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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第2話 神の使徒マンソンジュ
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2-2

 一方、カトリックの腐敗、アレクサンデル6世の生前だが、スペインでの十分の一税を大きく値上げした。


 何故か?


 それは、大航海時代のスペインの莫大な収益による。


 大航海時代の始まりは、ポルトガルである。


 敵対するオスマン帝国を避けて、インドに香辛料を買いに行ったのだ。


 しかしここで世界を変える男が現れる。


 イタリア半島、ジェノヴァで生まれた冒険家、クリストファー・コロンブスだ。


 マルコ・ポーロの東方見聞録等に影響され、西洋は海の向こうに夢を馳せていた。


 当時地球には、海の最果てがあると誰もが考えていた。地球は四角いし、太陽は地球の周りを回る、という考えが、一般的だった。


 エジプト・アレキサンドリアの大図書館の叡智は廃れ、文明は知識が後退したと言えよう。


 だが、コロンブスは一人の学者により、地球は丸いと考えて、アフリカを回るのではなく、西に船を突っ切れば、必ずインドに到達出来る、と説いた。


 だが、そんなマイナーな説に資金を出すパトロンはおらず。


 コロンブスは人生のほとんどを、パトロン探しに費やした。


 イタリアからスペインへ渡り、ついに見つかったコロンブスの理解者こそが、スペイン初代女王イサベル1世であった。


 この美しくも、賢く勇敢なイサベル1世は、カスティーリャ女王としてイベリア半島をイスラーム勢力から取り戻す為に戦場で戦い、戦場の絆からアラゴン王フェルナンド2世を夫に迎え、ポルトガルとも協力してイスラーム勢力を撃退。


 カスティーリャとアラゴンが合併し、スペインが生まれ、その初代女王となった人物である。


 キリスト教国がイスラーム勢力から国土を取り戻す運動を、レコンキスタと言う。


 レコンキスタを完了したイサベル女王の目には、海の先が見えていた。


 海外進出を考えていたのである。


 イサベル女王はコロンブスの説いた地球が丸い学説を理解し、コロンブスに新大陸発見の為の莫大な資金を援助した。


 晴れてコロンブスは出航す。


 しかし、数々の嵐や、船員の精神不安定から、サンタ・マリア号のみが新大陸にたどり着いた。


 もっとも、コロンブスより300年前にヴァイキングは北アメリカに進出し、植民地を作っていたから、正確にはヴァイキングの二番目に、南米を発見したことになる。


 現在の西インド諸島のバハマにあるサンサルバドル島だが、この新大陸をコロンブスはインドだと勘違いしてしまう。


 これにより、アメリカ原住民は、今もインディアンという呼称で呼ばれる。


 ちなみにコロンブスは、現地のマナティを人魚と信じ、人魚はそんなに美しくは無かった、と語っている。


 とにかくコロンブスは、例えインドだろうがただでは転ばない精神力を持ち、様々な物々交換を果たす。


 この時の物々交換は、歴史を変える異文化交流であり、カカオやタバコやハンモックなど、ヨーロッパに莫大な利益を与える。


 しかし、新大陸の側は、疫病を与えられたに過ぎない。


 フランス国民の大好物のショコラの原料、カカオも、この時コロンブスが手に入れた品だ。


 ただし、コロンブスは英雄としては語れない側面がある。


 彼は、禁忌を犯していた。

 現地の奴隷商人から人間を購入し、サンタ・マリア号に商品としてたくさん積み込み、帰国時に持ち帰り、ヨーロッパで売りさばいたのだ。


 コロンブスは、奴隷王として名を残したのである。


 当時のカトリックでは、奴隷に対する善悪の決まりがまだ無く、この時初めてコロンブスは罪に問われたが、議論の最中に何度も航海し、断罪される前にコロンブスは生涯の幕を閉じた。



