2
翌日、春馬は新幹線で京都に向かっていた。誰にも見えないが、一友も一緒だ。向かっている間、春馬は小学校の頃の修学旅行を思い出していた。とても楽しかったけれど、やっぱり一友がいないってのが残念だったな。一緒に行きたかったのに、それはかなわなかった。そして、夏に亡くなった。あまりにもかわいそうすぎる。こんな運命、間違っているだろう。だけど、それが事実だ。
京都が近づいてきた。春馬は立ち上がった。これから卒業旅行が始まる。だが、一友にとっては、10年遅れの修学旅行のようだ。
2人は京都に着いた。観光客は少ない。今日は平日だからだろう。多少歩いている人は、卒業旅行か、有休をとった社会人だろうか?
「着いた!」
「着いたな」
一友は喜んでいる。これが修学旅行で生きたかった京都なのか。とても嬉しいな。果たして、どんな感動が待っているんだろうか? わからないけれど、とても期待だ。
「これが京都」
「楽しみ?」
「うん」
2人は改札を抜け、京都駅の駅舎を眺めた。現在の京都駅は1994年、平安京ができて1200年になる年に完成した。巨大な駅舎で、とても目を引く。
「じゃあ、金閣寺と銀閣寺に行こうか?」
「うん」
2人はバスで金閣寺に向かった。かつて京都は、網の目のように路面電車が走っていた。そして、この地から電車の歴史は始まったのだ。だが、昭和54年に全廃された。2人とも、その事は全く知らない。
2人は金閣寺にやって来た。金閣寺には多くの人が来ている。いつ来ても、ここは賑わっているな。2人はその美しさに呆然としていた。こんなに美しいのか。これが修学旅行でみんなが見た、金閣寺なんだな。
「これが金閣寺」
「すごいなー」
一友は開いた口が塞がらない。その素晴らしさに圧倒されている。
「でしょ?」
と、一友は悲しい表情になった。一緒に行けなかったのがつらいんだろうか?
「どうしたの?」
「一緒に行きたかったわ・・・。もっと生きたかったわ」
やはりそう思っているようだ。だが、どんなに願っても、また修学旅行は行われない。一度っきりだ。
「悔しいよな・・・。悔しいよな・・・。その気持ち、わかる」
「おおきに」
春馬は一友の頭を撫でた。とても残念だよな。悔しいよな。春馬は泣きそうになった。だが、この後も一緒に巡らなければ。今度に行くのは銀閣寺だ。
2人は銀閣寺にやって来た。銀閣寺にも多くの人が来ている。これまた京都の観光名所だ。とても楽しみだな。みんな楽しそうだ。それを見て、一友は思った。自分もこんなに感動したかったな。生きているうちに見たかったな。だけど、それはかなわなかった。
「銀閣寺に来た!」
「銀閣寺もすごいね」
一友は感動した。金閣寺もいいけれど、銀閣寺もいいな。本当に素晴らしい。
「うん」
一友はまた下を向いた。やっぱりみんなと行けなかったつらさがあるんだろう。春馬にはわかった。
「ここもみんなと行ったんやね」
「うん」
やっぱり、修学旅行に行けなかったつらさが忘れられないようだ。本当につらいだろうな。
「僕も行きたかったわ」
「その気持ち、わかるよ。みんな、一友くんと一緒に行きたかったって言ってたよ」
春馬は修学旅行の事を思い出した。多くの生徒が、一友の事を心配していた。あんなに生きたかった修学旅行が、病気のせいで行けなかった。本当につらいよな。もし自分だったら、耐えられないだろうと思っていた。
「そうなんや・・・」
と、一友は泣いてしまった。どうしたんだろうか? 行けなかったつらさとはまた別の涙のようだ。
「どうしたの?」
「どうして僕、病気になったんやろ」
確かにそうだ。どうして一友は心臓病になったんだろう。どうしてそんな運命を与えたんだろうか? 神様に願ってもその理由はわからない。
「わからない」
「そう・・・」
春馬は11年余りしか生きられなかった。本当につらい。どうしてこんな運命になったんだろう。幽霊になった今もつくづく思っている。
「すごく悔しいわ・・・。もっと生きたかったわ」
「そうだよな。悔しいよな」
春馬は一友の頭を撫でた。だが、一友は泣き止まない。
「みんな楽しかったやろな」
「それじゃあ、清水寺に行こうか?」
「うん」
2人は清水寺に向かった。
2人は三年坂を登って、清水寺にやって来た。清水寺は高い場所にあり、舞台が印象的だ。これが清水寺なんだな。とても素晴らしいな。これも一緒に行きたかったな。だけど、それはかなわなかった。
「これが清水寺」
「眺めがええね」
2人は舞台にやって来た。京都を一望する絶景だ。これが清水寺からの長めなのか。修学旅行の生徒も、これを見たと思われる。みんなと見たら、その感動はひとしおだっただろうな。
「清水寺の舞台から飛び降りる」
一友はことわざを発した。清水寺を基にした有名なことわざだ。
「まさにこの風景やわ」
「うん」
これを見る事ができて、本当に嬉しい。だけど、生きているうちに見たかったな。
「みんな、この風景を見たんやね」
「ああ」
「一緒に行けて、嬉しいわ」
一友は、春馬と一緒に行ける嬉しさをかみしめていた。だけど、生きているうちに、修学旅行でみんなと行きたかったな。みんなは今頃、何をしているんだろうか? もう社会人だろうか? それとも、再来月から社会人だろうか?




