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朝のレヴェリーシティ。
セルセラ噴水の広場では人々がそれぞれの役目を果たすべく、目的に向かって歩いていた。
ミトラは商店街の方向、クレイ研究所の方へと歩いて行った。
ミトラと別れた僕は、混雑するセルセラ噴水の脇に立っていた。
「……どっちだろう」
周りは大人ばかり。
背の低い僕は大人に埋もれて道を見失っていた。
ましてや僕は、ひとりでシティの中を歩いたことはなかった。
『ハロリス~!おはよ!シティの皆さーん!
本日のレヴェリーの天気はおおむね晴れる予想だよ!!
しかし海岸の方では風が強く、海はしけるんだって!』
その透き通るような大きな声を聴いて振り返ると、そこには司令塔があった。
僕は止まって司令塔の壁を見上げた。
周囲の人たちも足を止め、その声を聴いて明るい表情をして司令塔を眺めていた。
司令塔の中央のビルの壁に白とピンクの猫耳のヘッドホンをした少女が映し出されて、手元のデバイスに書かれているであろう資料を読み上げている。
少女は童顔でくりくりの大きな目、むにゅっとした小さな口と組み合わせると、きゅるるん!という効果音が似合いそうなぐらいかわいらしい顔をしている。
画面の中でひときわ輝く少女は左右にゆらゆら揺れ、後ろでリボンのように結んだ象牙色のツインテールが揺れる。
淡いピンク色の瞳は、周囲の人を魅了していると言えるかもしれないほど魅力的だと感じた。
そして少女はうきうきした明るいテンションで喋り始めた。
『レヴェリーシティ南門は通行止めだから、西、北、東門を使ってね!』
レヴェリーシティの全体図が少女の背面に表示される。
円状になっているシティの全体図、真ん中には司令塔と書かれている。
その右側には商店街、クレイ研究所、東門と続く。
司令塔の左側にはカラクリ通り、ユニヴェル研究所、西門と書かれている。
司令塔の下側には住宅街、緑地、病院と書かれており、南門からぐるりとレヴェリーシティを一周するように道がある。
それから噴水広場の上、司令塔の左右には円を描くように道が描かれており、その道は工業区域へ続いているようだ。
どうやら工業区域を通ると北門へ行けるらしい。
「ミトラに門の外に出ていいとは言われてないし、北門の上に登ったらいいかな……」
……南門の上部から壊世雨を確認したときのように、北門の上部に行かせてもらえれば壊世雨は確認できるだろうか?
『一昨日発生した壊世雨の影響で航海は出来ないよ!ダメ!絶対!
昨日は南部で壊世雨が発生したから、南部では壊世生物がうじゃうじゃわんさか!危険だからこっちも近付いたらダメだよ!
だから今日は西、北、東で作業をしてね!
公開エリアはこーんな感じ……―――』
少女の背面にはレヴェリーシティと思われる丸と、そこから周辺と思われる地図が映し出される。
地図上では境界が引かれており、それぞれ何も描かれてないエリアと赤い斜線で塗られたエリアがある。
南側は赤く塗られて斜線が引かれており、西、北、東もそのような場所があるが、おおむね行動してもいい範囲だと思われる。
『区画外は調査隊が調査出来たら解放するよ、それまでは入らないようにね!
壊世生物はどこに潜んでるか分からないから、遭遇したら目が合わない場所へすぐに非難してね!生きて帰るんだぞ!イリスとの約束っ!!
本日も張り切って行こ~!』
少女、イリスがバイバイと手を振る。
そして映像は途切れた。
その瞬間、周りの人たちは正面を見て歩き始める。
みんなあのイリスという少女のニュースを頼りに生活しているんだろうか?
「とりあえず、北門を目指して行ってみようかな……」
僕は人の間を縫うようにして歩き、左右に2つある北側の工業区域へ続く道の、右側へ向かった。
北門への道には電子看板が並び、脇には水路が通っていた。
左側には街灯と低い植木が植えてあり、その手前にはポッコリ飛び出した電子回路がある。
僕は電子看板が気になり、足を止めた。
この道は以前、クレイ研究所の研究員と通ったことがある気がするが、じっくり見たことはない。
”食材なら何でもそろう!~イヌヌ食品~”。
電子看板を見ていると、見覚えのある名前があった。
ミトラと食材を買った店の広告らしい。
ニッコリ顔をした犬型ロボットと、ポップな野菜達のイラストが描かれている。
「……なかなか有名なお店なのかな?」
広告をじっと見ていると、画面がピクセル状に四角く分解されて行って、ピンク色の背景に変化していく。
別の広告に切り替わるのだろうか?
そのピンク色の背景にはウィンクをした少女、イリスが映し出された。
”レヴェリーシティのアイドル!イリスの透き通る繊細な声がシティの外の最新情報をお届け!”。
「さっきの女の子だ、アイドル?って何だろう……」
小さな羽のついた四角い機械を、イリスが両手に持っている広告。
この機械がシティの外について教えてくれるのだろう。
ミトラの研究がうまくいけば、この機械を通して他の人たちに壊世雨の予報が届けられたりするのだろうか?
そんな風に少し想像した。
僕は再び北門へ向かって歩き出した。
ここを歩く人々はなんだか重装備をしていたり機械を持っている人が多い気がする。
装備をゴテゴテに着た人間。
機械を修理するためのツールを持ち、ツナギを着た人間。
片手のないよたよた歩きのアンドロイド。
……工業区域にはそれらに関するものがあったりするのだろうか?
僕はゆっくりと足を進めた。




