはなく助かったよ


 まぁ、少し疑われている感じはあったけど、夢だったのは間違いないしね。


 それにしても……。何で今になって男の子の声が聞こえたのか。だって、男の子の幽霊の夢を見たのは、2回や3回じゃないんだよ? もう何度となく見ているのに、急に聞こえるなんて。


 それ以外にも、何で神谷のおばちゃんを襲った、もしかしたら、他の人たちも襲っているかもしれない子が、『気をつけて』なんて、案じるような言葉を発したのか。もうね、その日はずっと、そのことばかり考えていたよ。


 ただ、今回の変化は、これだけじゃ終わらなかったの。


 夢の中で、初めて男の子の声を聞いた、その次の日からは、毎回夢に変化が起きるようになって。最初は、『気をつけて』という言葉が、より鮮明にはっきりと、聞こえるようになっていっただけだったけど。


 それが数日続くと今度は、研究室と所長室の方角を見た時には、『あっち』とか『ある』とか『ひみつ』と言ったり、中庭を見た時にも、『こっち』とか『もう少し』と言ってきたりして。どんどん聞こえる言葉が増えていったんだ。


 私のことは睨んだままでね……。そう、睨んだまま、でも言葉の種類は、私を心配する言葉や何かを示す言葉で。


 本当、これは一体どういうことなんだろう。睨んでいるのは、もしかしたら私を神谷のおばちゃんみたいに、襲おうとしているから? でも、それだと、言葉が合わないしな。


 それと、この夢を、山田さんたちも見ていたという可能性はないかな? ほら、山田さんは、男の子のことを調べていておかしくなったし。

 川島さんは、山田さんのことを調べようとして。それ繋がりで、もしかしたら男の子のことも調べ、それでおかしくなった……としたら?


 ほら、私も夢を見始めたのは、いろいろ他のことを、気にし始めてからだったでしょう? だから山田さんと川島さんは、怖い夢を見るようになって、おかしくなったところを、最終的に、神谷のおばちゃんみたいに襲われたとか。


 ……違うかぁ。私が今見ている夢なら、山田さんたちは、あんな酷い状態にはならないはず。山田たちの怖がり方とか衰弱の仕方は、尋常じゃなかったものね。でも、関係ないとも言い切れないし、うーん。


 それに、この違和感は何だろう。今まで私は、不思議な体験や、違和感をいろいろ感じてきた。物忘れとか、私しか感じないこととかね。

 でもそれは、ちゃんと内容を分かっていたでしょう? ご飯のことを忘れた、洗濯したことを忘れた、ノイズが聞こえるって。

 

 でも、夢が変化してから、何に対して感じているのか、自分でも分からないような違和感を覚えるようになってしまったんだ。


 しかも、その違和感が何なのか、きちんと調べるべきだと、私の心が私に訴えかけてきているようで、どうにも心が落ち着かなくなってしまって。


 あ、前までの不安で落ち着かない、って感じとは全然違うよ。こう、早く調べないとというか、静かにじっとしていられないというか、今すぐに動かないとダメだというような、それで落ち着かないんだ。


 そんな何とも言えない気持ちのまま、そして何も分からないまま、あっという間に、2日が過ぎてしまった、その日の夕方。私は研究をスムーズに終わらせ、宮本さんに、


「元気になって良かったわ」


 と言われながら見送られ、いつも通り花に会いに来ていたよ。


 ただ今日は、日常生活の話をするために、会いにきたんじゃない。大切な話をするために、気合を入れて会いにきたの。


「今日はどう? 今日はね、スペシャルな栄養剤を用意したんだ。……ちょっと、大切な話を聞いてもらおうと思ってね」


 私は花に栄養剤入りの水をかけたあと、花の隣に座り、深呼吸してから話し始めた。


「今まで、おかしなことはたくさん起きていたの。でも、研究が全ての私にとっては、そんなことよりも研究の方が大切で、考えないように、見ないようにしていたんだ」


 そう、最初はそれで上手くいっていたんだ。でも、私が考えていた以上の、普通だったら体験しないようなことを、たくさん体験してしまい、かなり気持ちが落ち込んでしまって……。あなたと初めて関わったのは、そんな時だった。


