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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
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 サンソンはカステルモールを連れてヴェルサイユ宮殿を行き、ユスターシュの元に走って戻る。


「サンソン殿よ、どこへ!?」


 エグジーリはもう薬草を取って来て戻っている。


「ドウカ、王妃様ノ部屋に案内ヲ!秘伝ノ調合、見テハイケナイ!!」


「小姓殿、エグジーリと王妃様を連れて、王妃様の寝室へ!傍についていてくれ!」


 小姓は素早く対応した。


「直ちに。エグジーリ殿、着いてきてください!わたしがなんとか王妃様を背負います!」


 サンソンはユスターシュに振り向いた。


「陛下、お話が。昨夜のことです。厨房からヴァテール特製のパイを包んで立ち去った女性がいる。今宵もパイを持ち帰った記録が厨房に。サインは、ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール、と!」


 ユスターシュは戦慄して立ち上がった。


「ルイーズか!またラウルを背負ったな、不味いぞ!!」


「陛下はついてきてください。カステルモール殿はアンヌ皇太后の警備に残って。」


 アンヌ皇太后は告げた。


「わたしはいいわ。自室に戻ってるから、銃士を一人警備につけてちょうだい。カステルモールはマリー・テレーズを運んであげて。幼い小姓には荷が重いわよ。」


「心得た。銃士隊!アンヌ皇太后の部屋の警備に配置せよ!俺は王妃様を運んで参る!!」


 サンソンとユスターシュは庭を渡ってルイーズの部屋を訪ねた。


 愛妾ルイーズの住まいはヴェルサイユ宮殿の敷地内にあり、寵愛の深い者だけが住める小さな住居だ。


「ルイーズ!クソッ、開けろ、ルイーズ!!」


 どんなにノックしても、反応が無い。


 昨晩と同じだとしたら、ルイーズは自責の念から、毒のパイを食べたのだ。


 サンソンが告げた。


「手遅れかもしれない。それに鍵をかけていたら、いま大丈夫だとしても、いずれ手遅れになる。……最悪、王妃様だけでも助かれば、歴史改変は少なくて済むが……」


 ユスターシュは諦めない。


 あの優しい笑顔を忘れない。


 あれは、ルイーズがルイに向けたものだ。


 ルイーズの本当の気持ちを、馬鹿のルイに知らせてやるまでは、絶対に死なせてはならない!


 ユスターシュは隙間に爪を挟み込み、爪が剥がれて血が滲んでも、剛腕でこじ開けようとした。


「バカな!爪ひとつ歪になれば、ルイ14世陛下の身代わりなど成立しない!!君は、立場がわかっているのか!?」


 ユスターシュは躊躇わない。


「うるせぇ!!ルイだってきっとこうすらぁ!!」


 見る見るうちに、ドアに亀裂が走っていく。


 サンソンはユスターシュを改めて見た。


 この男は、噂通りの悪漢では無いのかもしれない。


 サンソン以上の倫理観がある。


 ルイ陛下の愛妾の為だけに、火事場のバカ力を出せる男だったのだ。


「身代わりを演じきることが優先か、人命が優先か、んなのは馬鹿でもわからぁな!!アンタも悪口ばかりの貴族連中と同じ口か!?俺はドアをぶっ壊してでもルイーズを生かすぞ!!ルイーズはまだ言ってねぇ!あいつはまだ、ルイに気持ちを話せていねぇんだよッ!!」


 サンソンは微笑した。


 この男ならば、安心して味方になれる。


「……人命救助は最優先だが、国王陛下らしくない真似は人前ではやるなよ!今は誰も見ていないーーーやってしまえ!慎重に壊すんだ!!」


「おぉぉぉぁぁぁおぉぉぉ!!」


 ユスターシュは額に血管を浮かせながらの、最大パワーを発揮。


 ついに、ドアがこじ開けられて粉砕した。


 中では小部屋でルイーズがぐったりと倒れ、食べかけのパイがテーブルにはあった。


 サンソンは直ちにパイとルイーズを検査する。


「ルイーズ様は私に任せろ。……診たところこちらは一般毒だ、医師のわたしが対処する!ユスターシュ!未来から来たフーケの遺族は君を狙っている。なるべく王妃様とルイーズ様から離れていなさい!」


「だが!」


「君がいたらまた二人が危険になると言っているんだ!聞き分けなさい!!」


 ユスターシュはしょんぼりと落ち込んだ。サンソンは、励ますように告げた。


「案ずるな。明日はミサがある、朝には決着がつく!」



 ヴァテールVSシラノ!


