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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第2話 神の使徒マンソンジュ
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2-10

 サンソンとデオンは、ヴェルサイユまで早馬を飛ばした。


「パリまで行くべきでは無かったな。ショワジーがその後クロエの赤ん坊をどうしたか、気になったが……」


「ムッシュ・ド・パリ。聞けば、ドレスも(かつら)も失った場での話。後から尋ねましょう。女は身支度を整えていなければ、正常な判断は致しかねますよ。」


 サンソンにはわからないが、女の道には王に賜った勲章より、大事なドレスがある、とだけは、認知した。


「貴方もドレス一枚で勲章を投げ出すのか、デオン?」


「まさか。わたくしにはスカートを脱いだって勲章と年金が必要ですよ。」


「そうか。……この辺りでいいか。デオン、地下空洞探知スキャナーを展開しよう。」


 サンソンとデオンは馬から荷物を降ろし、地下空洞探知スキャナーを組み立てた。


「このポンコツ、カタコンベと地下アジトの区別がつくでしょうかね?パリでは100%がカタコンベでしたよ。」


「さて、な……だが、ここはヴェルサイユ近郊だ。表向きの事件になっていないなら、地下空洞はひとつの捜索対象だろう。」


 地下空洞探知スキャナーは展開し、近郊に地下空洞を発見した。


「MAPにすると……」


「教会の真下だ。またカタコンベかもしれないな。」


 サンソンとデオンが馬を走らせると、その教会には、隕石でも落下したかの陥没が見られた。


 時空転移装置でも、降ってきたかのように。


「デオン。口裏を合わせて内部に入ろう。」


「はい。」


 教会は、善良なるイエズス会だ。


 扉を開けると、素朴げな神父が、デオンを見るなり駆けつけた。


 サンソンとデオンの黒い身なりを、仲間と見なしたのだろう。


「あの方の使いですね?マダム、名をなんと?」


「デオンでございます。」


「こちらに入ってください。とても気の強い女性で、デオンさんのような側仕えがいなければ、わたし達では手に負えません。」


 地下への階段を降りていくと、カタコンベでは無い地下室があった。


 豪奢な装飾に、収納された時空転移装置。


 奥の間には、皇妃ジョゼフィーヌが監禁されていた。


 ジョゼフィーヌは何の不満か、檻にしがみついて唸った。


「うわあああーッ!!」


「これは……」


「悪魔つきでしょうか?」


 デオンが腕まくりしながら言った。


「馬鹿おっしゃい。この密室、檻の中!これは癇癪虫ですよ。浴槽を運んで来なさい。女性の癇癪には、湯浴みが一番効くのです。」


 かくして、浴槽が運びこまれ、男性陣が退散する。


「かわいそうに、皇妃様。湯浴みの後で作戦を練りましょう。ナポレオン陛下は、あれはあれで心配なさっておりますよ。」


「いま!旦那の名前を出さないでちょうだい!!あの人が今の薄汚れたわたしを見たら大喜びするわよ。あの、匂いフェチの……いいわ。これ以上言ったら我慢出来なくなる。」


 デオンはジョゼフィーヌの髪を洗いながら、尋ねた。


「それで。皇妃様を監禁なさったのは、イエズス会士に間違いございませんか?善良なイエズス会士が、何故そのような真似をなさいました?」


「ダラメダ公爵って男よ。イエズス会を良いように使って、カリスマぶってるけど腹黒い奴だわ。過去からわたしを観測してた。あいつは、この時代の法王選挙を乗っ取るつもりだわ。」


「余程の自信家でなければ、法王選挙にでるなど痴態。その男は、何か隠し玉を?」


「フランス王……王の推薦が手に入ると言ってたわ。わたしが、未来人を抑える為の人質なんじゃないの?」


「皇妃様。わたくし達はそちらを阻止せねばなりますまい。この探知機を片時もお離しになられますな。助けがきます、必ず」


 ジョゼフィーヌは湯浴みを終え、ドレスを纏うと、しっかりと立ち上がった。


「いいわ。助けを待ちます。行きなさい。」


 デオンとサンソン、目配せすると、互いに行動を決め、別行動を始めた。


 サンソンはカステルモールのいるヴェルサイユ宮殿へ。


 デオンはルイのいるヴァスティーユ監獄へ、と。


 ジョゼフィーヌが愛犬と暫し戯れていると、教会の上から何かが落下してきた。


 事故のような音だったが、迫るイエズス会士を砲撃しながら、圧倒的砲兵・皇帝ナポレオンが地下室に走り出す。


 探知機は未来のナポレオン本人に居場所を送信していたのだ。


「ジョゼフィーヌ!!デュマ将軍はイエズス会士に特攻せよ!ジョゼフィーヌは俺が救出する!!」


「……まぁ、来るわよね。」


 ジョゼフィーヌの愛犬がナポレオンのフルチンに噛み付いた。


「なはーッ!!取れる取れる取れる取れる取れるッ」


「グルルルッフゥーッ!」


 死にものぐるいのナポレオンの救助で、無事ジョゼフィーヌは時空転移装置に回収された。


 股間にはまだジョゼフィーヌの犬がぶら下がっているけれども。


「皇帝陛下。御身自らの出動はお控えください。貴方に何かあればフランスが傾きます、フランスをどうなさるおつもりですか。」


「ジョゼフィーヌいるところに俺が現れなくてどうする!俺はフランスを娶ったのではない、ジョゼフィーヌと婚姻した男だぞ!」


「……陛下。貴方の勇猛果敢なことは我らの誉れです。ですが、立場上諌めねばなりません。」


「ふっ、デュマ将軍、お前は硬すぎだ。皇帝をやれる男は有象無象、だがジョゼフィーヌを愛する男は、俺が最優でありたいのだ。」


 皇妃の家出は、ナポレオン・ボナパルトによって無事、事なきを得た。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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