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2-4

「助けてくれーーーーッ!!!」



かすかにそんな声が聞こえた。


僕は耳を疑い、ミトラに尋ねた。



「ミトラ、今、助けてくれって聞こえなかった?」



僕は辺りを見回すが、助けてほしそうな人は見当たらない。



「……私も聞こえた気がするわ」



誰かが助けを求めているのは間違いないのだろう。


僕はもう一度辺りを見回す。



「門を開けてくれーーーー!!!」



声は下から聞こえる。


門、開ける、という単語にぱっとひらめく。



もしかして門の外に人がいるのでは!?



僕は落下防止策を握り、その間から身を乗り出して下の様子を見た。



……男が二人、門にしがみつき、拳で門を叩いている。



「人が外にいる……!大きく変な生き物も……

もしかしてあれって壊世雨で降ってきた壊世生物?」



ドロドロした水の塊のような生物が、地面を溶かしながら門の方へのっそのっそとちかづいてくる。



その先には二人の男がいる。



水の塊のような壊世生物の体内は時折たぷたぷと揺らめき、黒い液体の身体の中に時折透明な部分があり、その隙間から赤紫色の丸い宝石のようなものが見える。



「壊世生物は生き物を認知するわ……どうやらここまで連れてきてしまったみたいね」



……二人はあの壊世生物に追いつかれて壊世エネルギーに汚染されてしまうのでは!?


そうしたら死んでしまう……!



「待ってて!すぐに行くから!」



僕は振り返り、走ってエレベーターに乗った。



真ん中にある機械の下向きの三角形”▽”のボタンを押して急いで下に行く。


下に行けばきっと開ける方法があるはず。



「待って、待って!!リアン!」



ミトラが後ろから手を伸ばすが、エレベーターの出入口は閉まってミトラの駆け込みを阻んだ。


エレベーターは下降を始め、ミトラがエレベーターの境にあった落下防止柵から身を乗り出している。



「ちょっとお兄さんたちを助けてくる!」



下降するエレベーターで上を見上げて僕はミトラにそう叫んだ。



「そうじゃなくてッ!!」



ミトラはエレベーターのあった場所を見下ろして壁の上で叫んでいる、よく聞こえない。



―――エレベーターはゆっくり下降し、しばらく待ってガタンと地面についた。



僕は急いでエレベーターから降りて、行きにミトラを止めていた男性を探した。


右を見ると、男性は門のそばの柱の影で槍を立てて住宅街の方を見ながら、うつらうつらとしていた。



僕は男性に駆け寄り、声をかけた。



「お兄さん!お兄さん!」



「……ん?ああ!君か!ミトラ様とはぐれちゃったのかい?」



「違うよ!!」



男性はきょろきょろと辺りを見回すと、困ったように首をかしげた。


きっと外の二人の声はこちら側に届いていない。



「門の外に人がいるんだ!壊世生物がこっちに来てて……!」



「……??門の外に人?」



うーんと考えて男性はぶつぶつと何かを言い始めた。



「おかしいな、遠征の予定の中で今晩帰ってくる人たちなんていなかったはずだ

もしかしておば……」



「お化けじゃないよ!!助けてーって言ってるよ!!」



お化けを想像したのか青ざめる男性に僕は「とにかく早くして!!」と強く言った。


男性はハハッと右側の口角を上げながら微笑をする。



「もし本当に人がいたとしても、壊世生物がいるとなると今開けるのは難しい……」



「どうして?」



「それが壊世生物だったとして、バリアが破られたらシティの人たちが危ないだろう?」



「む……」



確かに多人数の命は大事だが、目の前で助けを求めている人も放ってはおけない。


僕は男性の持っている槍を見た。



……そもそもその武器は何に使うんだ、と。



「(そうだ、自分で開けてしまえばいいんだ!)」



僕は男性を説得することを諦め、男性の背後を見る。


門の右側に箱型のスペースがあるのが見える。



もしかしたらあそこに門を操作できる装置があるかもしれない。



僕は男性の横を通り抜けてスペースに向かって走った。



「ちょっと!少年!待つんだ!」



男性は慌てて追いかけてくる。


僕は両手でわき腹を捕まえようとする男性の手を、輪くぐりのようにくぐりぬけて避ける。



僕は急いでスペースに入り、入り口のドアを閉めた。


内側から鍵をかけ、ドンドンドン!とドアを叩かれる。



「少年!門を開けてはいけない!」



入ってすぐ左には門がよく見える窓、右の壁には大きなスケジュールが電子モニターで表示されており、その下すぐにはリストとチェックマークが表示されている。



そして正面には赤と緑色のスイッチに下がったコの字のレバーがある装置があった。



「この装置で門を開けられるかな……」



両手でレバーを掴んで上に上げようと、レバーの下に立って両手でつかんで背伸びした。


力を込めた手がぶるぶる震えるが、レバーはびくともしない。



「……おっ……おっも……いっ」



僕はレバーの使い方を間違えているのか?


試しに引きながら上にあげようとすると少しだけ元の位置から動いた。



なるほど、このレバーは持ち手が半円を描くようにして上に上がるらしい。



……しかしそれでも僕の身長では3分の1ぐらい持ち上げるのが限界で、レバーを操作できそうにない。



力を抜いてハァと息をつく僕の目へ、壁に立てかけられた棒が入ってくる。



僕は棒を手に取った。



「もしかしてこの棒をレバーの間にいれて反対側を押したら、レバーは持ち上がるかな……?」



僕は片手でレバーを引きながら上げて小さな隙間を作り、棒を間にねじ込んで強引に挟んだ。


レバーは元に戻らず、棒が間に挟まって少し持ち上がった状態になる。



そしてねじ込んだ棒の反対側を両手で押さえ全体重をかけて床へ押し付け、棒の反対側に力がこもって棒はしなりながらレバーをググッと持ち上げた。



ガタン!



力のこもった棒でほとんど上まで持ちあがったレバーは自動的に一番上まで持ちあがり、起動した。


そしてその衝撃で僕は前転しそうになり、役目を果たした棒は、レバーを上げた側が勢いよく僕のほうに倒れて……いや飛んできた。



棒が頭にぶつかった。



「イタッ!……あ、開いた!」



座ったまま部屋の左の窓を見上げると、ウィーンと音を立てながら門が上下にゆっくり開いていく。


そして門の上と下の間に空間が見えた時、門の向こうから声が聞こえた。



「―――早く開いてくれーーーー!!」



門の向こうでは追い詰められているのかもしれない。


僕はレバーをあげる時に使った棒を持つ。



「これであの不気味な生き物を追い返すくらいはできるかもしれない」



そしてドアの鍵を開け、門の方へ走ろうとした。


するとさっきまでドアを叩いていた男性に捕まえられ、小脇に抱えられた。



「君!門を開けるなとあれほど!!」



男性は怒りながら、部屋に入ってレバーの方に歩いて行こうとする。


もしかして、門を閉める気だろうか。



僕は男性の手から抜け出そうとジタバタして、男性の手をはたいた。


しかし男性の装甲が固く、僕の手がひりひりと痛む。



「お兄さん!声が聞こえたでしょ、お化けじゃないよ!!!」



「……う、ううむ」



男性はレバーを止めようとする手を止めた。


あれだけ大きな助けを求める声なら、聞こえているはずだ。



「仕方ない、外にいる人が中に入るのを確認したらすぐに閉めよう」



男性は僕を下ろすと窓の外を見て門の様子を見始めた。



「ありがとう!その人たちが入ったら僕、合図するね!」



僕は急いで門の前まで走った。


門は上下にゆっくりと開く。

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