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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
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1-23

 カステルモールは銃士隊に貴族のナリをさせ、劇場の至る所に配置した。


 無論、不審者は取り締まり、銃士隊駐屯所まで連れ出す徹底ぶり。


「こちらカステルモール。銃士隊の配備、完了した。不審に思われた人物は全て取り締まっている。」


 薄型通信機からサンソンの声が聞こえた。


「了解した。カステルモール殿、通信機には慣れましたか?」


「慣れぬ。だが、使わねば任務にならぬのであれば。」


「失敬。こちらサンソン。わたしの現状の上司、ナポレオン・ボナパルトから二人乗り時空転移装置を回収した。帰りが私と罪人になるかどうかは、あなた方次第だが。」


 開幕の合図が鳴り響く。

 指揮者が指揮し、演奏が始まった。


「……」


 舞台袖、リュリはユスターシュに言い聞かせた。


「特訓通りに。焦るな。私がリードする、ついてこいむきたまご。今の自分は王だと思い込め。バレエに抜かりのない芸術の神、美しくて罪深い通り越して徳高い!……そうだ。」


 リュリとユスターシュは舞台袖から踊りながら出て来た。


 ユスターシュの見事なバレエに、誰もがルイでは無いと気づかずに、思わず見惚れて溜息を漏らした。


 解毒したマリーテレーズも、特別席で見に来ていた。


(無事だったんだな……)


 ユスターシュの胸に安堵が押し寄せた。


 その時だった。


 リュリが、アイトゥアイでユスターシュに異変を知らせる。


(気をつけろむきたまご!!)


(え?余のバレエにぬかりなど……)


 舞台袖から誰か、踊りながら出て来たのだ。


 黒い髪に、美しい顔立ち。見事なバレエ。


(だ、誰……!?)


 リュリの演目に、この男の配役はいないはず。


 サンソンはカステルモールの元に駆け寄った。


「フーケ一族の弟だ!大胆にも舞台の上に!!」


「銃士隊は動かせない。」


「何故です?」


「ルイの命令だ。銃士隊はルイのバレエ舞台のの妨害をしない。」


 つまり、ユスターシュ対フーケ一族・弟!!


 リュリは指揮者に合図。


 演奏はアドリブで、激しいテイストに変わる。


 バトル編に相応しいミュージック。


 暗殺者は、踊りながらナイフを突き出した。


 客席が異変に気づく。


「あの刃物、本物だぞ!?」


「暗殺だ!」


「陛下が死んだら、フランスは!?」


 リュリはユスターシュを支え、合図した。


(ドゥヴァン!)


 ユスターシュは身体を斜めにし、足を突き出し、蹴りを入れた。


 暗殺者が一撃を受け、ナイフを落とす。


(プリエ!ドゥヴァン、プリエ!!)


 ユスターシュは足を曲げて突き出し、蹴りで暗殺者にたたみかける!


 フィリップ殿下はうっとりと見惚れた。


「なんて優雅な戦いかしら……お兄様にしか、とても出来ませんわ……」


「陛下がバレエで戦っている」


「あくまで舞台は陛下のもの……!」


(二人で行くぞむきたまご!!ロン・ド・ジャブ・アン・レール!!!)


 リュリとユスターシュ、息のあった動きで、まっすぐ伸ばした足を空中で半円蹴りにして見せた!


 挟み撃ちで二人の怪力男児から半円蹴りを食らった暗殺者は、脳震盪で倒れてしまった。


 客席から拍手喝采の嵐が沸いた。


「陛下がバレエで撃退なさったぞ!!」


「太陽王万歳!!」


「フランス王に喝采を!!美しきルイ陛下に祝福あれ!!」


 ユスターシュはリュリと舞いながら、感じていた。


(これが……王の撃退!これが、芸術か……!!)


 ユスターシュ、リュリの助力により、暗殺者を撃破!!


 刑期、残り115年ッ!!!



 舞踏会は名を改め、国王夫妻結婚記念舞踏会に。


 メニューはユスターシュの計らいで、多くがマリー・テレーズの好物であるチョコレート菓子が並んでいた。


 舞踏会では、ユスターシュは意識的にマリー・テレーズの元に行く。


 ルイーズのことも心配だが、ルイーズの側にはルイが必ず行くだろう。


「陛下……今宵は一段と勇敢なバレエでした。」


「余の敵は、余が決着をつけるのが当たり前のこと。リュリのおかげでもあるが……マリー・テレーズよ、身体は大事ないか?余が勧めたばかりに、毒の被害に遭わせてしまったからな。」


「わたくしも、ルイーズさんも、元気になりました。陛下がわたくし達を助けるために、二人一緒にとても腕の良いお医者様にみせてくださったからです。」


「……すまぬ。デリカシーの足らぬ人間だな。」


「いいえ。貴方様は人道をなさいました。命を、等価に見なされたのです。助けられて、誰が文句を言えましょう。わたくしは……わたくしの命は、ルイーズさんには到底及ばないと思っていました。ただスペインとの交渉材料に、淡々と日々が過ぎる。」


「マリー・テレーズ……。苦しかったろう。」


 マリー・テレーズもまた、確信を抱いた。


「……貴方はだれ?陛下ではない人。貴方だけが、わたくしの日々を変えてくれました。」


「……余のことはルイ、と。」


「ルイ。1曲、踊ってください。」


「……そこまでは練習が……余は、ルイと違ってワルツは下手だぞ。」


「わたくしがリード致しますから。さぁ、貴方。手を、とってくださいまし……」


 国王夫妻の為に、貴族達が自然と席につき、広々としたホールが譲られた。


「スペイン女、踊れたのか……」


「……そこまで悪くなくない?」


「笑うと、意外と愛想がある」


 ユスターシュはマリー・テレーズのリードの元、ワルツを踊る。


 初めてだ。


 自分のしたことで、誰かがこんなに幸せそうに笑うことが。


 その日は、ユスターシュにとっても、特別な記念日になった。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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