 その舞台、厨房ッ!!


 ヴァテールからキャベツの肉巻きの煮込まれた鍋が振り回された!


 シラノは熱々のスープを回避しながら、キャベツの肉巻きを剣で受け止め、続く包丁の嵐を剣戟で跳ね返した。


 帽子を斜めに、悠々と歌い出す。


「おやおや

 一品目はキャベツの肉巻き

 ジューシーな肉をキャベツで包む

 毒を隠すには丁度いいメニューか?

 毒は遠慮させていただくが

 吾輩の月旅行の弁当のシェフに

 指名させていただこうか

 さあ始めようじゃないか

 吾輩の好物もいれてくれるかい?」


 ヴァテール「喜んでご主人様ー!!違う、私の主人はフーケ様だ!」


「それは残念、吾輩も貴殿の弁当を月に持って行きたかったよ

 なんと言っても吾輩のロケットは一人乗り、

 フーケ殿を連れていくことはできないのだから」


 次に飛んできたのはフライパンだ!

 シラノは熱々のフライパンを身近なフライパンで打ち返してリズムを取っていく。


 お次はなんと溶かし途中のチーズ。

 シラノは皿に乗っていたバゲットで溶けたチーズをキャッチ、一口いただいた。


「次の料理はラクレットか

 芳醇なチーズのうまみが口いっぱいに広がるな

 やはりご主人様を鞍替えしないか?」


 ヴァテール「イ、ヤ、ダ!」


「そうか、

 きっとこのチーズも月までの道のりで溶けて消えてしまうだろう

 貴殿も同じさだめをたどるか

 実に惜しい」


 ヴァテールはもう投げる料理が無いとわかると、パテを投げて来た。


 あくまで料理で殺したいのか?


 シラノはパテを懐のナイフで全てキャッチし、いざ、レイピアで距離を詰めた。


「そんなにパテを投げるなよ

 吾輩はもう満腹さ

 そろそろ締めの料理といこうか

 このレイピアめがけ

 グサッと決めてくれ」


 ヴァテールが投げたのは、生クリームたっぷりのシュークリーム(ププラン)


 シラノはこれをレイピアで刺し、そのまま回り込み、シラノのレイピアはヴァテールの項に一撃。


「ピッ……ピッ、ガーッ」


 項から、カートリッジが出て来た。


 シラノは納得し、カートリッジを手に取って眺めた。


「月面旅行、その未来が現実になろうものならば、人型機械も月面を歩くだろう。

 命令書も薄型機械ならば、挿入口やはり項。

 これにて吾輩の任務は完了、さよなら一途な暴れん坊、初めまして、素晴らしき料理人。」


 一礼すると、目を白黒させたヴァテールが、一礼して返した。


「ここは……私は……貴方はどなた様で?わたしは、自殺をしたはずでは……?」


 シェフ達が拍手喝采し、ヴァテールを囲んで迎え入れた。


「貴方は、項から命令書が出たら正気に戻ったのさ!!」


「ここはヴェルサイユ、新しい貴方の職場」


「シラノが貴方を助けてくれた。

 私たちの理屈ではわからない方法で」


 ヴァテールはフラッシュバックで頭を抑えた。


「私は、掘り起こされ……機械化して……そうか!操られて戦っていた!ムッシュ・シラノ!彼に礼をしたい……!」


「もう、彼はここには、いないよ」


「シラノは鼻がコンプレックス、だがキザな優男!礼など、きっと求めてないのさ」


「何、銃士隊のランチにでもご馳走を振る舞えばいい」


「貴方はルイ陛下の焦がれた

 素晴らしい

 素晴らしい料理人なのだから!!」


 その頃シラノは、とっくに宿舎に帰還中だ。


 美味しいパテやラクレットを頬張りながら。


 クリスチャンが彼を見つけて尋ねた。


「おいおいシラノ!なんだそのご馳走は?」


「月面旅行に持っていく弁当さ

 お味も最高の逸品

 一口お味見いかがかな?」


「……料理人とでも決闘したのか?」


「半分当たっているがそれ以上詮索は無用さ

 秘密任務にて候

 さてと一口味見してみるか

 うーん……これはまた……美味!!」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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