2-12
シスターダニーは空想した。
知らない場所だ。
でも、自分の求める場所は、これだ。
カラフルな色で塗装された、回転木馬!
モンゴルのテントと騎馬を遊具にした感じだろうか。
その中の一匹の馬に、ダニーは乗っている。
「おじ様?どこにいるの?おじ様?」
「ここにいますよ、シスターダニー。」
振り向くと、隣の馬にシラノが乗っている。
「おじ様!楽しいわね?今度はあっちの馬車に乗りましょう。」
二人で手を繋ぎ馬車に移動する。
子供らしいシスターダニーの笑顔に、シラノは安堵し、微笑む。
「私は貴方のそんな顔が見たかった、
シスター。次は何をしましょうか?」
シスターダニーはシラノの手を引き、コーヒーカップの遊具へと誘う。
「今度はこれに乗りましょう。おじ様。私、一度思い切りこれを回してみたかったの。」
「では乗りましょう、シスター。
私はタフですよ。
二人で目が回らないか、競争です。」
「うふふ。私も負けないわよ!覚悟して、おじ様!」
コーヒーカップが動き出した途端、シスターダニーはグルグルとコーヒーカップを回し始める。
「おお、これは速いですね。
でも私にはまだまだですよ。」
シスターダニーが笑いながら言う。
「私だって、序の口よ。もっともっと速く回してみせるんだから。」
「それは楽しみです、シスター。」
徐々にコーヒーカップの回転の速度は増していき、最高速度まで到達する勢いだ。
「どう?おじ様?私の勝ち?」
シラノは風圧でコーヒーカップの外に飛ばされそうになりながらも、コーヒーカップの端に掴まりながら体を浮かせてグルグル回って笑っている。
「これはこれは。
貴方の勝ちですシスター。
恐れ入りました。」
「私も楽しかったわ!おじ様ったら、中々飛んで行かないのだもの。」
シラノは笑った。
「私を最初から飛ばそうと?
とんだおてんばお嬢さんだ!
目は回っていませんか?」
「私は全然よ!おじ様も大丈夫そうね。おじ様は私の勝ちと言ったけど、引き分けというところシスターダニーは空想した。
知らない場所だ。
でも、自分の求める場所は、これだ。
カラフルな色で塗装された、回転木馬!
モンゴルのテントと騎馬を遊具にした感じだろうか。
その中の1匹の馬に、ダニーは乗っている。
「おじ様?どこにいるの?おじ様?」
「ここにいますよ、シスターダニー。」
振り向くと、隣の馬にシラノが乗っている。
「おじ様!楽しいわね?今度はあっちの馬車に乗りましょう。」
二人で手を繋ぎ馬車に移動する。
子供らしいシスターダニーの笑顔に、シラノは安堵し、微笑む。
「私は貴方のそんな顔が見たかった、
シスター。次は何をしましょうか?」
シスターダニーはシラノの手を引き、コーヒーカップの遊具へと誘う。
「今度はこれに乗りましょう。おじ様。私、一度思い切りこれを回してみたかったの。」
「では乗りましょう、シスター。
私はタフですよ。
二人で目が回らないか、競争です。」
「うふふ。私も負けないわよ!覚悟して、おじ様!」
コーヒーカップが動き出した途端、シスターダニーはグルグルとコーヒーカップを回し始める。
「おお、これは速いですね。
でも私にはまだまだですよ。」
シスターダニーが笑いながら言う。
「私だって、序の口よ。もっともっと速く回してみせるんだから。」
「それは楽しみです、シスター。」
徐々にコーヒーカップの回転の速度は増していき、最高速度まで到達する勢いだ。
「どう?おじ様?私の勝ち?」
シラノは風圧でコーヒーカップの外に飛ばされそうになりながらも、コーヒーカップの端に掴まりながら体を浮かせてグルグル回って笑っている。
「これはこれは。
貴方の勝ちですシスター。
恐れ入りました。」
「私も楽しかったわ!おじ様ったら、中々飛んで行かないのだもの。」
シラノは笑った。
「私を最初から飛ばそうと?
とんだおてんばお嬢さんだ!
目は回っていませんか?」
「私は全然よ!おじ様も大丈夫そうね。おじ様は私の勝ちと言ったけど、引き分けというところね。」
シスターダニーは空想の有頂天から、徐々にテンションが下がって現実に戻った。
いきなりの虚無、再現率の氷点下。自分の馬鹿さに苦悩した。
初めてだ。
自分の空想では、おじ様の語彙が無い。
空想では再現出来ないのだ。
おじ様は、会話の全てが美しい詩で。
ダニーにはそれを再現出来ないのだ。
「消灯します。消灯時間ですよ。」
シスターが蝋燭の火を消して回っている時、シスターダニーは部屋を飛び出した。
おじ様を追いかけてみよう。
直に会わなければ、空想ではかなわない!
「シスターダニー!?夜間の外出は禁止されています!シスターダニー!!」
うるさい、うるさい!
シスターダニーが修道院を飛び出すと、シスター達が心配して追いかけた。
「いけません、シスターダニー!!」
なんてしつこいのだろう。
シスターダニーは灯りのついた民家を一軒一軒聞き耳しながら走った。
割と。
現実も、楽しいのね。
自由に走り回って、おじ様探しをする。
まるで、夜中の冒険家みたい。
やがて、あの美しい声を聞きつけた。
「かの幼いシスターは美しく
かつての愛しい貴婦人の思い出を糧に生きている。
貴方がたの暖かな家庭、
神の御元にあるような安らぎ、
得られるべきであった家族の愛を、
彼女に与えていただけたら
それは私自身の幸せと、同価なのです。」
美しい声、この詩の会話。
おじ様だ!
シスターダニーは民家を覗いた。
わくわく、ドキドキが止まらない。
しかし、そこに待ち受けていたものは、彼女のハッピーエンドでは無かった。
「わたし達が貴方のポスターを見つけたのは、神のご采配です、シラノさん。子に恵まれないわたし達が、どれだけ子を切望してきたことでしょう。」
シラノ・ド・ベルジュラックだ。
仮面をはずしたおじ様こそが。
自身が殺さなければならない、シラノ・ド・ベルジュラックだったのだ。
ダニーはフラフラと、逃げるように、帰り道についた。
空想の世界では、空から雨がどしゃ降りで、ダニーはズブ濡れになりながら泣いていた。
雷が鳴り響き、豪雨は激しくダニーを打ちつけた。
空想?現実?
ダニーは大声で泣いていた。
赤ちゃんみたいに、ぐしゃぐしゃに、泣いていたのだ。
そこに、ダニーにブランケットをかけて、支える女の人が現れた。
空想じゃなかった。
ダニーは周りを見回した。
シスター達がダニーを支え、悲しげなダニーを見て、共に悲しんでいたのだ。
「だから、言ったのに。」
「明日まで待てば良かったのです。シラノさんが貴方を解放したら、貴方はイエズス会士では無くなるわ。」
「殺さなくてよかったのです。気づかないままで、良かったのよ……。」
あぁ。
厳しいシスター達を、ダニーはずっと、敵としか考えてはいなかったけれど。
シスター達は、ダニーを愛していたんだな。
なんてなんて不器用なわたし。
わたしって、本当に馬鹿。
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