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激動のフランス、16世紀から17世紀において!!
後の太陽王、ルイ・デュードネは生誕す!!
同性愛者の父ルイ13世と皇太后アンヌ・ドートリッシュは不仲の極みにあり、婚姻してから二十余年かかったルイの生誕には、夫婦になんの交渉があったかは定かではない。
ルイの生誕は聖母マリアの授けた奇跡とされ、ルイ13世と、赤ちゃんのルイ14世を抱いたアンヌ・ドートリッシュが、聖母マリアに祈る絵画すら描かれた!
ルイ13世の弟、ガストン・ドルレアンの娘、グランド・マドモワゼルは、赤子の頃からルイ14世を「わたしのかわいい旦那様」と呼称して抱っこし、いつも愛してくれた。
しかし!
ルイ13世はルイの後継人に大貴族を指名し、政権を委ねるとまで遺言を残して天に召された!
国民は当然、ルイ・デュードネがルイ13世の実子では無いとゴシップを書き連ねた!
父親はイギリスのバッキンガム公説、銃士隊隊長カステルモールこと、ダルタニアン伯説、いいや、顔がカヴォワ侯そっくりだ、という、仮説と創作混じりの風刺画が出回った。
そんなおり、皇太后アンヌは宰相マザランと結束し、ルイ13世の遺言を破棄して、政権をイタリア人枢機卿マザランに委ねた。
しかし、地方貴族達はイタリア人マザランの政治に反感を抱き、幼い王には従わぬと、反旗を翻した。
フロンドの乱の勃発である。
貴族、そして夫人達の野心が、国の乗っ取りに動いたのである。
ルイ14世を守るマザラン枢機卿軍と反乱軍が、パリの城壁の下で対戦することになった時、グランド・マドモワゼルはヴァスティーユからマザランの兵に大砲を打ち、彼女の軍が打ち出す大砲の弾に当たって倒れる兵士を、ルイは唇を噛み締めて見守った。
ルイをあんなに愛してくれた彼女すら、野心に惑わされたのだ。
幼いルイが必死に質素な馬車まで、母アンヌに手を引かれて走った。
馬車に乗り込むと、マザランが御者の代わりに馬を走らせる。
「母上、叔母上すら人が変わってしまった。余たちは、どうなってしまうの?」
ルイの震えながらの問いかけに、アンヌはルイと王弟フィリップをあやしながら、答えた。
「大丈夫よルイ。わたし達はシャルル9世の母君のような騙し討ち行為はしないのだし、地方大貴族がどうあれ、国民は味方よ。まずはサン・ジェルマン・アン・レーの離宮に避難しましょう。そして、折を見計らって各地を訪問しましょう。貴方たちには、安全なベッドが必要だものね?」
ルイは複雑な眼差しでドレスを着た弟を見た。
「余が、死んだら……大貴族の人が王になるから、指示されてるんだよね。王家と血の繋がりが濃いほど、反逆する。……余は、フィリップとは、殺し合いたくない。」
アンヌは既に死の実感に達した我が子に、深い苦悩を感じた。
「ルイ………。」
ルイとアンヌ、マザランは逃亡を余儀なくされ、フランス各地で国民に歓迎され、保護された。
やがて、戦争から帰ってきたコンデ公にパリを奪還してもらう。
しかし、今度はコンデ公が王にと支持され、再びパリから脱出。
原因は、地方貴族の財政の豊かさにある、とルイは学んだ。
幼いルイと若き皇太后アンヌは、フロンドの乱解決以降、地方貴族の力を衰えさせることを、内政の課題とした。
反感を買ってきた、イタリア人枢機卿リシュリューの政治からなる、政治を怠った父王からの負債も、ルイの代で解決しなくてはならない。イタリア人枢機卿マザランから、幼いルイは政治を学び、やがてマザランに代わって、ルイ自身が政治を継ぐことをも決意。
そして、貴族達の謀反にも、正当性が必要なのである。リーダーに担ぎあげるのは、王家の血を引く人間でなければならないのだ。
そのため、幼いルイと皇太后アンヌは、ブルボン王朝の伝統で五歳まで女児として育てられる王家のしきたりを使い、弟フィリップを貴族達に悪用されぬ為に、ずっと女の子として、慎ましい子に育てることにした。
結果、フィリップ殿下は女装癖がつき、女性側のワルツを踊るオルレアン公となる。
人工的に、フィリップを性同一性に作り替えてしまったと言えよう。
ルイは、マザラン枢機卿のことは父のように愛しているし、聖職者故の慈愛は尊んでいる。
でも、ルイ的にはぶっちゃけまだまだ反骨精神の盛んな時期で、縛りの多いカトリックが嫌いだし、神学なんていくら勉強させられても、続けられるはずもなく。
友達とする戦争ごっこは楽しくても、銃士隊長カステルモールに習う剣術指導なんて、ルイとしては楽しくない。そりゃあカステルモールはものすごい剣士だが、それはそれ、これはこれ。
ルイは芸術を愛した。
ファッションもまた、芸術である。
フリルやレースのついた、ルネサンス期のようなパフスリーブに、更にリボンをたくさん付け足したり。靴下にレースを重ねて。
オシャレと芸術が共存する、バレエをこよなく愛し、極めて行く。
そして、常につま先立ちでいられる、ハイヒール靴を開発。リボンがついた男性用の靴として、大ブームを巻き起こす。
ところで、18世紀でサンソンが見つけた時空転移装置の設計図だが、ナポレオン・ボナパルトにより国民に公開され、さっそく誰かが法律違反を犯して17世紀に飛び、ルイ14世に接触したらしい。
「貴方様のフランスに災いが起きます!どうか、絶対王政をより強固にし、王家の繁栄あらんことを!!」
まだ幼いルイは、謁見を求めたこの男に告げた。
「そなたが預言者や、予言者の類ならば、余は信じぬ。しかし、そなたが学問から導き出した答えであるならば、余はその意見を尊重しよう。」
「私めは、学者です。」
男が、王家の復活を願う王党派であったことが救いであり、ルイの暗殺には至らず、フランス王政強化の助言をしたのみで、大事には至らなかった。
しかし、これによって、歴史は少し変わり、ルイは幼いと言えるうちから、狩猟で遊びに行く場である、ヴェルサイユに宮殿を建築し始めた。
美しく!
華美に!
荘厳たれ!!
建築家は厳選され、これがバロック建築の代表となるのである!
ルイにとって、フランス王政強化の最優先事項とは、地方貴族の財政を弱らせることだ。
宮廷に出仕させ、ルイの管理下に置くこと。
重要な役職には、法服貴族を配置すべきだと考えた。
法服貴族とは、庶民が学問を修め、王から貴族の爵位を与えられた、純粋な貴族達と一線をかくする博識な庶民の貴族である。
純粋な名家の貴族達からは、法服貴族は侮蔑の対象なのだ。
法服貴族達の多くは、法律の為に高等法院で働くものだが、ルイはこの知識ある法服貴族を、重鎮に雇用しようと考えているのである。
ルイ自身はあまり勉強は得意では無いから、国民の学問には率先してエールを送っていた。
無能で馬鹿な貴族達を嫌い、優秀で知恵を貸してくれる法服貴族をより好んでいたのだ。
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