表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/4

死者から届いた手紙 ①

ようこそ、深夜喫茶ヨロへ。


この店では、珈琲を片手に少しだけ不思議な事件が起こります。


名探偵・黒瀬怜司と、語り手である「私」が出会うのは、密室や殺人だけではありません。


人の心が生み出す、小さな謎もまた事件なのです。


第二話となる今回は、「亡くなったはずの人物から手紙が届く」という不可解な出来事。


どうぞ最後まで、黒瀬と一緒に推理をお楽しみください。


 深夜零時を回ると、喫茶ヨロは少しだけ世界から切り離される。


 雨の日は特にそうだ。


 店の窓を打つ雨音は街の喧騒を消し去り、店内には古いジャズレコードと珈琲の香りだけが残る。


 私はいつもの席で万年筆を走らせていた。


 向かいでは黒瀬怜司が新聞を広げている。


「先生」


 彼は新聞から目を離さず言った。


「人は亡くなった人間を美化します」


「急に哲学か?」


「いいえ。事件の話です」


 新聞を裏返すと、小さな記事が目に入った。


 『地元資産家・神崎隆一氏、病死』


 七十二歳。


 心不全。


 家族に看取られ、静かに息を引き取ったという。


「これが?」


「ええ」


「普通の記事じゃないか」


「普通なら」


 黒瀬はコーヒーを口にした。


 その時だった。


 喫茶ヨロの扉が開いた。


 入ってきたのは四十代半ばほどの女性だった。


 雨で濡れたコートを脱ぎ、店内を見回す。


「……黒瀬さん、でしょうか」


「はい」


 女性は安心したように息を吐いた。


「探していました」


「どうぞ」


 マスターが席へ案内する。


 女性は鞄から一通の封筒を取り出した。


 黄ばんだ封筒だった。


 しかし封は切られている。


「相談があります」


 彼女は震える手で封筒を差し出した。


「主人から手紙が届いたんです」


 私は思わず聞き返した。


「ご主人?」


「はい」


 女性は静かに頷く。


「三日前に亡くなりました」


 店内の空気が止まった。


「亡くなったご主人から?」


「昨日、郵便受けに入っていました」


 黒瀬は封筒を受け取る。


 差出人には確かにこう書かれていた。


 神崎 隆一


 消印は――昨日の日付だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