 ここへ来た日、あなたの存在には気づいたけれど、そのあとは研究中に夢中で、あなたのことをすっかり忘れていてね。本当、何で忘れていたのか、今考えると、本当にもったいなかったよ。


 だってあなたは、今じゃ私の最高の友達なんだから。もっと早く話していれば、もっと楽しい研究生活を送れていたかもしれないのに。


「でもね、私たちの友情はまだまだ続くんだから、これからもたくさん話をしようね!」


 私の話に、花は全体で、『うん』と言ってくれている気がする。そんな花に、私はそのまま話を続けるよ。


「あと、あなたにお礼が言いたくて。気持ちが落ち込んでしまっていた時、あなたに出会ったと言ったでしょう? それであなたの姿を見て、私はあなたに救われたんだ」


 どんな環境にも負けず、ここでずっと立ち続けているその姿。そんなあなたの姿が、私に力をくれて、それでここまでくることができたんだよ。あなたがいなかったら、私はきっともう、ここにはいなかったと思う。


 もちろん、宮本さんや神谷のおばちゃんにも救われてるよ。でも1番はあなた。……あなたが、私の力なんだ。


 それでね、それだけ力を貰っていたのに、さらに元気をくれたでしょう?


「あなたはどんなことにも負けずに、ついに蕾を大きくして。それがどんなに嬉しかったか。そう、その姿を見て、私はさらに元気になって。今なんて、ここへ来た頃くらいまで、元気になったんだよ。本当に、本当にありがとう!!」


 風に揺れる花。なんか今度は照れている感じがするよ。うん、喜んでくれてるみたいで良かった。……よし、ここからは。


「それでね、元気になったからか、いろいろ周りが見えるようになって。それに、ある子から、いろいろ言われるようになって。……だから私、決めたことがあるの」


 男の子の幽霊が私に『気をつけて』と言ってきて、なんでそんなことを言ってくれるのか、すごく気になって。そうしたら、さらに他のことも気になるようになってね。


 調べるべきだと、私の心が私に訴えてかけてきているような、そう感じるようになったんだ。


「だから私は……。これからしっかり、研究所のことを調べてみようと思う。絶対に何かが分かるってわけじゃないけれど。でも、そうすることで、今よりも状況が良くなる気がするんだ。だからあのね……私にもう少し元気をもらえるかな。頑張る力を、私に貸してください!!」


 私は蕾に頭を下げる。


 この2日間、ずっと考えていたんだ。そして、いい加減動かなくちゃいけないって、そう思って。


 だから、今まで花に、どれだけ助けられたかのお礼と、今までのことや、これからのことを報告しに、今日はここに来たんだ。


 数秒後、ゆっくりと頭を上げて蕾を見る。すると……。


“頑張れ!”


 元気に輝きながら、そう私を応援してくれているように聞こえたよ。


「……応援してくれてありがとう! 私、頑張るよ!! あっ、もちろん、毎日ここに来るからね。調査も大事だけど、それ以上に、あなたと過ごす時間は大切だもの。それは絶対忘れない! ……よし、とじゃあ」


 私は立ち上がり、中庭を後にする。


 調べることで、山田さんたちのようになってしまう可能性もある。神谷のおばちゃんみたいに襲われる可能性も。無事にここを出られないかもしれない。でも……。


 今の私は、なんだってできる気がするの。花から元気をもらって、お兄ちゃんやお父さんやお母さんから貰った、大切なお守りがあって。みんなが私を守ってくれながら、頑張れと言ってくれている気がする。だから、だから私は大丈夫!!


「よし! 明日から調査開始だ!! 今日はいろいろ用意しなくちゃね!!」


 こうして私は、自らの手で真実を調べる決意したんだ。

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