2-19
「緊急事態です!」
「どうした!?」
「イギリス改宗!!カトリック信徒となったイギリス全土が、コンクラーヴェに参戦しました!!!」
「はぁーーッ!?」
「イギリス全票はアヴェ・ド・ショワジーへ!!これは……圧倒的だ!!!」
ダラメダ公爵は目を見開き、ショワジーはにっこりと微笑んだ。
システィーナ礼拝堂はついに可決!
「可決!!可決しました!!次期法王ショワジー……ティモレオン1世!!初代、女装教皇!?」
「無効票だ!!女装神父だぞ!?」
「ですがフランスでアカデミー・フランセーズに入賞を多々している、勤勉な神学作家ですよ!?」
枢機卿の間でもショワジーの票をどうするかで揉め始めた。
ショワジーの勤勉な信仰と神学知識は認めるが、女装はいかなものか。何せまだまだ17世紀である。
「新法王様猊下……今後は、お身だしなみをいかがなさるおつもりで?」
ショワジーは堂々と微笑んで告げた。
「わたくしはわたくしです。死ぬまで貴婦人のドレスを着ますわ。」
ショワジー肯定派も、これは覆せない。ショワジーの生き方、スタイルなのだ。
「法王ティモレオン1世、女装癖により、瓦解です!!在位一日持たず!!」
「破綻です!今季のコンクラーヴェは破綻しました!!」
「まぁ。選ばれたのは事実ですわ。一晩、法王の間で休ませてくださいまし。」
枢機卿達も頷いた。
「まぁ……事実、貴方は一瞬でも法王様です。一晩ですよ?」
ショワジーは勝ち誇ってダラメダ公爵の席を後にした。
「わたくしは今夜は歴代法王様の部屋で一泊するとしましょう。そこでかわいいダニーの冥福を祈りましょう。仇は、取らせていただきましたわ。」
ダラメダ公爵は顔を上げた。
「何。まだ次の手がある。法王代理は必ず我が手の者だろう。わたしの息のかかっていない枢機卿など、もはやいないのだから。」
コンクラーヴェの破綻により、イギリスは再び改宗、イギリス国教会に戻り、チャールズ2世の騒動は、議会が歴史から揉み消した。
フランス、ヴェルサイユ宮殿では、ショワジーの勝利を記念し、贅沢な料理が盛りだくさんの舞踏会が開かれた。
ルイが祝杯を上げ、カステルモール達も祝いの席に付き合った。
後日にはチャールズ2世も祝いに現れる予定だ。
「この祝いはショワジーに。そして、親愛なるイギリス王チャールズ2世に!使者よ、アンリエットにチャールズ2世の活躍を知らせてやるがよい!ルイーズをここへ!みな、今宵は踊り明かすが良い!」
舞踏会が始まり、貴族達はワルツに入り乱れた。
「お兄様ァ!ショワジーが活躍なさったお祝い、わたくしも親友の為に多いに盛り上げますわ!」
フィリップ殿下がピンクのドレス姿で意気揚々と踊り出す。
ルイは面食らったが、弟側から元気に話しかけてくるなど、勇気が必要だったことはわかっていた。
可愛いピンクのコーデなどは、兄譲りのファッションセンスである。
「楽しむがよい、フィリップ。確か……パティシエよ!フィリップの好きなフランボワーズは用意したのか?」
ルイが不器用なりにパティシエとやり取りしているのを、アンヌ皇太后は喜んで見守っていた。
「ところで、母上」
「なに。貴方ともう一人の貴方の、見分け方かしら?」
「一体何が違う?」
アンヌ皇太后は考えた。
「ルイの手掴み食べは、直らない癖だものね。もう一人のルイに、手掴み食べしてもらうしかないわ。あと、食事量。貴方は大食漢だもの。」
「ふむ。余からカステルモールに伝えよう。」
サンソンとデオンは、事態の終息を見届け、ルイに挨拶に出向いた。
「ルイ14世陛下。我々は未来に帰ります。ヴァスティーユ監獄は二度と偽文書は通じないでしょう。また危機があればご利用ください。」
「ふむ。そのほう。老婦人の剣豪よ、名をデオンと言ったな。余からもシュヴァリエの地位を褒美に取らせ、年金を取らせよう。コルベール!直ちにこの老婦人に充分な年金を!カステルモール!この者らの帰り道を銃士隊で見届けよ。」
「ただちに。お待ちくださいませ、シュヴァリエ・デオン。」
「承知。副隊長!ただちに銃士隊を表に整列させよ!」
「かしこまりました、隊長!!」
コルベールからたんまり年金をいただいたデオンは幸せそうだ。
「あぁ……ただでさえプレミア物の17世紀の金貨が、こんなにたくさん!!」
ルイは微笑した。
「未来では貴重品か。余の恩寵は満足か?デオンよ。」
「勿論ですとも。剣の腕は鈍りそうですが、これで毎日の命懸けの決闘から解放されます。未来では、わたくしの安寧の老後暮らしが。改めて、太陽王にこの剣で、この恩義を返してゆくと致しましょう。」
「うむ、期待しているぞ!」
サンソンとデオンはヴェルサイユ宮殿を出て、整列した銃士隊の中を歩いた。
サンソンは、カステルモールに告げた。
「この時代にわたし達未来人が介入したため、法王猊下の年号すら改変されてしまったな。しかし、無事に王妃様が懐妊なさった。これからは護る対象が増えるな。…...ダラメダ公爵。此度は第三勢力だったが、再びラルヴの革命家は送られて来るだろう……」
「その時はまた、返り討ちにしてやるさ。」
「そうか……カステルモール殿。ひとつ頼まれてくれ。ショワジーの今回の任務手当だ、生活の足しにでもするだろうさ。貴方に預けたい。」
「引き受けよう。」
「それでは、アディオス。また逢う日まで」
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