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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
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1-4

 当面の外政、戦争だが、代々続く政治問題は、打倒ハプスブルク家である。


 フランスは神聖ローマとスペインの、両方のハプスブルク家に挟まれており、フランスは常に挟み撃ちの危険性に晒されていた。


 ルイからしたら、神聖ローマはまだマシなほうだ。

 同じフランク王国から、フランスと神聖ローマが生まれたし、教皇からローマ皇帝として戴冠された、偉大なるフランク王国のシャルルマーニュ帝を敬愛している。


 だからといって、神聖ローマがローマ皇帝を名乗っているのは、ルイからしたら鼻で笑うが、とにかく神聖ローマはけしかけてこない分には、まともなのだ。


 問題は過激派のスペインである。


 何度和平を結ぼうとも、戦争は行われた。


 ルイの母、アンヌ皇太后とて、和平の為にフランスに嫁いで来た、スペイン王家の王女である。


 ルイの代でも、このスペインは外敵の最たる国であった。


 そこに加え、大昔からの天敵であるイギリスも抑えなければならない。


 ルイ14世が戦争好きになるのは、戦争慣れし、勝ち始めてからの事である。

 未熟で負けっぱなしの時期は、本人だって戦争などしたくもなかろう。


 彼の本領発揮はバレエ舞台である。


 あくまでこの時代では、戦わなければフランスが生き残れなかったのだ。


 ハプスブルク家の挟み撃ち、虎視眈々と狙うイギリス。


 この外敵問題をこなせるように育つべく、アンヌ皇太后はルイに友達を集めて、戦争ごっこを盛んにさせて来たのである。


 しかし、ルイが良い年頃となると、状況は急変した。


 スペインから和平条約がまたしても持ち出されたのである。


 フランス王ルイ14世に、スペイン王女マリア・テレサを嫁がせ、莫大な持参金を送ることを約束してきたのだ。


 しかし、ルイは全く乗り気にはなれなかった。

 政略結婚である。


 マザランはフランス側に敵視され、精神面を家族に支えて貰うために、フランスに自身の甥っ子や姪っ子達を招いており、ルイは幼い頃から彼らを友達にし、共に勉強しながら育っている。


 ちなみに、兄だけでなく、弟フィリップもまた、初恋の人フィリップ・マンチーニに恋の手ほどきを受けていた。


 特にマザランの姪達は可愛らしく、皇太后アンヌが実の子供たちのように愛した。


 ルイの青春は、マザランの姪達とともに訪れた。


 ルイは、はじめは次女オランプと愛人になり、マザランはこれを禁じ、オランプをソワソン伯爵に嫁がせてしまった。


 しかし、ルイの本当の愛は、マンシーニ夫人の危篤を見舞いに行ってから始まった。

 ルイは、内気な才女のマリー・マンシーニを愛したのである。


 当然、政略結婚などしたくないし、マリー・マンシーニとの結婚を考えていたのだ。


 ルイとマリー・マンシーニの恋は、マザランやアンヌ皇太后には予想外の事態である。


 ルイの国王としての責務は、当たり前だが、スペインの和平条約を受け入れて、スペイン王女マリア・テレサを妻とすることなのだ。


 マザランはルイを説得したが、ルイは恋人のマリー・マンシーニを絶対に譲らない。


 仕方なく、マザランは強行策に出た。


 フランスの平和の為に、自らの姪、マリー・マンシーニをナポリ王国に嫁に出したのである。


 マリー・マンシーニと引き裂かれたルイは、優しいはずのマザランのそこまでの覚悟をし、冷徹なまでに強行したのは、それが国家を守る為だからだと、理解した。


 スペインとフランスの和平条約は執り行われ、馬車に乗って、遥々と旅をしてきたマリア・テレサ王女を、ルイは国王の責務としてエスコートした。


 この時、傷心のルイが国王として立派に振舞ったことは、絵画にも残されている。


 スペイン風の正式な結婚式で、マリア・テレサはルイの妻となり、フランス王妃マリー・テレーズと、名をフランス呼びに改めた。


 マリー・テレーズはルイの傷心を知らないまま、ルイに一途な愛を捧げた。彼女のモットーは、「わたしの情熱は王とショコラに」である。


 しかし、和平条約にある、マリー・テレーズと共に送るはずの、莫大な持参金は、いつまでも支払われることは、無かった。


 その持参金こそは、マリー・テレーズがスペイン王家の王位継承権を捨てる為の支払いである。


 ルイはこれに対し、遂にスペインに宣戦布告。


 マリー・テレーズの王位継承権を主張して、スペイン領に攻め込んだ。



 ルイが17歳になると、父親代わりのマザランが亡くなった。悲しみも束の間、ルイの肩にはマザランから託されたフランスがかかっていた。


 高等法院におもむいて、自身の成人から、政治を以後はルイが行うことを宣言した。


 俗に言われる、朕は国家である、などは、実際には発言してはいない。


 ただ、ルイはあたかも、自分自身の健康管理のように、フランスを抱えていた。


 フランスの細かな国土を初めて測ったのも、ルイである。


 自ら民の様子を見に行って、魔女扱いされていた精神疾患の病人達を、宗教的な悪魔つきとは考えずに、病として保護施設を作ったのも、ルイだ。


 ルイはマザランから政治を継ぐと、内政の為に、皇太后アンヌと話し合い、王権神授説を利用する。


 ルイはこの時期、まだまだ反骨精神があり、カトリックは好きでは無かったが、これは政策である。


 神に選ばれた王なのだと主張すること。


 宗教と王の力を合わせれば、謀反は圧倒的に減るだろう。


 ルイの画家への指示による、王権の絵画での神聖化などで、王の法律の絶対性や、天使すら王に従う絶対的な権威を、民にわかりやすく知らしめたのであった。


 ちなみに、幼いルイに絶対王政の強化を求めた未来の王党派により、若きルイは既にこの時、ヴェルサイユ宮殿の完成を果たしており、パリから一家で引っ越すと、あらゆる地方から領主である貴族達を呼び集め、王家の給使人として住まわせた。


 外部から一見して美しいヴェルサイユ宮殿は、素晴らしい作りの部屋は、舞踏会の間や、王家の住居だけだ。


 内部の作りは細道の迷宮そのもの。


 トイレは王専用が一つで、ルイの許可により、王家はこのトイレを借りられる。


 だが、貴族達のトイレはたった一つ。死にものぐるいの奪い合いで、階段下で脱糞に到る者も大勢存在した。


 貴族達の住まいは、王の寵愛あるものには、ベッド一つがギリギリの個室を与えられる。


 女中や警備の軍人は、屋根裏で男女別に相部屋だ。常に縄張り侵入や騒音被害で諍いが起きていたという。


 王の寵愛無き者は、ヴェルサイユ宮殿には住めないし、でも出勤しなければならない為、ヴェルサイユの街に出て、民家の2階に借りぐらししたり、宿屋で毎日金を払うしかない。


 しかも、王からの支給金は低賃金で、宿代に足りずに、自腹を切って支払うのである。


 だが、この処置からヴェルサイユの街は発展し、貴族用のホテルや、レストランが栄えた。


 無論、ヴェルサイユ宮殿の建設から、国民は重税で苦しんでしまったが。


 ルイ14世の狙い通りに、地方貴族の力を弱らせた挙句、宮廷に集めて監視しながら、務めさせる。


 それこそが、黄金のヴェルサイユ宮殿の真の役割であった。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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