 ここからが、本題である。

 新大陸が明らかになり、地球が丸く、果てが無いことが解ると、次々にスペイン人は船乗りとなって、更なる新大陸を目指した。


 パトロンも無しに、借金をして旅立ったのである。


 まずは、エルナン・コルテスだ。


 彼は今で言うメキシコを発見し、仲間勢力を集めると、金銀に目が眩んで、アステカ王国、マヤ文明を滅ぼした。


 しかし、全くの無意味な虐殺に終わる。

 アステカ、マヤには、金銀はさほど無かったのである。


 エルナン・コルテスは、侵略者「コンキスタドール」の汚名をかぶり、ただの罪人となった。


 しかし、幸いにもマヤの文明は書き残された。


 宣教師ディエゴ・デ・ランダの功績である。


 元々ランダはマヤに布教に来てから、純粋なるマヤ人を愛したが、そこにはとんでもない障壁が現れる。


 マヤ文明の神々への信仰、生贄文化である。生贄に選ばれれば誉れに思い、皆が儀式を神聖なものとする。


 ランダはこの残酷な儀式を悪魔的だと憎み、宗教本などをまとめて焚書してしまう。


 文化を壊した張本人なのだが、生涯を愛するマヤ人達と過ごし、マヤ文明の本を書き残した。これが手がかりとなり、現代、考古学ではマヤ文明やマヤ神話が解析されたのだ。


 また、アステカは文化遺産である首都テノチティトランの真上にメキシコシティを建設されるなど、白人によって文明を上書きされて行く。



 次に、ピサロである。


 こちらは仲間三人と、抜け駆け禁止の条約を執り行い、兵力を集めて、現在のペルーである、素晴らしく政治の安定したインカ帝国に上陸した。


 インカ帝国は余りにも優れたシステムを持ち、発展の必要が無かったと考えていいだろう。


 伝令で走り回って働くのは若い世代の男子だけで、交代制のマラソンシステムだ。クリーンな職場である。


 税は農作物だが、インカではじゃがいもがあり、ほっといても育つ。


 農作物は、三つの用途に分ける。

 ひとつは農民のもの。

 ふたつめは王のもの。

 みっつめは、災害時の国民の為の備えに保管される。


 宗教の分野は、部族ごとに違う神様がおり、インカ帝国は、その神様への信仰を認める。


 そこに、太陽信仰を追加してくれれば、仲間として迎える。


 こうしてインカ帝国は拡大したのだ。


 ピサロ達が狙ったインカ帝国とは、そういった善良な国だった。


 その時、インカ帝国は勢力が二つに割れており、後継者争いの最中だった。


 皇帝対皇帝で、賢明なるアタワルパが勝利し、インカ皇帝になったばかりで、まだ皇帝の暮らすべきクスコまで進んではいなかった。


 白人上陸の噂はアタワルパにも届いており、アタワルパ皇帝もまた、白人を見てみたいと思って近づいた。


 ピサロ達は、名誉にも、皇帝アタワルパへのお目通りが許されたのである。


 しかし、ピサロの狙いはあくまで金銀財宝であった。


 皇帝アタワルパは、部下達の担ぐ椅子に乗って、高貴な姿をカーテンで隠し、ピサロ達の何万倍もの兵力を従えて現れた。


 始めは平和的交渉を装ったピサロだったが、途中で茂みに隠していた仲間たちに一斉射撃させ、武器に物を言わせて、アタワルパを捕えてしまう。


 アタワルパは身柄の解放の為に、有言実行して本当に莫大な金銀財宝をピサロ達に与えた。


 だが、更なる欲に目覚めたピサロは、アタワルパとの約束を破り、アタワルパを解放しなかった。


 アタワルパの友を名乗りながら、クスコの建築から黄金を剥ぎ取って持ち去った。


 ピサロの3人組の仲間には、アタワルパを王族として尊重し、皇帝を守るものもいたが、彼が別件の任で傍を離れた時に、事件は起きた。


 インカ帝国の逆襲を恐れて恐慌状態に陥ったピサロ達は、アタワルパを殺害してしまう。


 神父側が、改宗しなければ火刑に処すと強行し、アタワルパはインカ帝国の文明である、皇帝のミイラを残す為に、仕方なくキリスト教に改宗してから殺されたが、アタワルパの遺体はインカ帝国側には返しては貰えず、ミイラには出来なかった。


 インカ帝国側はこれに怒り、新たな皇帝にマンコ・インカを戴冠させ、ゲリラ戦を開始した。


 ピサロ側はマンコ・インカを認めない為、ピサロ側で決めたお飾りの皇帝を戴冠させる。


 マンコ・インカとピサロは、長い戦いの果てにピサロ側が勝利する。


 しかし、スペインからアタワルパ皇帝を殺害した罪に問われたピサロは、最終的に報いを受けたかのようにみすぼらしく死んだ。


 このピサロもまた、侵略者「コンキスタドール」として名高く、本国のスペインでも嫌われている。


 経緯は残忍な手段だったとはいえ、スペインはこのアステカ王国、マヤ、インカ帝国を手に入れて、スペインから西ヨーロッパに大量の銀が流れる。


 これが、ヨーロッパの物々交換の時代の終わりとなり、銀の通貨が生まれたのであった。


 つまり、新大陸の莫大な利益を持つスペインを狙ったアレクサンデル6世が、十分の一税を釣り上げて、利益を強奪。


 私欲を肥やしたのであった。


 腐敗の教皇アレクサンデル6世は贅沢三昧の暮らしをしても、まだまだ腐るほどの富を所有したのである。


 この金こそが、教皇アレクサンデル6世とチェーザレ・ボルジアが病に倒れ、権威を失った時に、チェーザレ・ボルジアとレオナルド・ダ・ヴィンチが耳飾りにMAPを残し、フランス王家に託したものである。


 彼らの願いは、イタリア半島統一だろうが、ナポレオン・ボナパルトはその元手からフランスの産業革命を果たした。



 一方で、こうしたカトリックの腐敗を律する為に、イエズス会が誕生した。


 清く正しく、ポルトガル側のアジア布教の任に付き、フランシスコ・ザビエルもまたイエズス会士である。


 イエズス会は腐敗したカトリックの良心と呼ばれ、ヨーロッパ中の信頼を集めていた。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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