2-18
その頃、ヴェルサイユ宮殿のルイの元へ、速達の手紙が届いた。
「チャールズ2世より、速達でございます!」
「なに?」
ルイは手紙を開いた。
親愛なるフランス王
我が友 ルイ14世に捧ぐ
わたしの妹のヘンリエッタ・アンから、わたしに助けを求める手紙を受け取ったばかりだ。
ダラメダという男に加担してしまったヘンリエッタ・アンを、どうか許して欲しい。
赤ん坊を守る穴蔵の母狼のように、孤立し、過ちに至ってしまった。
そして、ヘンリエッタ・アンの後始末は、わたしがイギリスを上げて執り行う。
必ず、貴君のフランスを支えて見せよう。
常にわたしを支援してくれたルイ14世、君への恩返しと共に、イギリスは議会を抑え込み、一時的なコンクラーヴェへの参入をここに約束する。
君の友人 チャールズ2世 より
ルイは我が目を疑った。
アンリエットが原因だと言うのはわかったし、それはアンリエットの娘を抱いてもいないルイの責任だ。
アンリエットを、断罪出来ようはずがあるまい。
だが、我が友チャールズ2世は……。
「誰ぞ、イギリスに使者を!イギリスで歴史的な事が起きるぞ!!」
チャールズ2世は、なんと国民と同じ高さの広場に現れた。
議会の妨害を防ぐためである。
「あれ……まさか」
「王様じゃね……?」
民が集まってきたところで、チャールズ2世は声を上げた。
「民よ!議会の取り決めたクラレンドン法典を今一度取り消し、わたしはそなたたちを自由信仰として、頼みがある」
事を知った議会は慌てて広場に駆けつけたが、すごい群衆でチャールズ2世に近づけない。
「おやめ下さい、チャールズ2世陛下!!」
「議会は絶対です!誰ぞ!軍隊!!この騒ぎを止めろ!!」
チャールズ2世は語る。
「議会に軟禁される力ない王であるわたしに、助力を尽くしてくれた裏切りの無い我が友、フランスのルイ14世を助けたい。彼は今、窮地に立たされている。我が愛しい妹、ヘンリエッタ・アンは、子を守る為に敵の策中にはめられてしまった。これはヘンリエッタ・アンの失敗を補い、ルイ14世を支える案である。わたしは、二人を救いたい。ヘンリエッタ・アンの兄として、そして力無きイギリス王からそなたらへの、頼み事に他ならない。民達よ、どうか、頼む!わたしに力を貸してくれ!」
なんと、チャールズ2世は国民達に頭を下げた。
「王様が……!」
「たかが庶民の俺たちに、頭を下げている……!!」
民達には、必死さが伝わった。そして、ヘンリエッタ・アン王女の兄として、フランス王の友として、民の力を求めるチャールズ2世に、民は呼応した。
「頭を上げてくれ、陛下!」
「俺たちは王様の味方だよ!だから!」
民は真剣に聞いていた。
クロムウェルの独裁に苦しみ、チャールズ2世の王政復古を選んだのは、民なのだ。
結果的に議会に軟禁され、苦しめてしまったことも、民は見てきた。
そして、愛すべきヘンリエッタ・アン王女の危機でもある。
「命じてくれ、王様!!俺たちは、アンタのイギリス国民だッ!!!」
議会が叫んだ。
「チャールズ2世の演説を辞めさせろーッ!!」
「衛兵、来い!!」
「うるせぇぞ、議会!!」
市民達が軍隊を殴り倒した。
怒りの市民に怯む議会。
「王様の話は、まだ終わっちゃいねーだろが!!」
市民の猛反発に、軍隊が下がる。
「無理です!国王の演説で士気が上がった市民達ですよ!?無理やり鎮圧しては暴動になります!」
チャールズ2世は宣言した。
「感謝を!わたしの愛すべきイギリス国民達よ!もしわたしをイギリス王として支えてくれるのならば、諸君らの法王選挙、コンクラーヴェの投票参加を、わたしは願う!今この場でひととき、信仰は自由となる!上辺のカトリック信徒のフリでも構わない!ヘンリエッタ・アンを利用した我らの敵はダラメダ公爵、教皇の地位を狙うもの!ダラメダ公爵のヨーロッパ支配に至れば、イングランドとて孤立しよう!いま、イギリス国教会、カトリック、ピューリタンの力を合わせ、ダラメダの支配をなし崩すのだ!」
「俺たちで、国王陛下の力に!」
「ヘンリエッタ・アン王女様の為に!!」
国民達は拍手し、チャールズ2世が自ら配る投票用紙を受け取った。
「信仰の自由、いいじゃねえか!何故議会はそんなの禁じたんだよ。」
「王様の考えなら、イギリス国教会とカトリックとピューリタンが、みんな一緒に暮らせるじゃねえか。」
議会がチャールズ2世に猛進した。
「王!今更コンクラーヴェなど!イギリス国教会はどうなります!?」
「今この瞬間だけ、わたしに任せよ。」
コンクラーヴェを視察に行っていた使者から伝達が入る。
「陛下!フランスは全票をアヴェ・ド・ショワジーに!!各国反ダラメダ派もフランスに乗り、アヴェ・ド・ショワジーに投票しております!!」
チャールズ2世は声高らかに宣言した。
「国民よ!アヴェ・ド・ショワジーに投票を集めよ!!」
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